医局日記

【お知らせ】~メインページ更新、と今後の課題~

去年からの変更点をまとめます。
日記更新だけじゃなく、一応管理人として仕事してます、というアピール。


教授挨拶

本文の細部書き直しと、所属学会を最新情報に訂正。
(`・ω・)「更新だね?すぐ送るよ!」
と言われて当日中に教授から原稿が送られてきた。速い。


診療案内

昨日こっそり更新。外来の曜日が月・水・金曜日となりました。
最近、外来棟が建て替わりました。…が、写真が古いまま。
しかし泌尿器科さんと共用の診察室ということもあり、どんな写真に差し替えれば良いんだろうか?悩み中。


病棟紹介

これは完全に写真・情報とも古いまま。
昨年5~6月頃に最新の写真を撮ろうとしたら「そもそも撮らないで欲しい」という意見もあったため保留となり、現在に至る。


医局紹介

全く手を加えていません。書き換える内容でも無いし。
個人的には、こんな堅苦しい文章でなくもっとロックンロールな内容にしたかったが…。


教室員紹介

けっこう書き換えました。既に退局された先生や、新しく入局された先生、専門・所属を最新情報に。


入局案内シリーズ

後期研修医募集大学院生募集専攻医募集。この3つ、完全に情報が古いまま。
次年度へ向けて更新せねば。


先輩からのメッセージ

(`^ω^)「うわぁ僕のが残ってる!恥ずかしい!消してー!」
(・ω・)わかりました善処します(ぜったい消さない)

※どうでもいいけど脱線


『宇宙からのメッセージ』(1978)邦画衰退期の「スター・ウォーズのまがい物」だと切り捨てるには、惜しい 2018-04-29

〇〇からのメッセージ、って聞くとコレ思い出しますよね。うん、それだけ。


rTMS療法

写真、本文とも最新版に差し替えました。
撮った写真、業者さんが格好よく加工してくれました。うれしい


研究紹介

(´-ω-)「ちょっと古い図とか解説が残ってたので、訂正原稿を送りますね」
溝口准教授より頂いた原稿をもとに、最新情報に書き換えました。


業績

(`・ω・)「この論文も追加しといて!」
という教授からの指示のもと、ちょくちょくアップデートしていました実は。
どうでも良いけどGoogle Chromeで開くと「日本語に訳しますか」と毎回出てくる。


学位取得者

令和2年度、今村先生、國武先生、立石先生が学位を取得されましたので、追記しました。
…ただ、無味乾燥な気もする。もっと「学位取ったでドヤァ!」と攻めた内容にしてみたいのだが。


リンク集

何気にここの更新が一番、手間かかった。各病院、クリニックに確認の連絡をとりました。
新しくwebサイトが立ち上がったところもあれば、URLが変わったところもあった。


トップページ

全く手を加えていないのだが、流石にこの写真(一部、合成くさい…)は古い。更新しようと思いつつ放置してしまった。
そろそろ変えるか、どうするか、結論が出ないまま。


※おまけ

サーバーの中身をチェックしてたら、古いトップページ写真とかが残ってた。

教授の若い頃(?)の写真も。


まとめ、今後の課題

急務
・入局案内(後期研修医、大学院生、専攻医)の情報を次年度バージョンに更新

写真更新系
・トップページの写真
・外来の写真
・病棟の写真


以上。

【医局会】~来年度へ向けて~【研究がんばろう】

new_ikyokukai

外来ネットワークシステム!…しかし精神科では導入困難?

(´=ω=)「溝口先生から言伝を預かってます」
「(´-ω-)「ネットワークを通じて、院外から電子カルテにアクセスし、外来の予約が取れるシステム…の導入が検討されています。システム導入の可否について、各診療科で意見を纏めることとなりました。」」
(・ω・)おおっ便利そうですね
(´=ω=)「んーでも、精神科の場合は診察時間が長めだし、特に新規の患者さんの場合は午前中いっぱい掛かってしまうこともあるから、準備が整わないまま外来予約を引き受けるのは…どうなんでしょうかね?」
(´・∀・)「トラブルの元になるかもしれません。導入には慎重になった方が良いかと」
(`・ω・)「では現時点では参加せず、の方針としておきましょう」


来年度、役割分担!

