医局日記

【精神保健福祉】~ひきこもり、とは~

ひきこもり

【定義】社会的参加(学校,仕事,家庭外での交遊など)を回避し, 6 ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態。ちなみに他者と交わらない形なら外出できる、という人も含める

(不登校)病気や経済的な理由以外で、登校しないあるいはしたくともできない状況にあり、年間 30 日以上欠席している。なお不登校の人のうち約10%青年のひきこもりに移行すると言われている。

(ニート)「Not in Education,Employment or Training」の頭文字(NEET)からくる英国での造語。就業、就学、職業訓練のいずれもしていない人。「平成 17 年青少年の就労に関する研究調査」の報告書に記載されたのが最初。


【日本国内の現状】2010年に発表された研究によると、ひきこもりの平均開始年齢は 22.3 歳、生涯に一度はひきこもり経験がある人の割合は 1.2%。20 歳台が 30~40 歳代より多く、また男性に多い。我が国の総世帯数0.5%にあたる 255,510 世帯でひきこもりの子どもがいることが判明している。

【精神疾患との関連】当事者との面談ができた事例の大半に精神障害の診断が可能であることが示されている。関連の深い精神障害の主なものとしては、広汎性発達障害、強迫性障害を含む不安障害、身体表現性障害、適応障害、パーソナリティ障害、統合失調症など。全体の 30%弱ほどに発達障害の診断がついたという報告がある。


【支援のポイント】


●家族への支援
最初から当事者が相談窓口に来ることは少なく、まずは家族への支援がスタートなる。特に親であれば、自分の養育法を後悔し、自責的あるいは他罰的になるなど、情緒的には混乱しがち。失敗や責任を探索し暴くことではなく、何が起きているのか、そして今どうすべきかを中立的に考えることのできる落着きと心の余裕を得ることができるよう、支援していきます。ただし、学校や会社の対応に原因を見ようとする家族の他罰的な心性(もちろんそれは苦悩の結果ではあるのだが)に安易に迎合すべきではない。


●当事者への支援

出会いと評価の段階における家族支援から当事者の個人的な心の支援へ、そして個人的支援からデイ・ケアや居場所のような中間的・過渡的な同世代集団との再会へ、中間的・過渡的集団活動から本格的な社会活動(就学・就労を中心に)へという図 3 に示したような諸段階を一段一段登っていくのが基本。勿論、各段階にどの程度の時間を要するかはケースバイケース。途中段階をショートカットすることはお勧めできません。
20210311_01
支援者が胆に銘じておくべきこととして、「自分が当事者を救済してみせる!」といった気分を持って支援に臨むことは厳に慎まねばなりません。それではねぎらいの言葉も目標にたどり着く地道な努力を呼びかける現実的なメッセージにならず、過度な期待を招き、支援の場は現実的な努力に代わって万能的な救済空想を互いに強めあう場に変貌し、当事者と支援者の双方が相手に失望しあうことになりかねません。けっして結論を焦らないことが当事者と支援者の双方に必要です。


●訪問支援(アウトリーチ型支援)
家庭訪問を中心とするアウトリーチ型の支援が有効な支援法の一つとして期待されています。開始にあたっては事前に十分な情報収集(いきなり押しかけちゃ迷惑ですよね)、訪問の目的を明確にしておく、日時や場所・話題をセッティングし、家族と当事者にきちんと事前に伝える、が大事です。


●支援、相談機関
医療機関(精神科、心療内科、小児科等)
保健機関(保健所、精神保健福祉センター、市町村の担当部門)
福祉機関(児童相談所、福祉事務所、発達障害者支援センター)
教育機関(教育センター・教育相談所・学校)
就労支援機関
…などがあります。まずはご相談を。


まとめ

精神科臨床においては、ひきこもりの方々と接する機会が少なくありません。ガイドラインに書かれていますが、ひきこもり支援においては啓発活動も大事です。私も臨床医の一人として、ひきこもりとは何か、どのような支援が可能か、支援のポイントは何か、をしっかり勉強し、広めていこうと思います。


※参考資料


調査研究報告 ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン

【精神医学】~精神の発達② 思春期から老年期~

3月5日の続き…の前に


武蔵浦和メンタルクリニック ライフサイクルについて

そういえば6月12日の日記で一度取り上げたことがあった。ぶっちゃけ上記サイトの方が遥かに纏まっており、上図のキーワードを覚えておくだけでも試験対策はバッチリ。
というわけで残りはサクッと手短に解説していく。


