医局日記

【精神医学】~リエゾン精神医学~


診断と治療社 精神科研修ノート 改訂第2版
ISBN:9784787821904


7月29日の日記で簡単に紹介したけど、学生さん、研修医さん向けにもうちょい掘り下げて解説。

リエゾン精神医学の定義と目的

総合病院における、身体科で入院中の患者さんのメンタルケアを中心に行う部門。「リエゾン」「コンサルテーション」、呼び方はどっちでも良いです。多職種(医師だけでなく、看護師、薬剤師、心理師など)チームで行うのが特徴。

うつ病の治療と援助の間・一般医療の経験から(pdf)

リエゾン精神医学を専門的に学ぶ場合、上記「CLSの四象限モデル」についての理解が必要。相談を受けた案件の「医学的な複雑さ」「心理・社会的な複雑さ」によって、どのように対応すべきか変わるというもの。例えば「お薬の副作用での精神症状が疑われて…」という案件で「それは辛いですね…一緒に考えていきましょう」なんて支持的傾聴は場違い。「身体の治療が長引いていて、辛くてたまらなくて…」という案件で「お薬の問題ですね。調整しておきまーす」なんて素っ気ない対応では失礼過ぎる。問題点を見極めた上で、適切な介入を行うことが肝要。


リエゾン活動の流れ


依頼受け型…電話での相談を受けてから動き出す。(ちなみに佐賀大学精神科リエゾンはこのタイプ。)


訪問、御用聞き型…依頼が無くても定期的に各病棟を巡回し、「ご相談ありませんかー」と聞いて回る。


まずは情報収集

依頼を受けたら、まずは当事者(患者さん、相談した科の主治医さん)達から話を聞き、情報を集め、ニーズの把握を行う。患者さんの問題(精神症状)とは限らず、スタッフと患者さんの間でのすれ違いが原因であった、等のパターンもある。


治療ではなく「援助」

精神科的に正しい診断、正しい治療…が良いとは限らない。あくまで「身体疾患の治療」が最優先であり、リエゾンチームは陰からサポート・お手伝いする立場。教科書にも「援助であって治療ではないことを強く意識する必要がある」と書かれています。「精神科」のために働くのではなく「病院全体」のために働く、という感覚が求められるのです。



アークメディア 臨床精神医学第46巻第1号 発行日:2017年01月28日
特集/これからのリエゾン精神医学

雑誌の詳しい内容紹介は省略。論文タイトルが「リエゾンで対応する主なケース」の並びになっているので、その点だけ解説。



せん妄

相談案件として圧倒的に多い。身体治療に重大な支障が生じ、早期に治療しなければ危険な疾患。11月10日の日記を参照。



不眠

眠れなくてキツイ…という患者さんは多い。身体科で睡眠薬を処方できなくはないけれど、睡眠薬は適切に使わなければせん妄を引き起こしてしまうリスクがあるので、なるべく精神科が介入しています。



がん患者さん

「不安」「うつ状態」に陥ることがあり、これも相談案件として多い。特に気を付けなければいけないのが「もう治療しなくて良いです、退院します」という治療拒否。本人の意志を尊重すべきか、「うつ状態で正常な判断が出来なくなっている」可能性が無いか、慎重に見極める必要があります。



救命救急科との連携

主に「自傷」「自殺未遂」により救急搬送となる患者さんへの対応。救急科で救命治療に全力を尽くした後、精神症状の評価、治療、自傷・自殺予防への取り組みにシフトする段階で、精神科がバトンを引き継ぎます。



周産期メンタルヘルス

11月27日の日記を参照。周産期においてはメンタルの問題が発生しやすく、もともと精神疾患で治療中の患者さんが妊娠した場合、胎児への影響からお薬の調整が必要になる等、慎重な対応が求められます。



認知症

高齢化社会のため、既に認知症を発症している患者さんが身体加療のため入院するケースは多い。せん妄との区別を要する場合も。治療への理解が得られない、安静を保てない、などで問題が生じやすい。


まとめ

リエゾン精神医学は通常の精神科としての治療ではなく、身体科の治療を援助する、という立場です。精神科病院・精神科クリニックにおける治療と異なり、専門的・特殊な対応を求められることが少なくありません。「精神科」の看板ではなく「病院全体」の看板を背負う、という責任感が求められます。…ぶっちゃけ、リエゾン担当している精神科の先生は、凄い。同じ精神科医の立場から見てもなんかこう、カッコイイ、頼りになる存在です。