(´=ω=)「来年度の人事が決まったことですし、お次は”役割分担”です!」

※説明しよう!(・ω・)

(´-ω-)「外来医長、図書係」
(´=ω=)「医局長、学校医」
(`・v・)「学生担当」
(`〇-〇)「病棟医長、同門会事務長」
(´・∀・)「リエゾン医長、外来副医長」
(`^ω^)「病棟副医長、保健福祉センターへの出張相談担当」
(^0^)「チーフレジデント」
(・ω・)ホームページ管理人
(´_ ゝ`)「研修医の指導」
( `-ω)「書類担当」
(σ‿ σ)「脳波読影会の司会」

などなど、色々な役割分担があるのです。
(・ω・)常勤の先生方は複数・責任重大な仕事を担当。若手の先生方は修行がてら1個ずつ割り振り、です。

Σ(・ω・)あれ、来年のホームページ係だけ空欄のままですぞ医局長
(´=ω=)「んー、それなりにインターネットに強い若手の先生を任命しようと思うんだけど」
(´=ω=)「まだちょっと迷っていてね。」
(´=ω=)「候補としては、現在某病院に派遣中の某医員あたりかなー」
(・ω・)よっしゃ引継ぎの準備を進めておきます


ホームページ更新しました

(・ω・)先日、業者さんとの打ち合わせが完了しました!
(・ω・)古い情報の更新など、細部に変更を加えました。
(・ω・;)あ、でも外来の曜日とか古いままだった。これは後日自力で書き換えますね


研究がんばろう!~教授、語る。~

(`・ω・)「僕も定年が近い。皆さん、これからの研究分野での活躍を期待しています」
(`・ω・)「特に学位取得した医局長くん、病棟医長くん!君たちも間もなく”講師”になります」
(`・ω・)「これからは君達が、後輩に研究を教えて、後輩の学位取得を指導する側になるんです!」
(`・ω・)「学位は足の裏の米粒。取らなくていいけど取らないと気持ちが悪い。せっかく医局に居るんだから、学位を取るために是非、この環境を活かしてください!」
(`・ω・)「以前にも語ったことがあるけど、僕自身も昔は、研究なんて全然知らなかったんです」
(`・ω・)「分からないことだらけでスタートして、沢山人に聞いて、自力で調べて…ここまで来ました」
(`・ω・)「臨床やっていると、ついつい”業務が忙しくて…”と後回しにしがち。けれども研究に携わった経験は、臨床にも必ず役に立ちますよ!」
(`・ω・)「皆さん、本当に実力あると思います。僕はそう信じてます。だから是非、若いうちから研究に触れて欲しいんです」
(`・ω・)「分からないことがあれば僕がサポートしますし、基礎系の先生に質問に行くのも良いでしょう!みんな志同じ者です。きっと喜んで教えてくれますよ!」

(・ω・)教授の熱い思い、我々が引き継いでいかねば!ありがとうございます


以上。

【リラクゼーション法】~自律訓練法、筋弛緩法~

「眠れない」「緊張して肩がこる」という患者さんにオススメしている方法。
そこまで症状が無くても、リラクゼーション法ってのは覚えて損は無いと思う。いつでも役に立ちます。



自律訓練法の健康効果とは 更新日:2019年2月 1日

自律訓練法

1932年にドイツの精神科医シュルツ(Schultz, J. H.)によって体系化されたもの。催眠療法の一種。
自律訓練法は、自己催眠により意識的にリラックス状態をつくり、自律神経のバランスを回復させる最も基本的な治療法として精神科や心療内科で導入されています。


