医局日記

【精神療法】~内観療法~


内観法.comより


~帰省したとき、父母にきちんと「ただいま帰りました」と頭を下げ、仏壇のある家なら線香でもあげてから旅装を解いてほしい。これは親から心理的に離乳するためのイニシエーション(儀式)である。大人というのは、人にして返す能力がある人のことである。帰省の楽しみを知りませんという人がいたら、内観研修所で一週間すわってくることを勧めたい。観の転換が起こるはずである。~


内観療法について紹介します。



内観療法

「吉本伊信」らが1940年代に開発した自己観察法。「悟り」を開くことを目的とし、「いかなる境遇にあっても感謝報恩の気持ちで幸せに日暮らしできる」ために行います。

内観者は6泊7日の「集中内観」を基本とし、内観研修所に宿泊し、「内観三項目」の「お世話いただいたこと」「して返したこと」「ご迷惑かけたこと」を母からはじめ、父、兄弟姉妹など、これまでの人生に関わった方々を順々に調べ尽くします。朝6時から夜9時まで、トイレやフロの時間も「1分1秒、惜しんで内観する」。その間、面接者が1-2時間おき、1日に8-10回、約5分の面接を繰り返します。

内観三項目を想起し、主観的および客観的に自己観察(セルフ・モニタリング)を行うことにより、「自己発見」へ至ります。その際、母性的な「恩愛感」の庇護のもとに父性的な「自責感」を深めることで、「我執から解放」されることを特徴とする、東洋・日本ならではの心理療法です。


集中内観のやり方について(内観法.com)


屏風。
部屋の一隅に立てられた二つ折りの屏風の中に座り、ひたすら自分自身を見つめ続ける。
他人に対して自分のした行為を、相手の立場に立って反省する。
内観中は、原則として、起きてから寝るまでの間、屏風の中で情報を遮断した状態で過ごすため、新聞・ラジオ・テレビ・携帯電話はもちろん、面接者以外の他の内観者と一切話をしてはいけない


自分史を振り返る。
自分史をめくるように、年代順に事系列順に。身近な人を一人ずつ。
原則として母から始め、母の次は父・兄弟・姉妹・配偶者・子供・友人…といった具合に。
あらゆる人に対しての自分を時間のある限り調べていく。
起きている間中、食事をしている時でも入浴中でも一分一秒を惜しんで内観する。



思い出す。
その人に対して、自分はこれまでどういう態度や行動をとってきたかを、3つのテーマで思い出す。
(1)「していただいたこと」
(2)「して返したこと」
(3)「迷惑をかけたこと」
(このテーマは、最も重要かつ困難なので、特に重点を置いて調べる)



正座。
面接者が屏風の前に正座をして、合掌・礼拝をする。面接者が屏風を開けて、内観者に「ただいまの時間、どなたに対して、いつのご自分を調べて下さいましたでしょうか」と問う。
面接が終わると、面接者が「ありがとうございました」と結び、再度お互いに礼をして屏風が閉じられる。


…なんかすごい。(・ω・)


Q&A

Q.内観法は宗教ですか?
A.内観法は宗教ではありません。内観をするとわかることは、「自分は何者か」ということです。

Q.やることによって、かえって状況が悪くなることはありませんか?
A.内観法に従って内観した場合、する前より悪くなった例は聞いたことがありません。

Q.一週間もずっと坐っているだけだと身体が鈍ってしまうと思うのですが?
A.不思議なことに、かえって身体が元気になり、不具合だった関節や腰痛が治ったり、身体中に力がみなぎり活き活きとしたりします。


まとめ

森田療法(12月21日の日記参照)と同じく日本オリジナルの精神療法(心理療法)。入院森田療法と同じく、集中内観は一定期間、日常生活から離れて行う必要があります。実際に治療として取り入れ実践している医療機関は少ないかもしれませんが、世界的にもそれなりに知名度はあるとのこと。

(1)「していただいたこと」
(2)「して返したこと」
(3)「迷惑をかけたこと」

自分自身を責め過ぎている人。他人のせいにしがちな人。自分自身の人生を、内観療法の3つのキーワードで振り返ってみると良いかもしれません。

「病気を治す」という西洋医学の観点とは異なり、「自分自身を成長させ、乗り越える力を身につける」というのが東洋医学のアプローチ。全ての人に有効とは限りませんが、いろんな考え方、着眼点、を知ることで、きっと役に立つときが来るでしょう。

以上。

【書籍紹介】~エリクソンの催眠療法入門~

(・ω・)催眠療法に興味がわいた
(・ω・)松島先生!催眠の教科書とかありませんか?!
(`・v・)「よし貸してあげよう」


金剛出版 ミルトン・エリクソンの催眠療法入門―解決志向アプローチ(2001年発行)
ISBN:4-7724-0689-1

(・ω・)内容の紹介を始める前に基礎知識から解説。


ミルトン・エリクソン(Milton Hyland Erickson)(1901年~1980年)(Wikipedia)

催眠療法家として知られる精神科医、心理学者。精神療法にしばしば斬新な手法を用いた事で知られる。

彼は極めて重篤な身体障害に悩まされていた(ポリオ、色覚異常、失音楽症)。特にポリオにより、17歳の時に目を除く全身が麻痺した事は彼に重大な影響を及ぼした。彼は回復するまでの退屈しのぎとして自分の家族を観察して過ごした。(その時に培われた観察眼が、後の催眠療法に大いに役に立ったみたいです。)