以上。


【人工知能】~基礎知識、キーワードまとめ~

コレ1枚で分かる「AI、機械学習、ディープラーニングの関係――人間の“知能”をいかに再現するか」 2018年12月31日

人工知能(AI:Artifical Intelligence)は今もっとも熱い分野。様々な研究に活用されており、日常生活においても某掃除機や自動運転技術などで普及しつつある。基本的な知識を解説。

分かりやすさ優先で書きます。正しく理解を深めたければ各自「人工知能 手法」で検索されたし。


そもそもコンピューターとは

複雑怪奇な仕組みで動いているように見えるが、正体は「電卓」である。計算してるだけだ。


プログラミングとは

オルゴールの仕組みと大して変わらん。人間が書いた「コード」をコンピューターが読み取り、その指示通りに計算結果を出してる。
ちなみに「プログラミングする」なんて言い方は素人丸出し。「コーディングする」と表現すれば上級者っぽく見せかけることが出来ます。


人工知能(Artifical Intelligence)とは

「人間が出来る”判断”を(面倒くさいので)コンピューターにやらせる」プログラム。それがAI。
ここから本題。


初期のAI

1956年頃からAIの概念が生まれ、研究が始まった。初期はチェストか将棋みたいなゲーム…つまり限定された状況のなかで、最適解を出すこところまでが限界。人間の判断力を再現しようとすると、あらゆる複雑な条件、要素すべてを想定しなければならず非現実的だし、矛盾した条件に出くわした時、融通をきかせたりする応用力の再現ができなかった。


機械学習

コンピューターの性能が上がったこと、プログラミングの技術が向上したこと、インターネットの普及により大量のデータを集めやすくなったことで、機械学習と呼ばれる手法が発展した。これは「データを解析して、分類や区別、判断や予測を行うための規則性やルールを見つけ出す」というものである。
ただ、「どうやってデータを分析するか」「どこに注目させるか、どこは無視させるか」というセッティング(アルゴリズムの設計)までは、人間がプログラミングしなければいけない。このセッティングの上手い下手でAIの性能が決まる。


ディープラーニング

人間の脳の働きを再現すれば良いんじゃね?ということで生まれた機械学習の手法が、ディープラーニング。人間によるセッティングは最初だけで、後はデータを与えれば与えるほどAIが勝手に学習・判断力が向上していくという優れもの。


ビッグデータ

データのじかん そもそもビッグデータとは? ビッグデータの定義から活用例までご紹介 2018.09.17

最近よく聞く言葉なので、ついでに解説。

定義としては「様々な形をした、様々な性格を持った、様々な種類のデータ」。定義を聞いただけでは「なんじゃそりゃ?だからどうした」で終わってしまうので、具体的な例を挙げて説明する。(私の理解が正しいかどうか自信は無いが…)

主に研究分野。企業のマーケティング調査でも同じ。
これまでAIを活用してデータを分析するとき、「Aという薬とBという薬、どっちの方が効き目がある?」「月曜日に一番売れている商品はどれ?」みたいに、テーマを絞り込んだり、条件となるデータを選別しておく必要があった。しかし現在、あらゆる、大量の、情報を、データとして保存し、時にはインターネットを通じて入手することが出来る。その結果…「薬というか、天候が体調に関係しているっぽい」「どれが売れているか、というより〇〇駅が改装してから月曜日の人の流れが変わっている」など、今まで見過ごしてきたデータから答えを出す、という事が可能になったわけだ。

なので今後は「あらゆるデータを取り、保管し、共有する」ことが前提となる時代なのだ。


人工知能の弱点

たまに「話は聞かせてもらった!AIの進化で人類は滅亡する!」なんて言われることがありますが、いくら進化したところでAIは計算機を動かすプログラムに過ぎない。人間ではあり得ないような、とんでもない弱点があったりします。

So-net セキュリティ通信 AIだって騙される?AIの抱える弱点とは一体何か 2019.05.10

データを与えて学習させるとき、とんでもないノイズ画像を混ぜてしまった結果、AIがパンダをテナガザルと認識してしまうようになった。人間であれば絶対に騙されなくても、AIは誤認識してしまう…アドバーサリアル・エグザンプルズ(敵対的サンプル)と呼ばれます。