やり方 ~自律訓練法の7つの公式~

行う際は仰向けに寝た状態か、椅子に腰かけた状態になります。寝た状態で行う場合には床などの硬い場所ではなく、布団やマットなどリラックスできる場所にします。
軽く目を閉じた状態で、7つの公式を唱えます。声を出さずに心の中でくり返すようにします。


背景公式:「気持ちが落ち着いている


第1公式:「右腕が重たい→左腕が重たい→両脚が重たい


第2公式:「右手が温かい→左手が温かい→両脚が温かい


第3公式:「心臓規則正しく打っている」


第4公式:「楽に息をしている」


第5公式:「お腹温かい


第6公式:「が心地よく涼しい

時間は1回3~5分で毎日2~3回行います。



終わり方 ~消去動作~

訓練を終えるときは、最後に「消去動作」を行って自己催眠状態から醒めてください。両手を上げて大きく伸びをしたり、両手を強く握ったり、開いたり、肩や首を大きく回すなど、意識や筋の状態を通常レベルに引き上げるための動作です。ただし入眠前であれば、消去動作はせずにそのまま眠っても大丈夫です。



リラクゼーション法(漸進的筋弛緩法)とは? 更新日:2019年08月30日

漸進的筋弛緩法

筋肉は緊張させてから力を抜くと、脱力しやすくなります。『漸進的筋弛緩法』は、これを利用してリラックス状態を身に着けていく方法です。
前準備(リラックスできる場所など)は省略。詳しくは上記webで。

まずは手からはじめていきます。片手ずつ行っていきましょう。親指を中にいれて包むようにしてこぶしを握りこみます。この時も呼吸を大事にしてください。息を吸いながら力を込め吐くときに力を抜くようにしましょう。力を抜くときに、筋肉が緩んで緊張がほどけていく感覚を十分にゆっくりと感じてください。これを2~3回繰り返します。

手が終わったら、腕(力コブを作る)、肩(肩をすぼめる)、背中(肩甲骨をよせる)、首(左右にひねる)、顔(全体をすぼめる)、お腹(手を当てて押し返す)、太もも(足を延ばす)、足(そらす)とすすめていきます。

最後に全身をチェックして、緊張が残っていないかを確認します。


まとめ

寝つきの悪いアナタ。睡眠薬に頼る前に、まずはリラクゼーション法を試してみませんか。
「自分の体、自分の神経を、自分自身でコントロール」できる体験をするだけでも、不思議な安心感が生まれますよ。

以上。


言葉の選び方(前編)

半月ほど立て続けに2件の心配事に悩まされていました。1件はすぐに解決しましたが、それとほぼ同時に発生したもう1件の心配事は、1週間ほど待たされた結果、昨日一応の結論が出ました。

詳細は言いたくないですが、私にとってガッカリする結果に終わったことは間違いないです。次にやるべき道は決まったわけですが…ちょっと今は手を付けたくないというか。

今年もお祓いに行った方がいいか、真剣に考えているところです。


さて、この仕事を始めて数年経ちましたが、特に去年くらいからは物の言い方に気をつけるようになってきました。

他の診療科と比べると精神科は患者さんの話す機会が多い。また関係先に電話とかメールをすることもありますからね。


ここで言う「物の言い方」とは、口調や表情ではなく、言葉の選び方です。

同じことを伝えるのにも、この言葉だとちょっと患者さんに刺激すぎるのではないかと考え、別の表現を使ったりとか。


本屋に行ってみても「言葉の選び方」についての本も多く見かけるようになってきました。その中で1冊よさげな本を見つけたので、今度買ってみてその感想をまたの機会に載せようと思います。

今日のタイトルに「前編」と付けたのはそのためです。

【精神医学】~廃れた昔の治療法~


金原出版 「現代臨床精神医学」第12版
ISBN:978-4-307-15067-5
P.509 かつて実施されていた治療法 より

現在ではまったく用いられていない、昔の治療法。歴史として知っておこう。
精神科の歴史においては、酷い時代があったのです。



インスリン・ショック療法(Wikipedia)