青年期(13~20歳)

思春期を迎え、性的感情が発達する。親子の信頼関係より、同世代の友人との交流が主となっていく時期。

「同一性」の時期…青年が自我同一性を確立し、自分の人生の目標を求め、自分らしい人生の達成に向かっていく時期。

両価的な状態(ambivalence)…親から独立し反発することが増える一方、潜在的には依存心もある。

猶予期間(モラトリアム)…まだ学生であり、成年期に移行するまでの、社会に出る前の段階。

この時期は非常に不安定。自我同一性の確立や、友人との交流、親からの自立といった発達に躓くと、「非行」「不登校」「引きこもり」「自殺」などの問題に発展することがある。




成人(成年)期(20~40歳)

大人として成熟が完了し、人格は安定。社会の一員として自立し、結婚、育児なども経験する。青年期には理想主義であった人も、やがて思考・行動は現実主義的となってくる。



初老期(40歳~)・老年期(65歳~)

女性の場合は閉経を経験する時期。身体機能が衰えてきて、徐々に生活への影響が出始める。記憶力など一部の知能は低下傾向となるが、言語理解などは低下しにくい。

現役から退くことになっていくが、周囲からの期待される役割が少なくなるため疎外感に直面する場合がある。自分の限界がみえてくるため生きがいの低下をきたし、近親者や知人との死別を経験していくことでの喪失感も生じやすい。加齢とともに認知症を発症しやすくなってくる。老年期うつ病を発症すると自殺リスクが高まるため、注意が必要である。


まとめ

成長し、大人となって自立していく上で「役割」「生きがい」が大事になります。そんなの簡単に見つかるなら苦労しねぇよ!…と思うかもしれませんが、一人で抱え込んでいると見つけにくくなるのが当然。精神科医療においては、患者さんにとってより良い「居場所」「生活環境」が何かを考え、整えることも大事な治療のひとつです。まずはご相談を。

以上。

【日記】~片付け中に発掘したもの(私物)~

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左上から順に解説しよう!

寝袋
いざという時に役立つかと思い、常備していた。ちなみにお昼寝用の枕としても良し。

年賀状
私は友達が少ないため、年賀状のやり取りは仕事関係に限られる。よって職場で保管している。

ホッカイロ
なんかの研修会で、参加者に配られた物。使わず放置していた。

NintendoDS Lite
一時期、当直中に「脳トレ」をやり込んでいた。やり込みの甲斐あって脳年齢は20代。

トミカ
車が好きなのだ。個人的にHONDA党のため、新旧NSX、S660、FIT3をチョイス。

ペン型ハサミ、医療用携帯ハサミ
外科研修時代に買ったやつ。ちなみにペン型は激烈に使い辛かった。が、捨てるに捨てられず。
なお精神科医になってからは、こうした刃物は病棟に持ち込めないため机の奥深くに眠ることに。

握力鍛えるやつ
学生時代、ギターの練習用に買った。楽器屋さんで売ってます。ちなみに上達には全く役立たなかった。

携帯ハードディスク 3個
データのバックアップとか。もう使ってないんだけど処分法が難しいため捨てるに捨てられず。

医療用コンパス
心電図の判読用。学生時代、循環器内科の実習中に貰った。ちなみに1度も使わず現在に至る。(だって電子カルテだし…)

コースター(キャラ物)
秋葉原で買い物した時にオマケで貰った。ちなみに東方シリーズは東方星蓮船までプレイした。

謎の懐中時計
秋葉原で「半額セール」詐欺に騙されて買ったやつ。実用性は低いがオシャレな感じで捨てられず。

静電気を防ぐやつ
冬の必需品。…であったが、自家用車に静電気除去シートを付けてからは使わなくなった。


本当は書類整理とか専門医試験のための勉強とか色々やることがあったのだが、
何故か机の片づけを始めてしまった今日であった。いやぁスッキリした!
これが「防衛機制(3月4日の日記参照)」における「逃避」であります。

以上。

【医局会】~指定医、専門医を目指そう~

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業務連絡中心。


●勉強会のお知らせ等

(`〇-〇)「近々、精神保健福祉法についての講義を僕が行います。主に看護師さん向けですが、皆さんも是非」
(`〇-〇)「差別問題についても扱います。むしろこっちがメインのテーマになります」