AI研究所 AIが学習しすぎる?「過学習」問題とそれを抑制する方法 [最終更新日]2020.09.22

例えるなら「過去問を丸暗記してテストを受けた結果、応用問題に全然答えられない」学生の状態。出来上がったAIがテスト段階では上手く作動したように見えても、実際にデビューさせたら全く使い物にならない。サンプルで与えたデータの分析だけに特化してしまった…これを過学習(過剰適合)と言う。


こうしたAIが抱える弱点は、プログラミングする人間の腕次第では解決できる。が、やはりAIは「想定していなかった状況」に追い込まれると全く融通がきかない、とんでもない失敗をしでかす可能性がある、というリスクは決して消えることが無いだろう。


まとめ

ちなみに私事だが数年前、高校の同窓会で再開した旧友(プログラミング、情報解析のプロ)に
(・ω・)AIが人間を超える日が来るって本当?
と聞いたら
┐(´~`)┌「なワケ無ぇ。むしろどうすりゃ超えられるのか教えて欲しいくらいだ」
と言ってました。うん。そういうことらしい。

AIの技術は進化していますが、設計・メンテナンスが必要という点で結局、まだまだ人間の手が必要。
人間は試行錯誤、失敗を繰り返しながら成長していくものですが、AIに求められるものは結局「計算機を通した」間違いの無い答え。失敗することもある人間の判断力というものを機械で再現すること自体、よく考えると矛盾している気がする。

Amazonより)

(`〇-〇)「この本オススメだよ」


以上。

【精神医学】~発達障害~

大人の発達障害について

発達障害とは

最近、うつ病や不安症などの原因や会社や人間関係で困難をきたしている人の原因として注目を浴びるようになってきた疾患概念です。発達障害者支援法により定義付けられ、主に
①広汎性発達障害
②学習障害(LD)
③注意欠陥多動性障害(ADHD)
の3種類に分類されています。自閉症やアスペルガー症候群は①の広汎性発達障害に含まれます。


自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder)

これまでアスペルガー症候群、高機能自閉症、早期幼児自閉症、小児自閉症、カナー型自閉症など様々な診断カテゴリーで記述されていたものを、「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」の診断名のもとに統合されました。

特徴
対人関係・社会性の障害…集団に馴染めない、いわゆる「空気を読む」ことが苦手。
コミュニケーションの障害…自分のことばかり話す、自覚がないまま失礼な物言いをしてしまう。
パターン化した行動・想像力の障害…こだわりが強く、物事の変化に対応するのが苦手。


注意欠如・多動性障害(Attention-Deficit / Hyperactivity Disorder)

特徴
衝動性…熱しやすく冷めやすい、思いつきで行動しがちで待つことが苦手。
不注意・多動…忘れ物が多い、気が散って仕事に集中できない。


限局性学習障害(Specific Learning Disorder)

特徴
「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」という能力のうち、極端に苦手な部分がある。
他の部分は問題なくても「メモをとるのが苦手」「電話での対応が苦手」「数字や計算が苦手」など。



発達障害者支援法とは?法律の内容や支援対象、実際に受けられる支援についてご紹介します 2019/10/02

障害は「個人の問題」ではなく「社会の問題」
2016年の発達障害者支援法改正で、発達障害のある人が社会生活を営む上で直面する不利益は、本人ではなく社会の責任であるという考えが明確に示されました。つまり「車椅子の人が階段を上れないのは個人の障害」ではなく、「エレベーターやスロープを用意しない社会の障害」であり改善されなければならない、という考え方と同じ。


以下、私見を交えた解説

10~15年ほど前(私が医学生だった頃)まで、「自閉症」には「アスペルガー(知能は高い)」「カナー(知的障害を伴う)」という区別があったり、「自閉症」と「ADHD」は対照的な障害だから合併することはない、などと言われていました。現在は「スペクトラム」という概念に変わり、そもそも正常と自閉症との間に線引きは出来ない、と言われるようになりました。自閉症とADHDが合併することは珍しくないという事も分かってきました。