1933年に提唱。統合失調症に対する治療法として用いられていた。インスリンを注射することで人為的に低血糖ショックを引き起こす。治療効果は乏しく、危険性が高い。1960年以降は行われなくなった。



睡眠持続療法(コトバンク)

1920年代に提唱。睡眠薬を用いて、日中も含めてずーーーっと眠らせる治療法。統合失調症、うつ病に効果があるのでは、として盛んに用いられたが、1960年以降は行われなくなった。



発熱療法

進行麻痺に対する治療法。ワザとマラリアに感染させる。そして発熱する。その後、キニーネを用いてマラリアを治療する。画期的な治療法として、提唱者であるユリウス・ワーグナー=ヤウレック(Wikipedia)は、何と1927年度ノーベル生理学医学賞を受賞した。その後、抗生物質の出現により、発熱療法は行われなくなった。



ロボトミー手術


2019年10月25日 演題「教養としてのロボトミーQ&A」

ロボトミーは精神病の治療法の1つで、狭義では前頭葉白質切截術である。広義的には精神外科手術全般を指す。人類最悪の手術、呪われた手術と言われている。脳の構成をする大きな単位である「葉(Lobe)」を一回に切除することを意味するLobectomy(葉切除)がロボトミーといわれるようになった。

前頭葉を全部切断すると二匹のチンパンジーはおとなしくなり、リラックスして落ち着きを取り戻した。この結果を1935年ロンドンで開かれた第二回国際神経学会で発表した。ロンドンの会議の4ヶ月後にモニスは初めて人にその手術を行った。

…詳細を知りたい方は上記URLを参照。(人によってはショックを受ける内容・写真が含まれていますので要注意)


1960年代以降、廃れた理由

教科書には書いてありませんでしたが、たぶん理由は「抗精神病薬」が普及したため。

Twitter 精神科医ぷしこノート 2014年5月11日

初めて登場した抗精神病薬であるクロルプロマジン、少し後に登場したハロペリドール。2つとも、現在も精神科においても処方されることがあるお薬です。新しい薬に比べると副作用が出やすいものの効き目は強く、「精神疾患をお薬で治せるようになった」という歴史的な意味は大きい。


まとめ

私も初めて知ったときは「なんて非人道的な!」と感じましたが、よく考えると患者さんの人格や感情を変えてしまい得る、という精神科治療そのものが恐ろしいのだと言える。どこまでが本来の人格であり、何をもって症状とみなして治療するか。精神科においては、常に倫理的な視点、判断が求められます。いま流行している治療だって、数十年後には批判されるのかもしれない。

しっかり最新の知見を学びつつ、時には「もっと良い治療法は無いのだろうか」という視点で振り返っていきましょう。


以上。

【認知症】~認知予備力とは~


アークメディア 臨床精神医学 第49巻第5号 発行日:2020年05月28日

認知予備力と認知症予防 (大阪河﨑リハビリテーション大学)武田 雅俊
教育と認知症予防 (大阪市こころの健康センター)喜多村 祐里
運動と認知症予防 (国立長寿医療研究センター)島田 裕之


認知予備力

脳の老化による機能低下に拮抗して、認知機能を維持する力。
脳にアミロイドβが沈着したり、脳が委縮しても、認知予備力が高い人では不思議なことに直ぐには認知症にならず、発症時期を遅らせることが出来るようです。


スタッフブログ 2019.02.22 認知症の研究について


Nun Study

「100歳の美しい脳」(David Snowdon著2004年)で紹介されたnun-studyという研究報告です。アメリカの修道女(Nun)678名(75歳~102歳)を対象に、毎年認知テストを行い、その経過を調べました。さらに被検者が死亡後、解剖して全員の脳の状態を記録しました。すると、脳が委縮しアルツハイマー型認知症の状態であるのに、まったく認知症の症状が出なかった人が8%いたそうです。
8%の人たちの共通点は、毎日規則的で役割を持った生活をしており、そのような生活が病変に打ち勝つことを示唆していたと報告されています。