精神医学も催眠も独学であった。彼は大学で医学教育を受けたが、当時の米国では適切な精神医学の教育は殆ど受けられず、又、催眠もきちんとしたカリキュラムがなかったからである。その結果、彼は自分独自の技法を次々に開発していく事となった。「治療に抵抗するクライエントなどいない。柔軟性にかけるセラピストがいるだけだ」。この言葉に端的に表されるように、彼の技法は「ユーティライゼーション(Utilization:利用できる物はなんでも利用する)」を旨とした、臨機応変・変化自在なもので、その名人芸は「アンコモン・セラピー」、「魔術師」と呼ばれる。従来の催眠(古典催眠)とは大きく異なるため、エリクソンのそれは現代催眠、エリクソン催眠と呼んで区別するのが一般的である。


催眠(≠あやしげな魔術)

現代の日本国内(だけじゃないかもしれんが)では、催眠というと

…怪しい、胡散臭いイメージを持たれているのは間違いないだろう。精神科医ですら、催眠の効果を疑っている人が少なくないと思われる。しかし暗示をかけ意識を変容させるという技法自体は古くから存在していたものであり、それを医療に活かしていた時代があったのは誇張でも何でもなく事実だ。



フランツ・アントン・メスメル
(1734年~1815年)(Wikipedia)

ドイツ人の医師。動物磁気と呼ばれるものの提唱者。
1774年、メスメルはある女性患者に鉄を含む調合剤を飲ませることによって、患者の体内に「人工的な干満」を生じさせ、それから、患者の体のあちこちに磁石を付けた。患者は体中に流れる不思議な液体の流れを感じたと言い、数時間、病状から解放された。メスメルは患者を治癒させたのは動物磁気だと感じ、その研究を続けた。メスメルの概念と実践の発展が、1842年のジェイムズ・ブレイドによる催眠術の開発をもたらした。



ジェイムズ・ブレイド(1795年~1860年)(Wikipedia)

イギリス、スコットランドの外科医であり催眠の研究者。催眠や催眠療法についての極めて重要な革新をもたらした。1841年に見聞したメスメリズム=動物磁気の現象を「磁気とか関係無くね?暗示だろコレ」と見抜き、独自に研究を行い、実験によって証明した。これをヒプノティズム=催眠と命名した。
それまでオカルト的に思われていたものを「千里眼とか心を読むとか、そんな超常的なもんじゃないってばよ」と、科学的な現象として扱うように提唱した意義は大きい。


トランス(trance)(Wikipedia)

通常とは異なった意識状態。催眠においては”表層的意識が消失して心の内部の自律的な思考や感情が現れる”状態。脳波ではアルファ波〜シータ波が優勢になる。
催眠療法は、患者さんをトランス状態に導くことで症状の改善をはかるのだ。


で、本の内容紹介。

入門書と言いつつ、ある程度催眠について知識がある医師、心理師向けの内容です。「催眠とは~」「その歴史は~」「トランスとは~」といった基本的な解説は無い。「どうやってトランスに導くか?」を主題としたもの。
催眠は誰にでも効くわけじゃない。「俺はぜってー催眠にかからないもんね!」と拒否する気満々の人だったら無理に決まってる。
エリクソン先生は、あの手この手で患者さんをトランスに導くことが出来たので、有名になったのだ。

さてこの本、マニュアルとか手順…は、あるようで無いような。
(-ω-)「実際にやってみるから皆見ててね~」
と、エリクソン先生がワークショップで披露した実例、その時の会話、解説を日本語に訳したものです。

既に催眠療法を学んでいる人にとっては
(◦o◦)「おお、なるほど!」
という発見がテンコ盛りの、貴重な資料本と言えるでしょう。

…が、そもそも催眠自体を全然知らない人が読んだら
(・ω・)「????」
状態になってしまうであろう。読む場合、そのあたり覚悟しておきましょう。


カウンセリング全般に通じるポイント

催眠の本というより、エリクソン先生が催眠に導入する「あの手この手」の部分が、とても興味深い。
読んでみると、現代の主流である支持的精神療法に通じるものが結構多い。

・五感を活用する
患者さんの話す言葉だけでなく、患者さんの息遣い、肩の動き、視線など、あらゆる仕草がヒントである、という考え方。

・患者さんに合わせる
(-ω-)「それじゃ目を閉じてリラックスして~」
(`Д´)「俺は絶対、目を閉じないからね!」
(-ω-)「うん、じゃ目を開けたままでも良いよ~」

(-ω-)「椅子に座って、これからお話を~」
(`Д´)「座りたくない!あと俺は何も話さないからね!」
(-ω-)「良いですよ~、じゃ歩いてみましょっか」

…という感じ。まず治療者自身が患者さんの感覚・思考を尊重し、患者さんにとって一番安心できるところからアプローチし、徐々にトランスへと誘導していく。このあたり、実に上手い。(真似できる気がしないが。)


やさしい。

本の内容が「ワークショップの内容を文におこしたもの」なので、
(・_・;)「エリクソン先生、こういう時どうすれば良いんですか?」
(-ω-)「良い質問ですね、それは~」
という、研修生とのやり取りのシーンも多く出てきます。こうした会話の様子から、エリクソン先生の優しそうな性格が伝わってきます。やっぱ精神療法家ってのは、観察眼に優れた、褒め上手、良いとこ探しの達人。「その人に合ったアドバイス」が出来る人なんだなぁ、ってのが良くわかります。


まとめ(私見)