発達障害は「社会の問題」なので、症状を治すことが目標とも限りません。症状があっても無くても気にせず生活・仕事できる、というのが理想的です。まぁ誰しも、環境や相性の問題で「空気読んでよ!」「ちゃんと話聞いてよ!」と怒ったり怒られたりするもの。相手に責任を負わせるのではなく、「どうすればお互い気持ちよく過ごせるかな」という視点で問題解決をはかりましょう。アサーションとか(10月02日の日記参照)是非知って欲しい。きっと役に立ちます。

治療者においては、ちょっと気を付けておくべきポイントとして「鑑別疾患」を忘れないようにしましょう。「こだわり」は自閉症だけの特徴ではありません(1月7日の日記参照)。別の疾患による症状としての思考障害(7月27日の日記参照)が背景にあるかも。ADHDの「熱しやすく冷めやすい」特徴も、もしかしたら双極性障害(躁うつ病)の症状かもしれません。正しく診断し、正しい治療に繋げることが精神科医療従事者の責務です。


以上。

【お知らせ】~メインページ更新、と今後の課題~

去年からの変更点をまとめます。
日記更新だけじゃなく、一応管理人として仕事してます、というアピール。


教授挨拶

本文の細部書き直しと、所属学会を最新情報に訂正。
(`・ω・)「更新だね?すぐ送るよ!」
と言われて当日中に教授から原稿が送られてきた。速い。


診療案内

昨日こっそり更新。外来の曜日が月・水・金曜日となりました。
最近、外来棟が建て替わりました。…が、写真が古いまま。
しかし泌尿器科さんと共用の診察室ということもあり、どんな写真に差し替えれば良いんだろうか?悩み中。


病棟紹介

これは完全に写真・情報とも古いまま。
昨年5~6月頃に最新の写真を撮ろうとしたら「そもそも撮らないで欲しい」という意見もあったため保留となり、現在に至る。


医局紹介

全く手を加えていません。書き換える内容でも無いし。
個人的には、こんな堅苦しい文章でなくもっとロックンロールな内容にしたかったが…。


教室員紹介

けっこう書き換えました。既に退局された先生や、新しく入局された先生、専門・所属を最新情報に。


入局案内シリーズ

後期研修医募集大学院生募集専攻医募集。この3つ、完全に情報が古いまま。
次年度へ向けて更新せねば。


先輩からのメッセージ

(`^ω^)「うわぁ僕のが残ってる!恥ずかしい!消してー!」
(・ω・)わかりました善処します(ぜったい消さない)

※どうでもいいけど脱線


『宇宙からのメッセージ』(1978)邦画衰退期の「スター・ウォーズのまがい物」だと切り捨てるには、惜しい 2018-04-29

〇〇からのメッセージ、って聞くとコレ思い出しますよね。うん、それだけ。


rTMS療法

写真、本文とも最新版に差し替えました。
撮った写真、業者さんが格好よく加工してくれました。うれしい


研究紹介

(´-ω-)「ちょっと古い図とか解説が残ってたので、訂正原稿を送りますね」
溝口准教授より頂いた原稿をもとに、最新情報に書き換えました。


業績

(`・ω・)「この論文も追加しといて!」
という教授からの指示のもと、ちょくちょくアップデートしていました実は。
どうでも良いけどGoogle Chromeで開くと「日本語に訳しますか」と毎回出てくる。


学位取得者

令和2年度、今村先生、國武先生、立石先生が学位を取得されましたので、追記しました。
…ただ、無味乾燥な気もする。もっと「学位取ったでドヤァ!」と攻めた内容にしてみたいのだが。


リンク集

何気にここの更新が一番、手間かかった。各病院、クリニックに確認の連絡をとりました。
新しくwebサイトが立ち上がったところもあれば、URLが変わったところもあった。


トップページ

全く手を加えていないのだが、流石にこの写真(一部、合成くさい…)は古い。更新しようと思いつつ放置してしまった。
そろそろ変えるか、どうするか、結論が出ないまま。


※おまけ

サーバーの中身をチェックしてたら、古いトップページ写真とかが残ってた。

教授の若い頃(?)の写真も。


まとめ、今後の課題

急務
・入局案内(後期研修医、大学院生、専攻医)の情報を次年度バージョンに更新

写真更新系
・トップページの写真
・外来の写真
・病棟の写真


以上。

【医局会】~来年度へ向けて~【研究がんばろう】

new_ikyokukai

外来ネットワークシステム!…しかし精神科では導入困難?