上記雑誌によると、認知予備力の要素としては…

・児童期の認知機能が高い(8歳頃が重要らしい)


・思春期に穏やかな成熟した性格であった


・教育歴、学歴が高い


・社会経済的地位が高い


・健康(高血圧、糖尿病、難聴、喫煙、飲酒などは認知症リスク)

とのことでした。



運動
健康に良いから当然、認知症予防にも繋がる…かと思いきや、今のところ証明されていないようです。運動といっても激しいものから軽いものまであるし、どの程度が適切な運動量・運動習慣なのか、これからの研究に期待です。


まとめ

結論として「よく勉強し、健康に気を遣い、心にゆとりを持って、たくさんの人と接する」ことが大事。認知症の予防に役立ちます。

以上。

【精神医学】~摂食障害~


金原出版 現代臨床精神医学
ISBN 978-4-307-15067-5



神経性無食欲症

食事を摂ろうとせず、意図的に痩せ細っていく病気。若い女性に多いため、婦人科領域でも出会う疾患です。
「痩せたい、太りたくない」という願望が病的なレベルになっており、ガリガリに痩せても「まだ太ってる、もっと痩せたい、こっちの方が調子が良い」と言うなど、ボディイメージの歪み、価値観の倒錯、を示す。食べないだけでなく、自ら嘔吐、下剤・利尿剤を乱用、過度な運動をしたりする。

BMI:体重(kg)/身長(m)の二乗 が17.5以下、標準体重の85%以下
例として、身長160cmの人であれば、体重45kg未満だと診断基準を満たすことになります。

痩せすぎる…と、命の危険が生じます。低栄養状態により内分泌に異常をきたし、女性であれば月経が止まってしまうことも。脳波の異常、脳CT、MRIで脳の委縮が見られる、との報告もあります。(病気が治れば元に戻りますが。)



神経性大食症

ストレスを解消しようとするため、抗しがたい食欲により、むちゃ食いを繰り返す。体重を維持しようとするために自ら嘔吐する、下剤・利尿剤を乱用する、という点は無食欲症と同じ。無食欲症からこちらに移行するパターンもある。
嘔吐を繰り返した結果、電解質異常を生じ、テタニー、てんかん発作、不整脈などの合併症を引き起こすことがある。


治療、予後


摂食障害Q&A

診断を確定すること、心と体がどのような状態なのか判断することがまず第一歩になります。
治療法は基本的な心理教育や栄養療法の他、心理療法と薬物療法が中心になります。

心理教育では病気に対する正しい知識を身につけ、健康的な食生活に改善するための助言などをします。認知行動療法や家族療法などの専門的な治療が行なわれることもあります。摂食障害に対する特効薬はありませんが、体や心の症状に対して薬を使用することがあります。(抗うつ薬、抗不安薬、抗精神病薬)

残念ながら一部に長期化する方や、亡くなる方もいるのは事実です。日本でのある報告 では、4~11年の追跡期間で摂食障害全体として、回復が53%、部分回復16%、不良24%、死亡7%と報告されています。



摂食障害
より詳しく知りたい方はこちら。臨床像についての解説、治療の難しさ、などが書かれております。

この様な治療の難しさを加速させるのが、併存症の多さです。精神科を受診する大多数が、抑うつや不安、不登校、ひきこもり、自傷行為、自殺未遂を繰り返すことが多く、予後はこれらの併存する病理により大きく左右されます。さらに、強迫性、回避性や、演技性、境界性パーソナリティ障害といった両極端なパーソナリティ障害を併存することが多く、さらに臨床像を複雑なものにしています。


まとめ、私見

大学病院においては、瘦せ過ぎて命の危険が差し迫った患者さんを対応することも少なくありません。しかしそうした重症の患者さんほど治療が難しい。食べなければ良くならないのに、頑なに食事を拒否してしまう。入院中であっても人目を盗んでトイレに駆け込み嘔吐しようとしてしまうため、目が離せない。治療においては心理教育が最も重要ですが、重症の患者さんほど「まだ痩せたい、吐きたい」と病気の自覚が無いことが多いため、信頼関係を結び、話を聞いてもらえる…までにも相当な時間を要します。