「催眠が本当に科学的な方法なら、なんで現代では廃れているのか?」という点について考察。
まず廃れたわけではない。現在も催眠療法の学会は存在しています。勿論、マイナーである点は否めないが、理由としてはおそらく2つ。「怪しげなイメージが広まってしまった(テレビ番組とかの影響)」「薬物療法が主流になった」からだと思われる。特に後者の影響は大きく、「お薬出しときますねー」なら5分で済むところを、「お薬を使わず、じっくり時間をかけてカウンセリングします!」と頑張る精神科医は、現代では残念ながら少数派。そんな時間があるなら薬物療法についてしっかり勉強した方が、確実なのだから。

けれど若手の精神科医の皆さんには、「精神科のお薬が存在しなかった」時代の治療技法を是非よく勉強して欲しい。治療の歴史を知ることで現代の治療技術をより深く理解できるし、普段の面接技法スキルの向上にもきっと役立つことでしょう。

以上。

【書籍紹介】~現代精神分析基礎講座~


金剛出版 現代精神分析基礎講座  第1巻 2018/12/03出版
ISBN: 9784772416634


この本の主旨は「そもそも精神分析って何?」という歴史や、どんな時に役立つのかという具体的な症例エピソードの紹介。治療契約・診察室の環境設定まで細かく解説され、料金設定にまで言及している。精神分析を学び始める人向けに、まず精神分析の考え方、姿勢、を知って欲しい。そんな著者の意図を感じる。


①フロイトを知る


ジークムント・フロイト(Wikipedia)

1856年オーストリア出身。ウィーン大学卒業。29歳時にパリへ留学し、神経学者ジャン=マルタン・シャルコー(Wikipedia)のもとでヒステリー(神経症状)に対する催眠療法を学んだ。帰国後、以前から交流のあったヨーゼフ・ブロイアー(Wikipedia)との共同研究をすすめる。やがて、すべての患者が催眠状態になるわけではなく、催眠に入らない、また入っても必要な深さまで入らなかった患者がいることが分かってきた。どうやら幼児期までの長い回想を巡る必要があり、行きつく先が必ずと言ってもいいほど幼児期の性的体験に辿りついている。最終的に自由連想法と呼ばれる治療法に辿り着き、精神分析の基礎理論となった。
なおフロイト的には「科学が全てだ!」という思想であり、終生無神論者だった。そのため、ユング、アドラーといった仲間達とは袂を分かつことにもなった。


②精神分析の歴史を知る

フロイト以降も精神分析は発展を続け、やがて日本にも普及していった。ちなみに当初は、森田療法(12月22日の日記参照)で知られる森田正馬先生が「そんなもん迷信じゃ」と5年間にわたって精神神経学会で批判しまくった(学会の名物になったらしい)という、微笑ましいエピソードがある。何やかんやありつつ、1955年に日本精神分析学会が発足した。なお日本に導入後、独自の理論や技法も加えられていったとのこと。古沢平作による「阿闍世コンプレックス」(Wikipedia)、土井健郎の「甘えの構造」(Wikipedia)など。


③具体的な、精神分析の手法

第7講(P.125~)から、具体的な精神分析の技法について書かれています。ある程度知識のある人は、ここから熟読することを推奨。導入にあたって知っておくべきは、「五感をフル活用して、患者さんの思考・情緒を理解しようとつとめる」「転移/逆転移を理解し、治療に活かすこと」と思われます。


臨床心理学 > 基礎理論 > 転移 2018.01.16

転移…クライエントが、過去に重要な他者(両親など)との間で生じさせた欲求、感情、葛藤、対人関係パターンなどを、別の者(多くの場合は治療者)に対して向ける非現実的態度。愛着欲求や依存欲求が向けられることを陽性転移、敵意や攻撃欲求が向けられることを陰性転移と言います。

逆転移…治療者側がクライエントの示す転移表現に対して、感情的に反応を返すこと。逆転移を自覚するために、治療者は、教育分析や自己分析を通して、自分の中にある無意識の欲求、感情、葛藤などを洞察する必要があります。


まとめ

精神分析療法は現代に普及している様々な精神療法に影響を与えたものであり、精神医学に携わる者であれば是非とも一度本腰を入れて勉強しておくことが望ましい。特に転移・逆転移を理解することが重要。「この患者さん、とても慕ってくれるなぁ、嬉しいなぁ」「なんだか気難しい、怒りっぽい患者さんだなぁ、恐いなぁ」…と感じたとき、それは面接者を過去の人物(自分に優しくしてくれた人、自分を責め立てた人)に見立てた転移なのかもしれない。「流石にそこまで言わなくても良いじゃないか、失礼な患者さんだ!」「もう診察するのが億劫だ…」と感じたとき、それは患者さんに対する面接者の逆転移なのかもしれない。適切な距離を維持し、両者の間に生じた感情を客観的に捉えてこそ、一人前の精神分析家と言えるでしょう。

以上。

【精神科診断】~性嗜好障害まとめ~


金原出版 現代臨床精神医学 第12版
ISBN: 978-4-307-15067-5


ICD-10、DSM-5いずれにおいても扱われている疾患群。代表的なものを紹介します。


性嗜好障害(Disorders of Sexual Preference)

性的満足の質的障害。性倒錯(Sexual-Perversion)、パラフィリア(Paraphilia)、とも呼ばれる。


フェティシズム(Fetishism)