(´=ω=)「溝口先生から言伝を預かってます」
「(´-ω-)「ネットワークを通じて、院外から電子カルテにアクセスし、外来の予約が取れるシステム…の導入が検討されています。システム導入の可否について、各診療科で意見を纏めることとなりました。」」
(・ω・)おおっ便利そうですね
(´=ω=)「んーでも、精神科の場合は診察時間が長めだし、特に新規の患者さんの場合は午前中いっぱい掛かってしまうこともあるから、準備が整わないまま外来予約を引き受けるのは…どうなんでしょうかね?」
(´・∀・)「トラブルの元になるかもしれません。導入には慎重になった方が良いかと」
(`・ω・)「では現時点では参加せず、の方針としておきましょう」


来年度、役割分担!

(´=ω=)「来年度の人事が決まったことですし、お次は”役割分担”です!」

※説明しよう!(・ω・)

(´-ω-)「外来医長、図書係」
(´=ω=)「医局長、学校医」
(`・v・)「学生担当」
(`〇-〇)「病棟医長、同門会事務長」
(´・∀・)「リエゾン医長、外来副医長」
(`^ω^)「病棟副医長、保健福祉センターへの出張相談担当」
(^0^)「チーフレジデント」
(・ω・)ホームページ管理人
(´_ ゝ`)「研修医の指導」
( `-ω)「書類担当」
(σ‿ σ)「脳波読影会の司会」

などなど、色々な役割分担があるのです。
(・ω・)常勤の先生方は複数・責任重大な仕事を担当。若手の先生方は修行がてら1個ずつ割り振り、です。

Σ(・ω・)あれ、来年のホームページ係だけ空欄のままですぞ医局長
(´=ω=)「んー、それなりにインターネットに強い若手の先生を任命しようと思うんだけど」
(´=ω=)「まだちょっと迷っていてね。」
(´=ω=)「候補としては、現在某病院に派遣中の某医員あたりかなー」
(・ω・)よっしゃ引継ぎの準備を進めておきます


ホームページ更新しました

(・ω・)先日、業者さんとの打ち合わせが完了しました!
(・ω・)古い情報の更新など、細部に変更を加えました。
(・ω・;)あ、でも外来の曜日とか古いままだった。これは後日自力で書き換えますね


研究がんばろう!~教授、語る。~

(`・ω・)「僕も定年が近い。皆さん、これからの研究分野での活躍を期待しています」
(`・ω・)「特に学位取得した医局長くん、病棟医長くん!君たちも間もなく”講師”になります」
(`・ω・)「これからは君達が、後輩に研究を教えて、後輩の学位取得を指導する側になるんです!」
(`・ω・)「学位は足の裏の米粒。取らなくていいけど取らないと気持ちが悪い。せっかく医局に居るんだから、学位を取るために是非、この環境を活かしてください!」
(`・ω・)「以前にも語ったことがあるけど、僕自身も昔は、研究なんて全然知らなかったんです」
(`・ω・)「分からないことだらけでスタートして、沢山人に聞いて、自力で調べて…ここまで来ました」
(`・ω・)「臨床やっていると、ついつい”業務が忙しくて…”と後回しにしがち。けれども研究に携わった経験は、臨床にも必ず役に立ちますよ!」
(`・ω・)「皆さん、本当に実力あると思います。僕はそう信じてます。だから是非、若いうちから研究に触れて欲しいんです」
(`・ω・)「分からないことがあれば僕がサポートしますし、基礎系の先生に質問に行くのも良いでしょう!みんな志同じ者です。きっと喜んで教えてくれますよ!」

(・ω・)教授の熱い思い、我々が引き継いでいかねば!ありがとうございます


以上。

【リラクゼーション法】~自律訓練法、筋弛緩法~

「眠れない」「緊張して肩がこる」という患者さんにオススメしている方法。
そこまで症状が無くても、リラクゼーション法ってのは覚えて損は無いと思う。いつでも役に立ちます。



自律訓練法の健康効果とは 更新日:2019年2月 1日

自律訓練法

1932年にドイツの精神科医シュルツ(Schultz, J. H.)によって体系化されたもの。催眠療法の一種。
自律訓練法は、自己催眠により意識的にリラックス状態をつくり、自律神経のバランスを回復させる最も基本的な治療法として精神科や心療内科で導入されています。