(´・∀・)「僕からも、こんどwebを用いたライブ配信での演題発表を行います」
(´・∀・)「好生館の先生の発表もあります。自宅でも受講できますよー」


●教員自己評価

(`・ω・)「教員の先生方、年度末ですので自己評価表の提出をお願いします」
(´=ω=)「学会発表とか論文とか、今年度の実績を記入しましょう」


●指定医、専門医を目指そう

(`・ω・)「若手の皆さん、指定医専門医の取得、準備を進めてください!」
(`・ω・)「必要経費あれば言って下さいね」

( ´ _ゝ`)( `-ω)(σ‿ σ)「「「!!」」」

(´=ω=)「どこまで費用負担しましょう!?」
(`・ω・)「えーっと、指定医の場合は講習会の参加費と、面接試験もあるんでしたね」
(´・∀・)「専門医の場合は申請料、筆記試験、面接、と色々かかりました。(試験難しかったー)」
(´=ω=)「全額負担します?!」
(`・ω・)「いやぁ、流石にそこまでの予算は…」
(`^ω^)「他の科とか人数の多い医局だと、こういうのは自腹ですもんね」


●研究がんばろう

(`・ω・)「…と、いうわけで若手の先生へのサポート(予算的な意味で)のためにも、皆さん予算を稼ぎましょう」
(`・ω・)「どんどん研究がんばりましょう!」
(´=ω=)「指定医、専門医を取得すれば業務の幅が広がりますので、若手の皆さんも取得後は是非、医局に貢献してくださいー」


●おみやげ

(^0^)「出張から帰ってきました!おみやげですー」

「おお」「ありがとうございます」「おいしい」

(´=ω=)「帰省とか休暇ならともかく、出張で忙しい中でおみやげ買ってくるとは感心だねー」

(^0^)「」
(^0^)「…よく考えたら買わなくても良かったかも(汗)」

(・ω・)いやぁ美味い!とにかくありがとうございます


特にオチ無し。以上。

【雑記】~おすすめ漫画~

12月26日の日記で紹介した医学雑誌で「精神疾患を描いた漫画」をテーマとした論文がありました。

が、今回は全く関係ない。完全に私の好みでのチョイス。

※判断基準
iBooksで1巻無料公開だったので読んでみたら、そこそこ面白かった作品など。
精神科医の立場として、興味深いと感じたポイントがある。
(ただし後半に行くほど医学関係なくなっていきます。)



リエゾン ―こどものこころ診療所― 講談社 (2020/6/23) ヨンチャン(著) / 竹村優作 (原著)

精神科系医療漫画の中でも、児童精神科領域を扱った作品。それなりにリアリティあり、絵が綺麗で読みやすい。



能面女子の花子さん 講談社 織田涼(著)

見ての通り、ゆるふわ系青春女子漫画。表情が読めないのに伝わる不思議。主人公である花子さんの鋼メンタルが凄い。



女医レイカ(Amazon) リイド社 剣名舞(著)、嶺岸信明(著)

1994年出版の作品であり、現代の感覚で読むと明らかにヤバい描写が多々あるのだが、精神科医を主人公に描いた作品として貴重。ちょっとエロい。



カバチタレ! 講談社 著:東風孝広 原作:田島隆 監:青木雄二

初版は1999年だが現在も連載中。行政書士を描いた作品。法律のもとに弱い人々を助ける、という仕事が、なんとなく精神科医に求められる倫理観に通じるところがある気がした。



サイコろまんちか 講談社 著:小出もと貴

心理学と学園コメディを組み合わせた作品。読むだけで賢くなれる。ただし下ネタが多めである。



はたらく細胞シリーズ 講談社 著:清水茜

白血球や赤血球などを擬人化して描いた作品。ストーリー性を持たせながら描かれるので楽しみながら免疫学が身につく。(うちの研究室、免疫学重視なので、一応。)



宇宙兄弟 講談社 小山宙哉(著)

心身の健康、コンディションを維持する最強の職業、それが宇宙飛行士だ。主人公達の鋼メンタルは勿論、宇宙開発を支える様々な人々の群像劇が熱い。



星の王子さま

集英社 著:漫☆画太郎 原作:アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ
あの名作を、高名な漫画家が独自のタッチで描いた意欲作。グロテスク・バイオレンス描写が極めて多い。「原作に忠実なストーリー展開」と好評だが、私は原作を読んだことがないため何とも言えない。