”fetisch”「物神」が元ネタ。生命のない物体に性的満足を得るもの。異性が身に着けているもの(下着、衣服)、体の一部(毛髪、排泄物)、人間関係なしに物体(ゴム、プラスチック、革のような質感そのもの)、に性欲を覚える。こうした物を入手するため、窃盗を繰り返してしまう場合がある。
マンガで分かる心療内科・精神科・カウンセリング 第十一回「フェティシズムはどこから病気?」


露出症(Exhibitionism)

見知らぬ人や公衆の面前で、自己の生殖器や裸身を露出してみせることを反復するもの。露出する相手に親密な接触を求めるわけではない。情動的ストレスのあるときだけ顕在化することも。老年認知症など、他の疾患に合併することがある
マンガで分かる心療内科・精神科 第六回「露出症の治療~どこからが病気?」


窃視症、のぞき(Voyeurism,Scopophilia)

他人の脱衣、裸身などを見る行為を反復するもの。なお、他人の性交をみて快感を感じるものはMixoscopiaと呼ばれる。
マンガで分かる心療内科・精神科in池袋 第24回「『のぞき』はどこから病気なの? 窃視症・前編」
マンガで分かる心療内科・精神科in池袋 第25回「『のぞき』の治療法は? 窃視症・後編」


小児性愛(Paedophilia)

通常、思春期以前の小児を対象とした性的愛好。そうした対象にのみ強い性欲を起こすものと、「ふつうの異性が相手にしてくれない」ために抵抗力の弱い小児が対象に選ばれるものがあり、性犯罪とも関係が深い。
マンガで分かる心療内科・精神科・カウンセリング 第十五回「ロリコンはどこから病気なの?」


サド・マゾヒズム(Sado-Masochism)

縛る、苦痛を与える、辱める、など身体的・精神的苦痛を含む性行為を愛好する。苦痛を与えられることを愛好する場合はマゾヒズム(被虐性愛)。(オーストリアの小説家 Sacher-Masochが元ネタ。)苦痛を与えることを愛好するものはサディズム(加虐性愛)。(フランスの小説家、サド侯爵が元ネタ。)


レーオポルト・フォン・ザッハー=マゾッホ(Wikipedia)


マルキ・ド・サド(Wikipedia)


その他

ひわいな電話をかけること、公共の場所でのさわり魔的行為、動物との性交、など。複数の嗜好が組み合わさる場合も。



まとめ、注意点

こうした疾患は精神科の教科書には必ず記載されているものの、日本国内では、実際に臨床の場で治療にあたった経験を持つ精神科医は少ないかもしれません。参考資料(ゆうメンタルクリニック)ではカジュアルに描かれていますが、真面目に話すと…こうした性嗜好のため、日常生活に苦悩を抱えている人は少なからず存在していると思われます。誰にも言えない、なかなか相談できない内容だからこそ、大いに苦悩を抱える。他の疾患と合併(うつ病、解離性障害など)することも少なくないと考えられます。

精神科においてはあらゆる疾患の存在を念頭に置き、患者さんの苦悩に寄り添う姿勢を忘れないように心がけましょう。


以上。

【医局会】~開業のお知らせ~

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●Web予約システム、精神科は不参加で。
(´-ω-)「先週の医局会で、医局長くんからお知らせいただいたWeb予約システムの参加可否についてですが…」
(´-ω-)「やはり精神科の場合、新患対応などで事前の準備が必須になるため、まずリエゾン・コンサルテーション担当医を通してから、という従来通りの対応を続けるべき、との結論になりました。」


●来年度の週間予定表
(´=ω=)「たたき台ですが、一応できました~」
月曜日:外来日
火曜日:病棟診療(外勤で半数の先生が不在)
水曜日:外来日
木曜日:カンファレンス(リエゾン、入院)、回診、勉強会、医局会
金曜日:外来日
(`^ω^)「なんか木曜日がハードっすね!」
(´=ω=)「色々考えたんですが、外勤が無くて全員集まれる日が、木曜日だけなんですよね」
(・ω・)早速、ホームページに掲載して良いものでしょうか?
(´=ω=)「まだ具体的な時刻が決まってないんで、正式に決まってからでお願いするね」


●勉強会のお知らせなど。
(`・v・)「近々、糖尿病内科との合同カンファレンス、神経内科との合同カンファレンスがあります。ぜひご参加を」
(`〇-〇)「3月の予定ですが、精神保健福祉法についての勉強会あります。僕が講師をつとめます。ぜひご参加を」
(・ω・)精神保健福祉法…10月22日12月23日の日記で取り上げたものですね。精神科治療における大事な法律です。


●開業します!
(`^ω^)「かねてより準備を進めていましたが、わたくし、4月から開業します!
「おおっ」「おめでとうございます」「すごい」
(・ω・)早速、ホームページにて告知して良いでしょうか?!
(`^ω^)「あ、うん、良いよー。今後、患者さんのご紹介など、是非よろしくお願いします」
(`^ω^)「でもクリニックなので、入院が必要な場合には対応が難しいです。そのところ、どうかご理解・連携お願いします」


★告知~開業のお知らせ~


佐賀市鍋島の精神科・心療内科 こころと発達のひまわりクリニック

2021年4月8日(木)より、新規開業の予定です。
予約は3月8日から開始予定になります。

アクセス
〒849-0937 佐賀市鍋島3丁目6-9 1F
2021.02.15
場所としては、佐賀大学のすぐ近くです。

~私は、行政に携わっている頃から、こころにストレスを抱えておられる方、発達障害の方やお子さん、お母さんたちの困っておられる声を多く聞いてまいりました。一人一人の患者さんに寄り添い、患者さんの未来を一緒に見つめていきたいと思い、微力ながらこの分野の一助となるために開業を決意致しました。小さいクリニックですが、どうぞ皆さまよろしくお願い申し上げます。~

(・ω・)野上先生の経歴、何気に凄ぇ!今後の活躍を応援しております!