やり方 ~自律訓練法の7つの公式~

行う際は仰向けに寝た状態か、椅子に腰かけた状態になります。寝た状態で行う場合には床などの硬い場所ではなく、布団やマットなどリラックスできる場所にします。
軽く目を閉じた状態で、7つの公式を唱えます。声を出さずに心の中でくり返すようにします。


背景公式:「気持ちが落ち着いている


第1公式:「右腕が重たい→左腕が重たい→両脚が重たい


第2公式:「右手が温かい→左手が温かい→両脚が温かい


第3公式:「心臓規則正しく打っている」


第4公式:「楽に息をしている」


第5公式:「お腹温かい


第6公式:「が心地よく涼しい

時間は1回3~5分で毎日2~3回行います。



終わり方 ~消去動作~

訓練を終えるときは、最後に「消去動作」を行って自己催眠状態から醒めてください。両手を上げて大きく伸びをしたり、両手を強く握ったり、開いたり、肩や首を大きく回すなど、意識や筋の状態を通常レベルに引き上げるための動作です。ただし入眠前であれば、消去動作はせずにそのまま眠っても大丈夫です。



リラクゼーション法(漸進的筋弛緩法)とは? 更新日:2019年08月30日

漸進的筋弛緩法

筋肉は緊張させてから力を抜くと、脱力しやすくなります。『漸進的筋弛緩法』は、これを利用してリラックス状態を身に着けていく方法です。
前準備(リラックスできる場所など)は省略。詳しくは上記webで。

まずは手からはじめていきます。片手ずつ行っていきましょう。親指を中にいれて包むようにしてこぶしを握りこみます。この時も呼吸を大事にしてください。息を吸いながら力を込め吐くときに力を抜くようにしましょう。力を抜くときに、筋肉が緩んで緊張がほどけていく感覚を十分にゆっくりと感じてください。これを2~3回繰り返します。

手が終わったら、腕(力コブを作る)、肩(肩をすぼめる)、背中(肩甲骨をよせる)、首(左右にひねる)、顔(全体をすぼめる)、お腹(手を当てて押し返す)、太もも(足を延ばす)、足(そらす)とすすめていきます。

最後に全身をチェックして、緊張が残っていないかを確認します。


まとめ

寝つきの悪いアナタ。睡眠薬に頼る前に、まずはリラクゼーション法を試してみませんか。
「自分の体、自分の神経を、自分自身でコントロール」できる体験をするだけでも、不思議な安心感が生まれますよ。

以上。


言葉の選び方(前編)

半月ほど立て続けに2件の心配事に悩まされていました。1件はすぐに解決しましたが、それとほぼ同時に発生したもう1件の心配事は、1週間ほど待たされた結果、昨日一応の結論が出ました。

詳細は言いたくないですが、私にとってガッカリする結果に終わったことは間違いないです。次にやるべき道は決まったわけですが…ちょっと今は手を付けたくないというか。

今年もお祓いに行った方がいいか、真剣に考えているところです。


さて、この仕事を始めて数年経ちましたが、特に去年くらいからは物の言い方に気をつけるようになってきました。

他の診療科と比べると精神科は患者さんの話す機会が多い。また関係先に電話とかメールをすることもありますからね。


ここで言う「物の言い方」とは、口調や表情ではなく、言葉の選び方です。

同じことを伝えるのにも、この言葉だとちょっと患者さんに刺激すぎるのではないかと考え、別の表現を使ったりとか。


本屋に行ってみても「言葉の選び方」についての本も多く見かけるようになってきました。その中で1冊よさげな本を見つけたので、今度買ってみてその感想をまたの機会に載せようと思います。

今日のタイトルに「前編」と付けたのはそのためです。

【精神医学】~廃れた昔の治療法~


金原出版 「現代臨床精神医学」第12版
ISBN:978-4-307-15067-5
P.509 かつて実施されていた治療法 より

現在ではまったく用いられていない、昔の治療法。歴史として知っておこう。
精神科の歴史においては、酷い時代があったのです。



インスリン・ショック療法(Wikipedia)

