医局日記

【精神科診断】~性嗜好障害まとめ~


金原出版 現代臨床精神医学 第12版
ISBN: 978-4-307-15067-5


ICD-10、DSM-5いずれにおいても扱われている疾患群。代表的なものを紹介します。


性嗜好障害(Disorders of Sexual Preference)

性的満足の質的障害。性倒錯(Sexual-Perversion)、パラフィリア(Paraphilia)、とも呼ばれる。


フェティシズム(Fetishism)

”fetisch”「物神」が元ネタ。生命のない物体に性的満足を得るもの。異性が身に着けているもの(下着、衣服)、体の一部(毛髪、排泄物)、人間関係なしに物体(ゴム、プラスチック、革のような質感そのもの)、に性欲を覚える。こうした物を入手するため、窃盗を繰り返してしまう場合がある。
マンガで分かる心療内科・精神科・カウンセリング 第十一回「フェティシズムはどこから病気?」


露出症(Exhibitionism)

見知らぬ人や公衆の面前で、自己の生殖器や裸身を露出してみせることを反復するもの。露出する相手に親密な接触を求めるわけではない。情動的ストレスのあるときだけ顕在化することも。老年認知症など、他の疾患に合併することがある
マンガで分かる心療内科・精神科 第六回「露出症の治療~どこからが病気?」


窃視症、のぞき(Voyeurism,Scopophilia)

他人の脱衣、裸身などを見る行為を反復するもの。なお、他人の性交をみて快感を感じるものはMixoscopiaと呼ばれる。
マンガで分かる心療内科・精神科in池袋 第24回「『のぞき』はどこから病気なの? 窃視症・前編」
マンガで分かる心療内科・精神科in池袋 第25回「『のぞき』の治療法は? 窃視症・後編」


小児性愛(Paedophilia)

通常、思春期以前の小児を対象とした性的愛好。そうした対象にのみ強い性欲を起こすものと、「ふつうの異性が相手にしてくれない」ために抵抗力の弱い小児が対象に選ばれるものがあり、性犯罪とも関係が深い。
マンガで分かる心療内科・精神科・カウンセリング 第十五回「ロリコンはどこから病気なの?」


サド・マゾヒズム(Sado-Masochism)

縛る、苦痛を与える、辱める、など身体的・精神的苦痛を含む性行為を愛好する。苦痛を与えられることを愛好する場合はマゾヒズム(被虐性愛)。(オーストリアの小説家 Sacher-Masochが元ネタ。)苦痛を与えることを愛好するものはサディズム(加虐性愛)。(フランスの小説家、サド侯爵が元ネタ。)


レーオポルト・フォン・ザッハー=マゾッホ(Wikipedia)


マルキ・ド・サド(Wikipedia)


その他

ひわいな電話をかけること、公共の場所でのさわり魔的行為、動物との性交、など。複数の嗜好が組み合わさる場合も。



まとめ、注意点

こうした疾患は精神科の教科書には必ず記載されているものの、日本国内では、実際に臨床の場で治療にあたった経験を持つ精神科医は少ないかもしれません。参考資料(ゆうメンタルクリニック)ではカジュアルに描かれていますが、真面目に話すと…こうした性嗜好のため、日常生活に苦悩を抱えている人は少なからず存在していると思われます。誰にも言えない、なかなか相談できない内容だからこそ、大いに苦悩を抱える。他の疾患と合併(うつ病、解離性障害など)することも少なくないと考えられます。

精神科においてはあらゆる疾患の存在を念頭に置き、患者さんの苦悩に寄り添う姿勢を忘れないように心がけましょう。


以上。