CITY 講談社 著:あらゐ けいいち

「日常」を描いた作品だが、とらえどころが無い。平凡かと思いきや騒動も多く、そもそも誰が主人公なのかよくわからない。そもそも面白いのかどうか、それも分からない。たぶん、それも含めて日常ってことなんだと思う。



魁!!男塾シリーズ 出版社:集英社、日本文芸社  著:宮下あきら

精神医学的には大変危険な思想・言動の描写が多いのだが、読むだけで元気が出てくる不思議。悩みとかストレスとか、どうでも良くなってくるほどのパワーを貰える、魅力あふれる作品。殺伐としている割に生還率が高く、精神衛生上も良い。読後感スッキリ。


反省

医者が漫画を読もうとすると「医学的リアリティがあるか」が気になってしまいがちなんですが、精神科医の場合は「登場人物の心理描写は妥当か」「コミュニケーションに不自然さは無いか」などの点が気になってしまう。
…が、そんな事気にするからつまらない人生になってしまうのだ。
リアリティが無くっても理不尽な描写であっても楽しむことが出来る、柔軟な心を養った方が良いのだ。と、最近ようやく気付いた。

以上。

(短期集中企画⑦)2020五島つばきマラソン(後編)

私の投稿枠は毎週土曜なので、今年度中に割り当てられた枠はあと4回です。

現管理人の先生も3月で異動になるので、あと4回の中で何としても「前編」で止まっている記事を完結させないと。

過去の記事を見てみたら、前編で終わっているのは「2020五島つばきマラソン」と「言葉の選び方」の2つです。

あと1つ2つあると思ってたので意外と少なかったです(笑)

このうち、言葉の選び方については本は買ったけどまだ読んでません。なので今回はマラソン大会の後編を行きましょう。


…と思って5日の夜に一度書き上げ、管理人の先生に「明日アップお願いいします」とお願いし、次の日に確認したら、なんと上の数行しか載っていません。

なぜー!っと思って考えてみると、上書き更新をうあっていなかったんですね。

仕方ないので、今日(9日)に6日にアップする予定だった記事を載せます。当然?完全に同じ文章は無理ですが、なるべく5日に書いた文章に忠実にしたつもりです(苦笑)

さて、気を取り直して後編行きましょう。


五島つばきマラソンは高低差が激しいコースとして有名です。

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上がさが桜マラソン、下が五島つばきマラソンの高低図です。違いは一目瞭然。


五島つばきマラソンはフルマラソンとハーフマラソンがあり、この日私はハーフに出ました。ハーフのコースはフルのコースの後半部分です。

前半のような強烈な高さはないですが、上り下りが何回も繰り返されるという点では後半の方が厳しいかもしれないですね。


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今回は初めて1人でレースに参加しましたが隣の人とこんな感じに写真を撮り合いました。

今思えば、この週末(昨年の2月20日頃)はまだこうした余裕があったギリギリのところだったと思います。次の週末にはマスクがない!ティッシュがない!と騒動になってましたからね。

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スタート前。まだ三密という言葉が出る前だったので、普段のマラソン大会と同じ雰囲気でした。いつもそうですが各地のマラソン大会での記念品のシャツをよく目にします。

さて、この日はこれ以上ないというくらいに快晴でした。本土ではめったに味わえない景色の続出で、つい途中で足を止めて写真をパシャパシャと。

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いつも制限時間ギリギリになる私はこのような余裕は本来ないのですが、この大会は制限時間が5時間でした。21㎞を5時間なら全部歩いてでも完走できます(爆)けど、さが桜マラソン(中止になったけど)の予行演習と考えていたので、行けるところまでは走ろうと思ってました。

10回くらい上り下りが繰り返されるコースはやはりきつく、前月の伊万里ハーフと同じく18㎞くらいで歩いてしまいました。ただ伊万里の時と比べるとゴールの時点では表情にはまだ余裕があったと思います(笑)時間もそんなに変わらなかったし。

さて、この大会で一番の思い出は、完走後のおもてなしでした(笑)

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伊万里の時はゴールした時にはほとんど何も残ってないという悲しい事態になりましたが(まあ制限時間3分前にゴールする私が悪いのですが(苦笑))、この日は五島うどん、唐揚げカレー、近大マグロの刺身…。