以上。

【地域連携】~精神科病院・クリニックの選び方~

精神科と心療内科の違い

精神科…うつ病、統合失調症などの心の病を専門的に治療。
心療内科…胃潰瘍、過敏性腸症候群(IBS)、気管支喘息(ぜんそく)などといった、体の不調に心理的な要因が関わっている場合(心身症)が対象。

実際にはどちらを受診しても、心身症やうつ病などの治療はしてもらえる。ただ、精神科を受診することに心理的ハードルを感じる人が多いため、ほとんどの精神科医は診療科名に『心療内科』を併記している。精神科医は心身症の診察もできるので、どちらにかかっても大丈夫です。
ちなみに佐賀大学の場合は「精神神経科」と名乗っていますが、心療内科の範囲までカバーしています。


クリニック、病院の違い

クリニック(診療所/医院)

《メリット》場所が良い、土曜日も開いてる、など通いやすい。同じ医師(≒院長)が長く担当してくれる。
《デメリット》時間外は対応できない。



精神科病院

《メリット》24時間体制。入院治療ができる。臨床心理士、精神保健福祉士、作業療法士など、多くの専門スタッフがいる。
《デメリット》病院の数が少なく、アクセスの悪い郊外にあることが多い。



総合病院、または大学病院の精神科

《メリット》他科と連携した治療が受けられる。
《デメリット》なかなか予約がとれない。待ち時間が長い。医師の異動が多い。


まとめ

2月2日の日記で解説した通り、精神科の場合は重症化する前の、早めの入院が有効な場合があります。特に「生活に重大な支障が出ている」「命の危険がある」ような状態なら迷わず、入院施設のある病院を受診するべきでしょう。
なお大学病院の場合、大学病院でなければ治療ができない、という特殊なケースを最優先に対応しています。逆に言うと、そうしたケース以外の治療は苦手です。あと毎年のように異動で医師が入れ替わります。
精神科病院であれば、デイケア、作業療法就労支援、グループホームの紹介、など、自立した生活へ繋げるための様々な支援体制が整っています。
(・ω・)状況に応じて、適切な医療機関、医療資源を活用していきましょう!

以上。


※参考資料

心の不調、訪れるべきは精神科? それとも心療内科? 2015年07月22日


クリニック、精神科病院、総合病院、大学病院、どれがいい? 2018年4月5日

【科学ネタ】~相対性理論入門~

「光の速度は誰から見ても同じ」「光の速度は超えられない」「E=mc^2」あたりは有名だと思うけど、具体的に何が起きるんだ?という点を中心に、知ったかぶれる程度のキーワードを解説。



特殊相対性理論と一般相対性理論

「特殊」は、等速直線運動を扱ったもの。高校生の数学の知識でも理解可能。「一般」は重力、加速度といった性質まで含めた理論で、超難解。



アインシュタインの発明・発見…ではない。

「天才アインシュタインが考えた、トンデモ理論!」…と誤解している人が少なくない気がする。
相対性理論が生まれた背景には、19世紀頃に盛んになった「光の性質」に関する実験・研究の結果がある。マイケルソン・モーリー(Wikipedia)とかヘンドリック・ローレンツ(Wikipedia)とか、いろんな科学者が研究を重ね、「なんか変だぞ?光速の世界では、ニュートン力学じゃ説明がつかん…」と悩んでいたところ、「そもそも時間がズレるんじゃね」と解釈し、理論をまとめたのがアインシュタイン。20世紀初頭に理論を纏め上げた点においおては確かに天才だが、遅かれいずれ誰かが発表したであろう、とは言われている。
ちなみにアインシュタインは相対性理論でノーベル賞を取っ…てない。当時、大勢の科学者から理解されず、受け入れられず、苦労したらしい。



ブラックホールの存在を予言…してない。

2019年4月に人類史上初めて、ブラックホールの撮影に成功(BBC NEWS)。一部で「やはりアインシュタインは正しかった!」と言われていたけど、アインシュタインがブラックホールの存在を予言していたわけではない。予言したのはカール・シュヴァルツシルト(Wikipedia)さんです。「一般相対性理論が正しければ、光も吸い込むすっげぇヤバい星が存在しうる、ってことだよね!」と。アインシュタイン自身はむしろ否定的な意見だった。けど自分が言い出した理論による計算結果だったので「ぐぬぬ」と渋々認めざるを得なかったようです。



ローレンツ収縮

「動くものの長さが縮む」という法則。動いている側から見れば「空間が縮む」。これに対し「じゃあ光速で車庫に突っ込んだらどうなるんだ?車から見れば車庫が縮んで入りきらない、車庫から見れば車が縮んで入りきる。矛盾してるじゃん」…というガレージのパラドックスが有名。



双子のパラドックス

「高速で移動すると時間の流れが遅くなる」のが相対性理論の常識。「それなら動いてる側から見れば、止まっている相手の時間が遅れるんでしょ?矛盾してない?」という有名なツッコミ。これは時空図を書くことで理解できる。結論から言うと「移動している間は時間がズレているから矛盾しないし、戻ってきて合流したときにズレが明らかになる」のが正しい。


リトルコスモス 光速度不変編 より画像)
時空図

位置と時間のズレをグラフで分かりやすく示す方法。この描き方が分かれば特殊相対性理論の理解は完璧だ。(たぶん。)



加速し続けたら、どうなる?