「体重が減っていくの気持ち良い!毎日、体重計に乗るのが楽しい!」という人は要注意。特に「食べ過ぎたら後で吐けば良いや」「そうだ下剤を使おう」まで来ると、既に治療が必要な段階と思われます。そうなる前の早めの治療が大事ですので、家族や知人から「ちょっと変じゃない?」と言われたアナタ、ぜひ精神科を受診ください。そのままで大丈夫かどうか、治療が必要かどうか、判断してもらいましょう。


以上。

【精神科の実際】~精神科の「入院適応」とは~

10月22日の日記では「精神科の入院形態」について解説しましたが、今回は「そもそも何で精神科に入院せにゃならんのだ?」という点について解説。主には任意入院の患者さんの場合を想定した内容です。


診断と治療社 精神科研修ノート 改訂第2版
ISBN:9784787821904
P.166 入院適応の決定 より



外来との違い

日常生活を続けつつ、病院やクリニックに通う。まぁ、普通はこっちですよね。
7月9日の日記で紹介した自立支援医療制度も、「なるべく入院せず外来で治療しましょう」という国の方針に基づくもの。

しかし精神科の治療においては
・外来通院だと上手くいかない、症状が悪化しやすい
・(逆に)入院よりも外来通院でなければ意味が無い、治りにくい
というケースがあるので、外来の方が常に良いとも限りません。

外来通院は「ある程度、病気の自覚があり、病院に通う必要があることを理解している」のが前提となるため、例えば
・お薬の管理が出来ておらず、全く飲まなかったり一気飲みしたりしてしまう
・(病気の原因を調べるための)検査を拒否しており、ただ対処療法のみを求め続ける
という方の場合は、入院した方が安全かつ確実な治療効果が期待できます。

逆に「日常生活、社会生活に復帰する」というのも精神科治療における大事な目標ですから、
・入院生活の居心地に慣れてしまい、入院が長期化してしまっている
・入院すると直ぐ良くなるけど、日常生活に戻ると直ぐストレスで症状が再発する
という方の場合は、むしろ外来通院でなければ根本的な治療にならない、と言えます。


入院の目的

主に3つの目的があります。


その1 検査

精神科治療において忘れてはいけない、「身体の病気を原因とした精神症状」の可能性。脳腫瘍、脳炎、内分泌疾患、薬物中毒など。こうした原因を見落とすと後遺症になってしまう恐れがあるため、疑わしい場合には早めに検査して原因を調べる必要があります。


その2 安全確保

幻覚、妄想、抑うつ状態、といった症状が重症化すると、自傷や他害にまで発展する危険性があります。激しい興奮状態でなくとも、「もう何日もろくにご飯を食べていない」「身体の病気の治療がほったらかしになってしまっている」でも危険な兆候です。こうした場合は入院を躊躇うべきではなく、やむを得ない場合には非自発(つまり強制的)入院となります。



その3 慢性期治療における治療手段として

①外来では出来ない治療法
rTMS(磁気刺激法)、mECT(電気けいれん療法)、クロザピンなど、こうした治療法は入院でなければ導入できません。外来通院治療でやれる事は全て試したが、それでも治らない…という場合、こうした治療を導入する価値は大いにあるでしょう。
特殊な治療法に限らず、入院森田療法など一部の精神療法、カウンセリングは、入院してじっくり時間をかけて取り組んでこそ真価を発揮するものです。

②身体の治療と並行して
使いたいお薬、試してみたい治療法があっても、副作用とか身体の病気への影響が懸念されるため出来ない…など。入院であれば、万が一身体に影響が出た場合でも素早く対処できるため、安全です。
(ちなみに我らが大学病院が最も得意とする分野。あらゆる診療科の先生が居ますので、様々な合併症治療と並行しての精神科対応を担っています)