それなりにカロリーは消費したはずですが、結局それ以上のカロリーを取ったと思われます(爆)

コースはきついですが景色と食事は申し分なく、来年(つまり今年)はフルに出ようと決心して五島を後にしたのですが、以前の日記でも書いたように今年の大会はいったん長崎県民限定での開催が発表された後で中止になってしまいました。

ワクチンが一通り出回るであろう、今年の秋以降のシーズンには期待したいところです。


さて、短期集中企画と名打ちながら、結局足掛け3年に及んだ私のマラソン大会に出場した日記も、今回でいったん最終回とします。

今後はレースに出場したたびに、その時の記事を適宜アップ出来たらなと思ってます。

【精神医学】~精神の発達① 乳児から学童期まで~


金原出版 現代臨床精神医学 第12版
ISBN:978-4-307-15067-5

第3章 精神の発達・加齢と精神保健 より



精神の発達

人の成長は小児科領域における基礎知識。精神科では特に「精神面」の発達を重視しています。
キーワードを中心に簡潔に解説。ヒトの発達段階についてはピアジェエリクソンフロイト、の3人の先生がそれぞれの見地から解説していますが、ここではエリクソン先生の解釈で統一。



乳児期(0~1歳)
自分では何もできないから助けを求め、親がそれに応えてくれる。愛着(Attachment)の形成が大切な時期。

エントレインメント(Entrainment)
…母親に抱かれる、授乳されるうち、赤ちゃんの方も母親を認識して目を合わせたり、母親の声や臭いを識別できるようになってくる。

基本的信頼感
…赤ちゃん側の欲求が満たされていくうちに、生理的な満足だけでなく精神的な安らぎも感じるようになる。与えてくれる親、与えられたものを受け入れる自分自身も含め、信頼関係が養われていく。

「3ヶ月微笑」
…生後3ヶ月目、周囲を目で追いかけ、微笑むと微笑み返してくれる。親だけでなく、誰でも。

選択的微笑」(LITALICO発達ナビより)
…生後5~6ヶ月頃になると、誰に対しても微笑むわけではなくなってくる。

「8ヶ月不安」
…この頃から人見知りがはっきりしてくる。自分を助けてくれない人には不信感が芽生える。



幼児前期(1~3歳)

1歳…ひとり立ち、片言を話す。1歳半…ひとり歩き、トイレが自立してくる。2歳…2~3語文を話す。

離乳し、自律性の獲得の時期。恥の感情が芽生える。「しつけ」が重要とされる。親に要求してばかりではなく、親が喜ぶよう自分の欲求をがまんすることが出来るようになっていく。しつけが出来ないと我慢強さが形成されないが、しつけが厳し過ぎても自信喪失してしまい自律性が育たない。



幼児後期(4~6歳)

3歳…自分の名前、性別が言える。身の回りの物の命名ができる。4歳…数をかぞえ、図形を模写できる。

第1反抗期…自我が芽生え、両親に反抗して自己主張する。
家庭の外で他の子供と接触し、社会性が育っていく。「ごっこ遊び」など、大人の言葉や行動を真似るようになる。

「積極性の時期」…人物、物事を認識し、価値観が生じる。過去、未来、結果などの概念をもつ。目標を攻撃・征服しようとするのが中心となる。



学童期(6~12歳)

勤勉の段階」…物事の成就、成功への希求が、この時期の特徴。失敗が重なると劣等感に繋がる。

言語、知能は発達し、親や家庭から独立し学校という集団で生活できるようになる。

自分、他人、男女の性別意識がはっきりしてくる。遊びもゲーム、スポーツなど共同で楽しむ、競うものが多くなり、勝ち負け、自分の能力、性格などが自覚されてくる。

この時期、親や家庭を離れ他人との共同生活に適応できないと「いじめ」「不登校」などが生じる場合がある。

小学校高学年になると、成人と同じような精神疾患も出現しはじめる。


まとめ

精神科において「成育歴」は大事な情報。予診を担当する学生さん達にも必ず聴取してもらっています。正しい診断に繋げるために「母子手帳」「学校の通知表」を保管しておくことを推奨。発達のどこかで躓きがあった等、背景が分かれば適切な支援、治療に結びつきやすくなります。