「光の速度を超えられないなら、宇宙船に乗ってずーっと加速し続けたとき何が起こるんだ?」との疑問にお答えしよう。
まず外から見ている人にとっては、加速していく宇宙船は光速に近づくにつれ、だんだん加速が鈍くなる。やがて光速の99.99999…%と、限りなく光速に近づくが、超えることはない。
宇宙船の中の人から見ると、体感では加速し続けている。やがてローレンツ収縮によって周りの空間が縮んで見えてくる。加速すればするほど目的地までの道のりが短くなり、100光年先であっても数年、数か月で辿り着ける。しかし到着していざ船を降りると、宇宙船の外では100年以上の時間が経っている。



ワープ航法「アルクビエレドライブ」(Wikipedia)

相対性理論が正しければ、どれだけ高速な宇宙船を作っても時間がズレちゃうので、長旅ができない。これを解決するためにはワープするしかない。…そして実際、「理論的には可能」という説。メキシコの物理学者、アルクビエレさんが提唱した。「宇宙船を加速させるんじゃなくて、宇宙船の前後の空間をねじ曲げる」という方法。これなら相対性理論に矛盾せず、時間のズレを生じずに宇宙の旅が可能となる。
問題は「必要なエネルギーがビッグバンを超える」という点。うん、やっぱり難しいかも。


Amazonより)
現代でも続く否定論

「相対性理論は間違っている!」「いやその理屈はおかしい」と、相対性理論を否定する意見は21世紀の現代でも存在している。まぁ、ぶっちゃけ正しいか間違っているかなんて誰にも証明できない。物理学における理論てのは、「現象の説明がつく、再現性がある」という実用性の有無で価値が決まる。将来、相対性理論で説明しきれなかった部分までカバーした新たな理論が生まれるかもしれない。(興味がある人は超弦理論(Wikipedia)を調べてみよう!)


まとめ

相対性理論を個人で勉強しても、実生活で役に立つわけではない。けど「感覚的には理解が難しい」ものを理解しようとする体験は、それまでの常識、思い込み、といった無意識の殻を破ってくれることでしょう。思考を豊かにしてくれる現代の教養、それが相対性理論なのである。

以上。



※参考資料


物理と遊ぼう【物理学喫茶室】 わかっても相対論 より


宇宙の謎~ビックバンから宇宙の最後まで~ より


EMANの物理学 相対性理論 より

【精神医学】~リエゾン精神医学~


診断と治療社 精神科研修ノート 改訂第2版
ISBN:9784787821904


7月29日の日記で簡単に紹介したけど、学生さん、研修医さん向けにもうちょい掘り下げて解説。

リエゾン精神医学の定義と目的

総合病院における、身体科で入院中の患者さんのメンタルケアを中心に行う部門。「リエゾン」「コンサルテーション」、呼び方はどっちでも良いです。多職種(医師だけでなく、看護師、薬剤師、心理師など)チームで行うのが特徴。

うつ病の治療と援助の間・一般医療の経験から(pdf)

リエゾン精神医学を専門的に学ぶ場合、上記「CLSの四象限モデル」についての理解が必要。相談を受けた案件の「医学的な複雑さ」「心理・社会的な複雑さ」によって、どのように対応すべきか変わるというもの。例えば「お薬の副作用での精神症状が疑われて…」という案件で「それは辛いですね…一緒に考えていきましょう」なんて支持的傾聴は場違い。「身体の治療が長引いていて、辛くてたまらなくて…」という案件で「お薬の問題ですね。調整しておきまーす」なんて素っ気ない対応では失礼過ぎる。問題点を見極めた上で、適切な介入を行うことが肝要。


リエゾン活動の流れ


依頼受け型…電話での相談を受けてから動き出す。(ちなみに佐賀大学精神科リエゾンはこのタイプ。)


訪問、御用聞き型…依頼が無くても定期的に各病棟を巡回し、「ご相談ありませんかー」と聞いて回る。


まずは情報収集

依頼を受けたら、まずは当事者(患者さん、相談した科の主治医さん)達から話を聞き、情報を集め、ニーズの把握を行う。患者さんの問題(精神症状)とは限らず、スタッフと患者さんの間でのすれ違いが原因であった、等のパターンもある。


治療ではなく「援助」

精神科的に正しい診断、正しい治療…が良いとは限らない。あくまで「身体疾患の治療」が最優先であり、リエゾンチームは陰からサポート・お手伝いする立場。教科書にも「援助であって治療ではないことを強く意識する必要がある」と書かれています。「精神科」のために働くのではなく「病院全体」のために働く、という感覚が求められるのです。



アークメディア 臨床精神医学第46巻第1号 発行日:2017年01月28日
特集/これからのリエゾン精神医学

雑誌の詳しい内容紹介は省略。論文タイトルが「リエゾンで対応する主なケース」の並びになっているので、その点だけ解説。



せん妄

相談案件として圧倒的に多い。身体治療に重大な支障が生じ、早期に治療しなければ危険な疾患。11月10日の日記を参照。



不眠

眠れなくてキツイ…という患者さんは多い。身体科で睡眠薬を処方できなくはないけれど、睡眠薬は適切に使わなければせん妄を引き起こしてしまうリスクがあるので、なるべく精神科が介入しています。