③休養
実は「入院しただけ」で症状が改善する人、けっこう多いです。日常生活を離れて休養に専念する、それ自体も精神科においては有効な治療法のひとつ。病気が長引いている方々においては、それを支える家族など支援者も疲弊していることが多く、お互いに一旦距離を置きお休みすることでお互いに余裕を取り戻し、行き詰っていた治療が一歩前進することがあります。


まとめ

私見になりますが「入院を避けている患者さんこそ、入院すべき」というケースが多いと感じます。外来通院を続けてきた患者さんが徐々に調子を崩し、いよいよ生活に支障が出てきてから入院を勧めても「入院だけはしたくなかったのに!」「もうおしまいだ!」と必要以上にショックを受けてしまう場面を見たことが、少なからずありました。

入院=重症、というのが一般的なイメージかもしれませんが、精神科の場合はむしろ「重症化する前に入院を体験しておく」ことが推奨されます。治療の選択肢を広げ、いざという時の駆け込み寺的な安全地帯を知っておくことで安心要素が増え、外来通院での治療効果も高まります。

外来では診察の時間が限られていますが、入院であればじっくりと時間をかけて診察してもらえるので、正しい診断、適切な支援に繋がることも期待されます。
(あと主治医の先生の、外来では分からなかった意外な一面を見ることも出来たり…(・ω・)


以上。

【まとめ】~1月の記事まとめ~【医局会】特になし

【医局会】

(´-ω-)(・ω・)(´_ ゝ`)(σ‿ σ)「…」
(´-ω-)「えっと、あの、これで全員かな。何か連絡ある?」
(・ω・)(´_ ゝ`)(σ‿ σ)「とくにないです」
(´-ω-)「では解散で。」


【1月の記事まとめ】

医学系記事で過半数、ノルマ達成。

医学 18/31(58.1%)

【書籍紹介】~誤作動する脳~ 2021.01.03
【精神療法】~音楽療法~ 2021.01.05
【精神科医に告ぐ】~患者さんを傷つけていませんか?~ 2021.01.06
【雑誌紹介】~精神障害とこだわり~ 2021.01.07
【雑誌紹介】~新しめの精神科のお薬についての論文~ 2021.01.08
【精神医学】~オセロ症候群~【と、おまけ】 2021.01.11
【リハビリ】~作業療法(Occupational Therapy)~ 2021.01.12
【論文紹介】~先端技術と精神科診断~ 2021.01.13
【災害医療】~災害の種類まとめ~ 2021.01.14
【雑誌紹介】~多文化共生社会における精神療法~ 2021.01.15
【精神疾患分類】~ICD-11へのアップデートに備える~ 2021.01.19
【精神症候学】~不安とは~ 2021.01.20
【精神科のお薬】~抗不安薬について~ 2021.01.21
【雑誌紹介】~稀な精神症状まとめ~ 2021.01.22
【精神医学】~睡眠障害まとめ~ 2021.01.27
【精神医学】~精神科における専攻分野まとめ~ 2021.01.28
【就労支援】~就労移行、A型・B型作業所について~ 2021.01.29
【地域連携】~佐賀県の精神科病院まとめ~ 2021.01.30


雑記

【まとめ】~12月の日記振り返り~ 2021.01.01(過去まとめリンク集あり)
【医局会】~教授からの挨拶と報告~ 2021.01.04
【車ネタ】~降雪と自動車運転~ 2021.01.10
【医局雑談】~VRの発展~ 2021.01.18
【雑学ネタ】~オンラインゲームと感染症モデル~ 2021.01.24
【医局会】~感染対策~【あと映画ネタ】 2021.01.25
【Excel講座】その5(終)~引継ぎ~ 2021.01.26
【雑記】~精神科医の性格分類~【私見】 2021.01.31


前管理人

管理人も年明け、コジマも年明け 2021.01.02
ゼロリスク信仰を捨てることの勧め 2021.01.09
受験シーズン到来 2021.01.16
反省と引き締め 2021.01.23