思春期、成人期、老年期については後日解説。勉強がんばるぞ

以上。

【精神症候学】~防衛機制~

防衛機制

受け入れがたい状況、または潜在的な危険な状況に晒された時に、それによる不安を軽減しようとする無意識的な心理的メカニズム。精神分析学で知られるフロイト先生が考えた概念であり、その後も研究が続いて現在に至る。

まず代表的なものを紹介。中学校の保健体育とかで習ったかも。


抑圧 不安や欲求不満を無意識に封じ込めて忘れてしまおうとする。



退行 幼児期や年少期の行動・考えに戻ってしまう。



合理化 満たされない欲求に対して、もっともらしい理由をつけて自分を納得させる。



昇華 社会的に認められない欲求を社会的・文化的に認められる良い方向へのエネルギーに置き換える。


(・ω・)こんな感じで「防衛機制の一覧、まとめ」記事を書こうとしたのですが…
(・ω・)めっちゃ種類が多いことに気付いた。やべぇ全部は無理だ

というわけで、精神科の臨床において重要なもの等を中心に、部分的に紹介します。


4つの分類(ジョージ・E・ヴァイラントによる)

ハーバード大学医学部の教授らしい。この先生が「防衛機制は4つに分類できるぞ」と提唱した。



レベル1 精神病的防衛

最も原始的な防衛機制。5歳以下の子供で多くみられる。

転換:解離性障害の症状。ストレスにより、麻痺したり言葉が出なくなるなど。

否認:心を閉ざし、現実を無かったことにしようとする。「怪我なんてしてない!病院行きたくない!」

躁的防衛:不安を打ち消すために、逆に活動的になる。「恋人にフラれた…気にしない!次いこう次!」

分裂(スプリッティング):境界性パーソナリティ障害にみられる。他者・自分の良いイメージ・悪いイメージを分けて捉えようとする。



レベル2 未熟な防衛

15歳までの子供にみられる防衛機制。自分を守るためだが、人間関係や社会生活に悪影響が及んでしまう。

退行:冒頭で紹介したやつ。「失敗したぁームギャー!おうち帰る!」

行動化:抑圧された衝動や葛藤が問題行動に。「盗んだバイクで走りだし自由になれた気がした」

投影:自分の気持ちではなく、他人のものだと思い込む。「私はどうも思ってない。あの人が私を避けているんです」

取り入れ:投影の逆で、他者を真似する。「いつやるの?今でしょ!」



レベル3 神経症的防衛

悪影響は少ない、普通の成人でも良く見られる防衛機制。ただし重度になれば話は別。

合理化:冒頭で紹介したやつ。「おやつ食べられなかったけど、ダイエットになったから良いのだ」

抑圧:冒頭で紹介したやつ。否認と違い、思い出すことは可能。「そういえば若い頃、ミュージシャンを目指してたんだ俺は…」

逃避:いわゆる現実逃避。「テスト勉強しなきゃいけないのに、部屋の片づけを始めてしまった」

反動形成:ストレスに対抗するため反対の行動に走る。「あの人のことが大嫌いなハズなのに、優しくしちゃう」

知性化:理詰めで考えて感情を切り離そうとする。「納得がいくまで説明してもらいますぞ」

隔離:強迫性障害でみられる。確認行為や強迫観念で、本来の不安・不満を切り離そうとする。



レベル4 成熟した防衛

これまでの3つと違い、無意識ではなく意識的に行われる。精神的な健康を保ちながら人間関係・社会生活をより良いものに変えていく原動力となる。

昇華:冒頭で紹介したやつ。「世の中への不満を原動力に小説を書いてみた」

同一視:他人の良いところを取り入れつつ自分自身も高めていく。「自分の夢を、子供が実現してくれたのを誇りに思います」

補償:他のことで成果をだして埋め合わせる。「プライベートでうまくいってない分、仕事に打ち込むぞ」


まとめ、考察

人は誰でも何かしら不満を抱えて生きているもの。誰かが、もしくは自分自身が、傍目から見ると理不尽な言動で周りを困らせている…それは防衛機制なのかもしれません。今まさに、大きな不安や不満で追い詰められているサインなのです。

不安や不満に気付き、一緒に解決し、時には成熟した防衛機制を目指していきましょう。

以上。


※参考資料サイト

防衛機制(Wikipedia)

脳科学自転 防衛機制

ジョブデポ ナースのヒント 防衛機制と看護|基礎知識や11種類と具体例、看護の流れやポイント 2020.11.16

医療法人平成医会 コラム 苦手な人の心理と防衛機制 2021.01.25

Direct Communication 心理コラム 防衛機制の意味とは?種類と具体例・覚え方を解説

【教授の音楽療法】~歌うギタリスト~

【昨日のお昼休み】
(・ω・)そういえば教授、音楽療法の新作ネタとかありませんか?
(`・ω・)「ん?あるよー。今週中に送りますね」
(・ω・)ありがとうございます!