がん患者さん

「不安」「うつ状態」に陥ることがあり、これも相談案件として多い。特に気を付けなければいけないのが「もう治療しなくて良いです、退院します」という治療拒否。本人の意志を尊重すべきか、「うつ状態で正常な判断が出来なくなっている」可能性が無いか、慎重に見極める必要があります。



救命救急科との連携

主に「自傷」「自殺未遂」により救急搬送となる患者さんへの対応。救急科で救命治療に全力を尽くした後、精神症状の評価、治療、自傷・自殺予防への取り組みにシフトする段階で、精神科がバトンを引き継ぎます。



周産期メンタルヘルス

11月27日の日記を参照。周産期においてはメンタルの問題が発生しやすく、もともと精神疾患で治療中の患者さんが妊娠した場合、胎児への影響からお薬の調整が必要になる等、慎重な対応が求められます。



認知症

高齢化社会のため、既に認知症を発症している患者さんが身体加療のため入院するケースは多い。せん妄との区別を要する場合も。治療への理解が得られない、安静を保てない、などで問題が生じやすい。


まとめ

リエゾン精神医学は通常の精神科としての治療ではなく、身体科の治療を援助する、という立場です。精神科病院・精神科クリニックにおける治療と異なり、専門的・特殊な対応を求められることが少なくありません。「精神科」の看板ではなく「病院全体」の看板を背負う、という責任感が求められます。…ぶっちゃけ、リエゾン担当している精神科の先生は、凄い。同じ精神科医の立場から見てもなんかこう、カッコイイ、頼りになる存在です。

以上。


【人工知能】~基礎知識、キーワードまとめ~

コレ1枚で分かる「AI、機械学習、ディープラーニングの関係――人間の“知能”をいかに再現するか」 2018年12月31日

人工知能(AI:Artifical Intelligence)は今もっとも熱い分野。様々な研究に活用されており、日常生活においても某掃除機や自動運転技術などで普及しつつある。基本的な知識を解説。

分かりやすさ優先で書きます。正しく理解を深めたければ各自「人工知能 手法」で検索されたし。


そもそもコンピューターとは

複雑怪奇な仕組みで動いているように見えるが、正体は「電卓」である。計算してるだけだ。


プログラミングとは

オルゴールの仕組みと大して変わらん。人間が書いた「コード」をコンピューターが読み取り、その指示通りに計算結果を出してる。
ちなみに「プログラミングする」なんて言い方は素人丸出し。「コーディングする」と表現すれば上級者っぽく見せかけることが出来ます。


人工知能(Artifical Intelligence)とは

「人間が出来る”判断”を(面倒くさいので)コンピューターにやらせる」プログラム。それがAI。
ここから本題。


初期のAI

1956年頃からAIの概念が生まれ、研究が始まった。初期はチェストか将棋みたいなゲーム…つまり限定された状況のなかで、最適解を出すこところまでが限界。人間の判断力を再現しようとすると、あらゆる複雑な条件、要素すべてを想定しなければならず非現実的だし、矛盾した条件に出くわした時、融通をきかせたりする応用力の再現ができなかった。


機械学習

コンピューターの性能が上がったこと、プログラミングの技術が向上したこと、インターネットの普及により大量のデータを集めやすくなったことで、機械学習と呼ばれる手法が発展した。これは「データを解析して、分類や区別、判断や予測を行うための規則性やルールを見つけ出す」というものである。
ただ、「どうやってデータを分析するか」「どこに注目させるか、どこは無視させるか」というセッティング(アルゴリズムの設計)までは、人間がプログラミングしなければいけない。このセッティングの上手い下手でAIの性能が決まる。


ディープラーニング

人間の脳の働きを再現すれば良いんじゃね?ということで生まれた機械学習の手法が、ディープラーニング。人間によるセッティングは最初だけで、後はデータを与えれば与えるほどAIが勝手に学習・判断力が向上していくという優れもの。


ビッグデータ

データのじかん そもそもビッグデータとは? ビッグデータの定義から活用例までご紹介 2018.09.17

最近よく聞く言葉なので、ついでに解説。

定義としては「様々な形をした、様々な性格を持った、様々な種類のデータ」。定義を聞いただけでは「なんじゃそりゃ?だからどうした」で終わってしまうので、具体的な例を挙げて説明する。(私の理解が正しいかどうか自信は無いが…)

主に研究分野。企業のマーケティング調査でも同じ。
これまでAIを活用してデータを分析するとき、「Aという薬とBという薬、どっちの方が効き目がある?」「月曜日に一番売れている商品はどれ?」みたいに、テーマを絞り込んだり、条件となるデータを選別しておく必要があった。しかし現在、あらゆる、大量の、情報を、データとして保存し、時にはインターネットを通じて入手することが出来る。その結果…「薬というか、天候が体調に関係しているっぽい」「どれが売れているか、というより〇〇駅が改装してから月曜日の人の流れが変わっている」など、今まで見過ごしてきたデータから答えを出す、という事が可能になったわけだ。

なので今後は「あらゆるデータを取り、保管し、共有する」ことが前提となる時代なのだ。


人工知能の弱点

たまに「話は聞かせてもらった!AIの進化で人類は滅亡する!」なんて言われることがありますが、いくら進化したところでAIは計算機を動かすプログラムに過ぎない。人間ではあり得ないような、とんでもない弱点があったりします。