1933年に提唱。統合失調症に対する治療法として用いられていた。インスリンを注射することで人為的に低血糖ショックを引き起こす。治療効果は乏しく、危険性が高い。1960年以降は行われなくなった。



睡眠持続療法(コトバンク)

1920年代に提唱。睡眠薬を用いて、日中も含めてずーーーっと眠らせる治療法。統合失調症、うつ病に効果があるのでは、として盛んに用いられたが、1960年以降は行われなくなった。



発熱療法

進行麻痺に対する治療法。ワザとマラリアに感染させる。そして発熱する。その後、キニーネを用いてマラリアを治療する。画期的な治療法として、提唱者であるユリウス・ワーグナー=ヤウレック(Wikipedia)は、何と1927年度ノーベル生理学医学賞を受賞した。その後、抗生物質の出現により、発熱療法は行われなくなった。



ロボトミー手術


2019年10月25日 演題「教養としてのロボトミーQ&A」

ロボトミーは精神病の治療法の1つで、狭義では前頭葉白質切截術である。広義的には精神外科手術全般を指す。人類最悪の手術、呪われた手術と言われている。脳の構成をする大きな単位である「葉(Lobe)」を一回に切除することを意味するLobectomy(葉切除)がロボトミーといわれるようになった。

前頭葉を全部切断すると二匹のチンパンジーはおとなしくなり、リラックスして落ち着きを取り戻した。この結果を1935年ロンドンで開かれた第二回国際神経学会で発表した。ロンドンの会議の4ヶ月後にモニスは初めて人にその手術を行った。

…詳細を知りたい方は上記URLを参照。(人によってはショックを受ける内容・写真が含まれていますので要注意)


1960年代以降、廃れた理由

教科書には書いてありませんでしたが、たぶん理由は「抗精神病薬」が普及したため。

Twitter 精神科医ぷしこノート 2014年5月11日

初めて登場した抗精神病薬であるクロルプロマジン、少し後に登場したハロペリドール。2つとも、現在も精神科においても処方されることがあるお薬です。新しい薬に比べると副作用が出やすいものの効き目は強く、「精神疾患をお薬で治せるようになった」という歴史的な意味は大きい。


まとめ

私も初めて知ったときは「なんて非人道的な!」と感じましたが、よく考えると患者さんの人格や感情を変えてしまい得る、という精神科治療そのものが恐ろしいのだと言える。どこまでが本来の人格であり、何をもって症状とみなして治療するか。精神科においては、常に倫理的な視点、判断が求められます。いま流行している治療だって、数十年後には批判されるのかもしれない。

しっかり最新の知見を学びつつ、時には「もっと良い治療法は無いのだろうか」という視点で振り返っていきましょう。


以上。

【認知症】~認知予備力とは~


アークメディア 臨床精神医学 第49巻第5号 発行日:2020年05月28日

認知予備力と認知症予防 (大阪河﨑リハビリテーション大学)武田 雅俊
教育と認知症予防 (大阪市こころの健康センター)喜多村 祐里
運動と認知症予防 (国立長寿医療研究センター)島田 裕之


認知予備力

脳の老化による機能低下に拮抗して、認知機能を維持する力。
脳にアミロイドβが沈着したり、脳が委縮しても、認知予備力が高い人では不思議なことに直ぐには認知症にならず、発症時期を遅らせることが出来るようです。


スタッフブログ 2019.02.22 認知症の研究について


Nun Study

「100歳の美しい脳」(David Snowdon著2004年)で紹介されたnun-studyという研究報告です。アメリカの修道女(Nun)678名(75歳~102歳)を対象に、毎年認知テストを行い、その経過を調べました。さらに被検者が死亡後、解剖して全員の脳の状態を記録しました。すると、脳が委縮しアルツハイマー型認知症の状態であるのに、まったく認知症の症状が出なかった人が8%いたそうです。
8%の人たちの共通点は、毎日規則的で役割を持った生活をしており、そのような生活が病変に打ち勝つことを示唆していたと報告されています。


上記雑誌によると、認知予備力の要素としては…

・児童期の認知機能が高い(8歳頃が重要らしい)


・思春期に穏やかな成熟した性格であった


・教育歴、学歴が高い


・社会経済的地位が高い


・健康(高血圧、糖尿病、難聴、喫煙、飲酒などは認知症リスク)