【その夜】
(・ω・)教授からのメールだ
(`・ω・)「お待たせしました新作です」
Σ(・ω・)速い!

(`・ω・)「エレアコギターの綺麗な音色と、素敵な歌声とあわせもつギタリストを紹介します!」


~歌うギタリスト~ ジョージ・ベンソン


UNIVERSAL MUSIC JAPAN ジョージ・ベンソン / GEORGE BENSON

1970年後半~90年代に一世を風靡したジョージ・ベンソンは、元々は正統派のジャズギタリストでしたが、1976年に発表した名盤「Breezin‘」の大ヒットを皮切りに、「歌うジャズギタリスト」としての名声を不動のものにしました。70歳台後半となった現在もコンスタントに作品を発表し、華麗なギターテクとともに渋い歌声を披露しています。ジョージ・ベンソンの名前を聞いたことがなくても、彼の奏でるメロディーは「いつか、どこかで聞いたことのある」evergreenとして、ずっと残るでしょう。彼の代表曲の動画をいくつか紹介します。


<華麗なギターテク編>



George Benson – Breezin’ (1976).wmv

「Breezin‘」のタイトル曲、まさにそよ風のように涼しげなメロディーです。



George Benson – “Affirmation” (live at North Sea Jazz 2008)

「Breezin‘」から、ベンソンバンドとのエネルギッシュな演奏です。



George Benson – Weekend in LA (Live Montreux 1986)

同名のライブアルバムから、全盛期のパワフルな演奏です。



George Benson – Being With You – 1983

まさに「甘い」としか形容しようのない名曲、どこか夏のバカンス先で聞きたいですね。



Don’t Know Why – George Benson (Transcription)

ノラ・ジョーンズの名曲、さりげなく聞かせます。


<渋い歌声を聞かせます編>


This Masquerade – George Benson ( lyrics )

「Breezin‘」から、Leon Russel作の名曲。ギターとスキャットの掛け合いで聞かせます。



Aretha Franklin & George Benson – Love All The Hurt Away

ソウルの女王、アレサ・フランクリンとのデユエット。女王に負けてないですね。



George Benson – Nothing’s Gonna Change My Love For You • TopPop

ギターは手にしてません。知らない人から見ればただの歌手にしか見えないですね。



George Benson – The Greatest Love of All


Whitney Houston – Greatest Love Of All (Official Video)

元々は彼が歌い、のちホイットニー・ヒューストンが大ヒットさせています。
映画「モハメド・アリ The Greatest」の主題歌でもあります。

歌詞はこんな感じです。


子供たち、それは私たちの未来としっかりと言い聞かせて、それぞれの道を歩かせよう
誰もが内に秘めている素晴らしさに気づかせて生きやすくなるよう、
自分を大切にすることを教えよう 子供の笑い声を聞きながら、私たちの幼い頃を思い出そう
ヒーローの登場を、みんな願っている いつも誰かに憧れていたいからだけど、
そう思える人に私は出会えなかった、さびしいことに
だから自分を信じよう、って思うことにした
ずっと前に決めた。誰かにおもねるのはやめよう、って
うまくいこうと、いくまいと、とにかく信じたとおりに生きるの
奪いたければ奪えばいい。私が私であるプライドは奪えない!
だって、何よりも尊い愛が私の内側からあふれているから
すべてを越える愛は、私の中にあった
すべてを受け入れる愛に、誰だって気づける
自分を愛してみて!それが、何よりも大きな愛
それでもいつか、やっと手に入れたかけがえのない暮らしの中で、ふとさびしさにとらわれても
何があっても乗り切れた愛を、思い出して!