So-net セキュリティ通信 AIだって騙される?AIの抱える弱点とは一体何か 2019.05.10

データを与えて学習させるとき、とんでもないノイズ画像を混ぜてしまった結果、AIがパンダをテナガザルと認識してしまうようになった。人間であれば絶対に騙されなくても、AIは誤認識してしまう…アドバーサリアル・エグザンプルズ(敵対的サンプル)と呼ばれます。


AI研究所 AIが学習しすぎる?「過学習」問題とそれを抑制する方法 [最終更新日]2020.09.22

例えるなら「過去問を丸暗記してテストを受けた結果、応用問題に全然答えられない」学生の状態。出来上がったAIがテスト段階では上手く作動したように見えても、実際にデビューさせたら全く使い物にならない。サンプルで与えたデータの分析だけに特化してしまった…これを過学習(過剰適合)と言う。


こうしたAIが抱える弱点は、プログラミングする人間の腕次第では解決できる。が、やはりAIは「想定していなかった状況」に追い込まれると全く融通がきかない、とんでもない失敗をしでかす可能性がある、というリスクは決して消えることが無いだろう。


まとめ

ちなみに私事だが数年前、高校の同窓会で再開した旧友(プログラミング、情報解析のプロ)に
(・ω・)AIが人間を超える日が来るって本当?
と聞いたら
┐(´~`)┌「なワケ無ぇ。むしろどうすりゃ超えられるのか教えて欲しいくらいだ」
と言ってました。うん。そういうことらしい。

AIの技術は進化していますが、設計・メンテナンスが必要という点で結局、まだまだ人間の手が必要。
人間は試行錯誤、失敗を繰り返しながら成長していくものですが、AIに求められるものは結局「計算機を通した」間違いの無い答え。失敗することもある人間の判断力というものを機械で再現すること自体、よく考えると矛盾している気がする。

Amazonより)

(`〇-〇)「この本オススメだよ」


以上。

【精神医学】~発達障害~

大人の発達障害について

発達障害とは

最近、うつ病や不安症などの原因や会社や人間関係で困難をきたしている人の原因として注目を浴びるようになってきた疾患概念です。発達障害者支援法により定義付けられ、主に
①広汎性発達障害
②学習障害(LD)
③注意欠陥多動性障害(ADHD)
の3種類に分類されています。自閉症やアスペルガー症候群は①の広汎性発達障害に含まれます。


自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder)

これまでアスペルガー症候群、高機能自閉症、早期幼児自閉症、小児自閉症、カナー型自閉症など様々な診断カテゴリーで記述されていたものを、「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」の診断名のもとに統合されました。

特徴
対人関係・社会性の障害…集団に馴染めない、いわゆる「空気を読む」ことが苦手。
コミュニケーションの障害…自分のことばかり話す、自覚がないまま失礼な物言いをしてしまう。
パターン化した行動・想像力の障害…こだわりが強く、物事の変化に対応するのが苦手。


注意欠如・多動性障害(Attention-Deficit / Hyperactivity Disorder)

特徴
衝動性…熱しやすく冷めやすい、思いつきで行動しがちで待つことが苦手。
不注意・多動…忘れ物が多い、気が散って仕事に集中できない。


限局性学習障害(Specific Learning Disorder)

特徴
「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」という能力のうち、極端に苦手な部分がある。
他の部分は問題なくても「メモをとるのが苦手」「電話での対応が苦手」「数字や計算が苦手」など。



発達障害者支援法とは?法律の内容や支援対象、実際に受けられる支援についてご紹介します 2019/10/02

障害は「個人の問題」ではなく「社会の問題」
2016年の発達障害者支援法改正で、発達障害のある人が社会生活を営む上で直面する不利益は、本人ではなく社会の責任であるという考えが明確に示されました。つまり「車椅子の人が階段を上れないのは個人の障害」ではなく、「エレベーターやスロープを用意しない社会の障害」であり改善されなければならない、という考え方と同じ。


以下、私見を交えた解説

10~15年ほど前(私が医学生だった頃)まで、「自閉症」には「アスペルガー(知能は高い)」「カナー(知的障害を伴う)」という区別があったり、「自閉症」と「ADHD」は対照的な障害だから合併することはない、などと言われていました。現在は「スペクトラム」という概念に変わり、そもそも正常と自閉症との間に線引きは出来ない、と言われるようになりました。自閉症とADHDが合併することは珍しくないという事も分かってきました。

発達障害は「社会の問題」なので、症状を治すことが目標とも限りません。症状があっても無くても気にせず生活・仕事できる、というのが理想的です。まぁ誰しも、環境や相性の問題で「空気読んでよ!」「ちゃんと話聞いてよ!」と怒ったり怒られたりするもの。相手に責任を負わせるのではなく、「どうすればお互い気持ちよく過ごせるかな」という視点で問題解決をはかりましょう。アサーションとか(10月02日の日記参照)是非知って欲しい。きっと役に立ちます。

治療者においては、ちょっと気を付けておくべきポイントとして「鑑別疾患」を忘れないようにしましょう。「こだわり」は自閉症だけの特徴ではありません(1月7日の日記参照)。別の疾患による症状としての思考障害(7月27日の日記参照)が背景にあるかも。ADHDの「熱しやすく冷めやすい」特徴も、もしかしたら双極性障害(躁うつ病)の症状かもしれません。正しく診断し、正しい治療に繋げることが精神科医療従事者の責務です。


以上。