とのことでした。



運動
健康に良いから当然、認知症予防にも繋がる…かと思いきや、今のところ証明されていないようです。運動といっても激しいものから軽いものまであるし、どの程度が適切な運動量・運動習慣なのか、これからの研究に期待です。


まとめ

結論として「よく勉強し、健康に気を遣い、心にゆとりを持って、たくさんの人と接する」ことが大事。認知症の予防に役立ちます。

以上。

【精神医学】~摂食障害~


金原出版 現代臨床精神医学
ISBN 978-4-307-15067-5



神経性無食欲症

食事を摂ろうとせず、意図的に痩せ細っていく病気。若い女性に多いため、婦人科領域でも出会う疾患です。
「痩せたい、太りたくない」という願望が病的なレベルになっており、ガリガリに痩せても「まだ太ってる、もっと痩せたい、こっちの方が調子が良い」と言うなど、ボディイメージの歪み、価値観の倒錯、を示す。食べないだけでなく、自ら嘔吐、下剤・利尿剤を乱用、過度な運動をしたりする。

BMI:体重(kg)/身長(m)の二乗 が17.5以下、標準体重の85%以下
例として、身長160cmの人であれば、体重45kg未満だと診断基準を満たすことになります。

痩せすぎる…と、命の危険が生じます。低栄養状態により内分泌に異常をきたし、女性であれば月経が止まってしまうことも。脳波の異常、脳CT、MRIで脳の委縮が見られる、との報告もあります。(病気が治れば元に戻りますが。)



神経性大食症

ストレスを解消しようとするため、抗しがたい食欲により、むちゃ食いを繰り返す。体重を維持しようとするために自ら嘔吐する、下剤・利尿剤を乱用する、という点は無食欲症と同じ。無食欲症からこちらに移行するパターンもある。
嘔吐を繰り返した結果、電解質異常を生じ、テタニー、てんかん発作、不整脈などの合併症を引き起こすことがある。


治療、予後


摂食障害Q&A

診断を確定すること、心と体がどのような状態なのか判断することがまず第一歩になります。
治療法は基本的な心理教育や栄養療法の他、心理療法と薬物療法が中心になります。

心理教育では病気に対する正しい知識を身につけ、健康的な食生活に改善するための助言などをします。認知行動療法や家族療法などの専門的な治療が行なわれることもあります。摂食障害に対する特効薬はありませんが、体や心の症状に対して薬を使用することがあります。(抗うつ薬、抗不安薬、抗精神病薬)

残念ながら一部に長期化する方や、亡くなる方もいるのは事実です。日本でのある報告 では、4~11年の追跡期間で摂食障害全体として、回復が53%、部分回復16%、不良24%、死亡7%と報告されています。



摂食障害
より詳しく知りたい方はこちら。臨床像についての解説、治療の難しさ、などが書かれております。

この様な治療の難しさを加速させるのが、併存症の多さです。精神科を受診する大多数が、抑うつや不安、不登校、ひきこもり、自傷行為、自殺未遂を繰り返すことが多く、予後はこれらの併存する病理により大きく左右されます。さらに、強迫性、回避性や、演技性、境界性パーソナリティ障害といった両極端なパーソナリティ障害を併存することが多く、さらに臨床像を複雑なものにしています。


まとめ、私見

大学病院においては、瘦せ過ぎて命の危険が差し迫った患者さんを対応することも少なくありません。しかしそうした重症の患者さんほど治療が難しい。食べなければ良くならないのに、頑なに食事を拒否してしまう。入院中であっても人目を盗んでトイレに駆け込み嘔吐しようとしてしまうため、目が離せない。治療においては心理教育が最も重要ですが、重症の患者さんほど「まだ痩せたい、吐きたい」と病気の自覚が無いことが多いため、信頼関係を結び、話を聞いてもらえる…までにも相当な時間を要します。

「体重が減っていくの気持ち良い!毎日、体重計に乗るのが楽しい!」という人は要注意。特に「食べ過ぎたら後で吐けば良いや」「そうだ下剤を使おう」まで来ると、既に治療が必要な段階と思われます。そうなる前の早めの治療が大事ですので、家族や知人から「ちょっと変じゃない?」と言われたアナタ、ぜひ精神科を受診ください。そのままで大丈夫かどうか、治療が必要かどうか、判断してもらいましょう。


以上。