*世の中に才能のある人はいるものですね。


※追記


洋楽データベース リンダ・クリード
(Linda Creed)

米国ペンシルヴァニア州フィラデルフィア生まれ。ソングライター、バック・ヴォーカリストとして活動。
Greatest love of allの作詞者リンダ・クリードは20代半ばで乳がんとなり、その時にこの詩を作っています。彼女は約10年間の闘病の後に亡くなっていますが、ホイットニー・ヒューストンがこの曲を全米No.1ヒットにする直前だったそうです。


【教授の音楽療法シリーズ バックナンバー】
【教授の音楽療法】第1回 ~深紫伝説、湖上の煙~
2020.06.18
【教授の音楽療法】第2回 ~Rocket Man~ 2020.06.19
【教授の音楽療法】第3回 ~POLICE~ 2020.07.07
【教授の音楽療法】第4回 ~生まれは”猫年”~ 2020.07.16
【教授の音楽療法】第5回 ~イパネマの娘~ 2020.07.23
【教授の音楽療法】第6回 ~二人のロックレジェンドに愛された女~ 2020.08.06
【教授の音楽療法】第7回 ~(続)二人のロックレジェンドに愛された女~ 2020.08.18
【教授の音楽療法】第8回 ~ダメ、ゼッタイ!~ 2020.08.25
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【精神医学】~解離性障害について~


解離性障害

※参考資料
厚生労働省 みんなのメンタルヘルス 解離性障害
I
CD-10(WHO)による診断基準など

解離性障害は、自分が自分であるという感覚が失われている状態。ある出来事の記憶がすっぽり抜け落ちていたり、まるでカプセルの中にいるような感覚がして現実感がない、いつの間にか自分の知らない場所にいるなど、様々な症状があります。これらの症状は、つらい体験を自分から切り離そうとするために起こる一種の防衛反応と考えられています。



解離性健忘

最近の重要な出来事の記憶喪失。事故、死別などトラウマ的な出来事が関係し、抜ける記憶は部分的。数日で戻ることが多いが、長期化するケースも無くはない。



解離性遁走(フーグ)

ある日突然失踪し、いつのまにか普通に旅している。これも数日で終わることが殆どだが、時には長期間、全く別の人生を歩んでいたというケースも。



解離性昏迷

昏迷(反応が無く、大きな声で「大丈夫ですかー!!?」と言われてやっと覚醒する状態)をきたす。呼吸や眼の動きは保たれていることから、眠っているとか意識障害に陥っているわけではない。ただ話せない、動けないだけ。



ガンサー症候群

質問に対する「的はずれ応答」が特徴的。ぼんやりとしていて、一見すると認知症のような状態。刑務所など閉鎖的な環境に居た人で発症する、拘禁反応の一種として知られる。



離人・現実感喪失症候群

自分自身の心、身体が自分のものでないような感覚となり、そして周囲は色彩と生命感を欠いて人工的に見え、「非現実的」に感じる状態。生きている感じがせず、「自分自身を遠くから眺めているみたい」と訴える。単独で生じるケースは稀で、うつ病、恐怖症、強迫性障害などと関連して生じる。臨死体験もこれの一種では?という説が。



多重人格(解離性同一性障害)

複数の人格をもち、それらの人格が交代で現れます。人格同士はしばしば、別の人格が出現している間はその記憶がない場合が多く、生活上の支障をきたすことが多くなります。人格はそれぞれ、独立した記憶、行動、好みを持っていて、殆どの場合「互いの人格の存在には気づかない」。発症初期の頃の人格の交替は、突然に起こる。



その他、要点など

解離性障害のタイプには他にも、「身体が思うように動かなくなる」「感覚が変になる」「けいれんが起きる」など様々な症状をきたすことがあります。
いずれの症状においても、常に注意しなければならないのが「鑑別疾患」。ストレスで不思議な症状が出ている…と思いきや、脳梗塞などの病気で本当に麻痺、意識障害が起こっているかもしれません。そうした重大な病気を見落とさないこと
(・ω・)「解離を見たら器質(本物の身体の病気)を疑え!くまなく検査せよ!」
と、研修医時代に厳しく指導されました私。

他の精神疾患との鑑別も重要です。「現実感が無い」「自分が自分でない」といった自我障害の症状は、統合失調症など他の疾患でも起こることがあります。解離性障害は「ストレスが原因」であり、ストレスを取り除き安心を得るのが最大の治療ですが、他の疾患であれば治療方針も変わってくる可能性があります。よく観察し、よく話を聞き、正しい診断に繋げましょう。


以上。