ひきこもり
【定義】社会的参加(学校,仕事,家庭外での交遊など)を回避し, 6 ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態。ちなみに他者と交わらない形なら外出できる、という人も含める。
(不登校)病気や経済的な理由以外で、登校しないあるいはしたくともできない状況にあり、年間 30 日以上欠席している。なお不登校の人のうち約10%が青年のひきこもりに移行すると言われている。
(ニート)「Not in Education,Employment or Training」の頭文字(NEET)からくる英国での造語。就業、就学、職業訓練のいずれもしていない人。「平成 17 年青少年の就労に関する研究調査」の報告書に記載されたのが最初。
【日本国内の現状】2010年に発表された研究によると、ひきこもりの平均開始年齢は 22.3 歳、生涯に一度はひきこもり経験がある人の割合は 1.2%。20 歳台が 30~40 歳代より多く、また男性に多い。我が国の総世帯数の 0.5%にあたる 255,510 世帯でひきこもりの子どもがいることが判明している。
【精神疾患との関連】当事者との面談ができた事例の大半に精神障害の診断が可能であることが示されている。関連の深い精神障害の主なものとしては、広汎性発達障害、強迫性障害を含む不安障害、身体表現性障害、適応障害、パーソナリティ障害、統合失調症など。全体の 30%弱ほどに発達障害の診断がついたという報告がある。
【支援のポイント】
●家族への支援
最初から当事者が相談窓口に来ることは少なく、まずは家族への支援がスタートなる。特に親であれば、自分の養育法を後悔し、自責的あるいは他罰的になるなど、情緒的には混乱しがち。失敗や責任を探索し暴くことではなく、何が起きているのか、そして今どうすべきかを中立的に考えることのできる落着きと心の余裕を得ることができるよう、支援していきます。ただし、学校や会社の対応に原因を見ようとする家族の他罰的な心性(もちろんそれは苦悩の結果ではあるのだが)に安易に迎合すべきではない。
●当事者への支援
出会いと評価の段階における家族支援から当事者の個人的な心の支援へ、そして個人的支援からデイ・ケアや居場所のような中間的・過渡的な同世代集団との再会へ、中間的・過渡的集団活動から本格的な社会活動(就学・就労を中心に)へという図 3 に示したような諸段階を一段一段登っていくのが基本。勿論、各段階にどの程度の時間を要するかはケースバイケース。途中段階をショートカットすることはお勧めできません。
支援者が胆に銘じておくべきこととして、「自分が当事者を救済してみせる!」といった気分を持って支援に臨むことは厳に慎まねばなりません。それではねぎらいの言葉も目標にたどり着く地道な努力を呼びかける現実的なメッセージにならず、過度な期待を招き、支援の場は現実的な努力に代わって万能的な救済空想を互いに強めあう場に変貌し、当事者と支援者の双方が相手に失望しあうことになりかねません。けっして結論を焦らないことが当事者と支援者の双方に必要です。
●訪問支援(アウトリーチ型支援)
家庭訪問を中心とするアウトリーチ型の支援が有効な支援法の一つとして期待されています。開始にあたっては事前に十分な情報収集(いきなり押しかけちゃ迷惑ですよね)、訪問の目的を明確にしておく、日時や場所・話題をセッティングし、家族と当事者にきちんと事前に伝える、が大事です。
●支援、相談機関
医療機関(精神科、心療内科、小児科等)
保健機関(保健所、精神保健福祉センター、市町村の担当部門)
福祉機関(児童相談所、福祉事務所、発達障害者支援センター)
教育機関(教育センター・教育相談所・学校)
就労支援機関
…などがあります。まずはご相談を。
まとめ
精神科臨床においては、ひきこもりの方々と接する機会が少なくありません。ガイドラインに書かれていますが、ひきこもり支援においては啓発活動も大事です。私も臨床医の一人として、ひきこもりとは何か、どのような支援が可能か、支援のポイントは何か、をしっかり勉強し、広めていこうと思います。
※参考資料