教授の音楽療法

【教授の音楽療法】第19回 ~名画の中の洋楽~ 2021.01.17


【今後の目標】

早いもので、私の管理人としての担当期間も残すところ2ヶ月となった。
勉強習慣が身に付いたのは良いが、普通に教科書・ネットに載ってる情報をまとめただけでは面白くない気がしてきた。無味乾燥というか特色に欠けるというか。医局日誌という情報発信の場としては若干、勿体ない。

というわけで、精神科臨床医として、大学病院として、精神科医局としての「価値ある情報」発信をしていきたい。
ただし基礎的な内容も随分幅広く扱ってきたので、せっかくだから最終的には全範囲、全分野ある程度カバーもしたい。

残り2か月、
・医学系記事においては教科書の内容プラスアルファ、時には私自身の経験談を含める
・医学系記事率50%には拘らない
・精神医学は全ジャンル制覇する

を目標に掲げ、来年度の管理人へと引き継いでいきます。

以上。

【雑記】~精神科医の性格分類~【私見】

今まで私が出会ってきた精神科医について、性格別に分類してみる。
といっても特定のモデルが居るわけではなく、あくまでイメージ。誤解なきよう。



のんびり屋

特徴:プライベートを重視し、有給休暇フル消化は当たり前。同僚から白い目で見られることがあるも、全く動じない。しかし誰よりも「ストレスなく生きる」お手本。そのためか、担当患者さん達は皆、不思議と症状が安定していく。



神経内科寄り

特徴:「精神疾患は脳の病気」という考え方。神経内科医の必須アイテムである打腱器を、常に持ち歩いている。器質的な原因を見落とさないよう、検査・身体診察に抜かりの無い、しっかり者。薬の調整も上手。…けど患者さんからは「診察時間が短い」「なんか冷たい」と誤解されがち。



カウンセラー派

特徴:「精神疾患は心の病気」という考え方。心理学的アプローチを得意とし、何十分でも話を聞いてくれるので患者さんからの人気は高い。ただ、体調を崩したときに相談しても「ストレスですねー」で流されちゃうことがあるので注意。



ジェネラリスト

特徴:聴診器、ペンライトを常に持ち歩いている。「精神科医である前に医者である」という考え方。精神科以外の研修会にも積極的に参加、内科系・救急系当直アルバイトもこなす。自立心が高く、開業または病院跡継ぎなど、将来を見据えていることが多い。



風来坊

特徴:自由人。のんびり屋と第一印象は似ているが、捉えどころのないアクティブさが特徴。全く別の職種から医者に転職した人や、「去年は趣味で世界一周してました」など。ポテンシャルが高く、マイペースに見えて誰よりも資格取得・独り立ちが早い。



生真面目

特徴:完璧主義の癖がある、ちょっと不器用な先生。夜遅くに病棟へやってきて「今からカルテ書かなきゃ…」という残業は日常茶飯事。書類仕事、カルテ情報整理、研究の資料集め、など、実は人目につかない部分で大活躍している。


マッスルドクター

特徴:外科医並みにノリが体育会系、テンションが高い。診察時には自分から患者さんに熱く語ってしまう癖がある。とにかく強烈な存在感のため、スタッフからも患者さんからも「昔、すごい先生が居たんですよ」と後々までの語り草になっている。



まとめ

私は経験年数が未だ浅いので、まだ出会ったことのないタイプは沢山居ると思います。研究者に多いタイプ、専門分野ごとのタイプ、など色々あるだろう。これからの人生経験に期待。
あとこれは個人的な都市伝説(?)なのですが、「患者さんは主治医の性格に影響を受ける」ような気がする。不在の先生の代理で患者さんを診察したとき、のんびり屋の先生の患者さんは皆のんびりした印象、真面目でしっかりした先生の患者さんは皆しっかり者、でした。偶然かなぁ? いやでも、心理学における返報性の原理とか、何かしら関係している可能性はある。たぶん。将来、研究のテーマにしてみたい。


以上。