医局日記

【精神療法】~認知行動療法(CBT)、ざっくり紹介~


認知行動療法センター より


認知行動療法CBT:Cognitive Behavior Therapy)

私たちは、自分が置かれている状況を絶えず主観的に判断し続けています。それ自体は普通のことですが、強いストレスを受けている時やうつ状態に陥っている時など、特別な状況下ではそうした認知に歪みが生じてきます。悲観的になりすぎず、かといって楽観的にもなりすぎず、地に足のついた現実的でしなやかな考え方をして、いま現在の問題に対処していけるように手助けする。それが認知行動療法です。

…と真面目に解説すると長くなっちゃうので、ざっくり要点だけまとめていきます。


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7つのコラム
これが基本。この分析を繰り返し、練習していくことで、自分の考え方のクセを自覚しましょう。



自動思考
なかでも一番大事なのが「自動思考」。ストレスとなる、落ち込む出来事があったとき、一番最初に頭に浮かんできた考えを客観視します。



記録しよう!
認知行動療法では宿題が命。「どんな出来事があり」「そのとき何を感じたか、そのときの自動思考はどうだったか」を、ガンガン記録し続けてもらいます。(けっこう面倒くさいけど、練習あるのみ!)
後から振り返ることで、「よくよく考えたら、自分の考え方が先走ってたのかなー」と、いろいろ気付くことが出来ます。



柔軟な考え方を身につける
宿題を始めた最初のうちは自動思考までで止まってしまい、「根拠」「反証」はなかなか思いつかない人が多いです。だからこそ練習!ちなみに無理に「楽観的な考え」に誘導する必要はありません。客観的な事実を重視し、他にも色々な考え方が出来るんだ、と気づくことが目標です。


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行動に繋げよう
自分の考え方の特徴を見直し、柔軟な考え方が身に着いたら、いよいよ行動に移していきます。
ここでも柔軟に、客観的に利点、欠点を分析していくことが大事です。



おまけ

・「認知療法」「行動療法」との関係性

(とある講習会にて)

(・ω・)先生!真ん中に点を書く「認知・行動療法」と「認知行動療法」、どっちが正しい表記なんですか?
(´□ω□)「もともと”認知療法”と”行動療法”は、別々の治療法だったんじゃよ」
(´□ω□)「で、認知療法派が」
…(^ω^)「やろうとしてることは一緒だよね!合体しようよ!」
(´□ω□)「と言いだし、一緒になった。なので真ん中に点を打たない書き方をする先生は、もともと認知療法派である」
(´□ω□)「逆に、真ん中に点を打ってるのは行動療法派じゃな」
…(`Д´)「勝手に一緒にすんな!繋げんな!」

(・ω・)ということらしい。(本当かどうかは知らん


・統合失調症の治療として


医学書院 統合失調症治療ガイドライン
ISBN 978-4-260-00646-0

認知行動療法は、統合失調症の治療に有効であることが研究で証明されています。
統合失調症といえば「幻覚、妄想」などが主症状ですが、

(>_<)「幻聴が聞こえる!誰かに狙われている!」

…といった、いわゆる被害妄想って、自動思考に似てるんですよね。
客観視する力、柔軟な思考が身に着けば、幻覚に振り回されることなく日常生活を維持できることが期待されます。


まとめ

精神科臨床においては、支持的精神療法(12月15日の日記)と並んでメジャーな治療法。習得しているベテランの先生方は、普段の面接でも患者さんに「客観視」をうまく促しているため、学生さんや研修医の先生方は無意識のうちに技を伝授してもらっているかもしれません。
治療法としてでなく、自分の精神衛生を保つコツとして、日常生活にも大いに役立ちます。アサーション(10月2日の日記)など他のコミュニケーション技法との組み合わせも大いに有効です。


以上。


※参考資料


認知行動療法とは

厚生労働省 心の健康 認知行動療法


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