【医学雑誌】~大麻について~
精神科治療学 第35巻01号 大麻─国際情勢と精神科臨床─ より
※関連日記
依存症について、”ラットパーク実験”の話。2020年06月11日
【教授の音楽療法】~ダメ、ゼッタイ!~ 2020年08月25日
なかなかファンキーな特集なので紹介。
要所のみかいつまんで書きます。
「ダメ、ゼッタイ!」…は古い?
これまで大麻は「ゲートウェイ・ドラッグ」である、という考え方が一般的であった。
大麻に手を出す人は大概、そのまま他の危険な薬剤にも手を出すことになるからだ。
しかし国外では、大麻合法化の流れが拡大しつつある。
日本の議論は大昔の考え方で止まってしまっている。最新の、他国での論点・法整備を把握しておいた方が良い。
合法化して大丈夫?
禁止したところで違法市場が活発になってしまう、というジレンマがある。
(ちなみに大麻合法で知られるオランダ、大麻の売買自体は違法。あくまで”許可された店舗内での使用”が認められているだけです。)
別に大麻に限らず、依存する人、乱用する人は何だって有害なハマり方をしてしまう背景があるのだ。
「違法な物を使っていると知られるわけにはいかない…」とますます口を閉ざし、依存症治療の窓口に行きたくても行けなくなってしまう。
よって制御された環境下で使用を認めた方がむしろ有益、という考え方が広まりつつある。
合法化することで、依存症治療への垣根が下がるかもしれない。
ただ、”若年者による乱用”への予防策を同時進行で整えることは必須!
大麻は身体依存しない…とも限らない
一口に大麻といっても、高力価のものには要注意。高力価だと依存・離脱は生じ得るため危険である。
実際、大麻の使用により精神病症状を発症する人は存在する。安全だとは全く言えない。
タマゴが先か鶏が先か
精神疾患と大麻との関連については諸説ある。
大麻にハマる→精神疾患を発症してしまう とは限らない。
精神疾患を発症してしまった→大麻に手を出してしまう、
精神症状を発症してしまった→大麻によって症状を抑え、生活を維持できている、
などの説もある。
通報?守秘義務?…精神科領域に携わる者として
現在の日本の法律では、医療従事者には大麻の通報義務がある。
ただ、今後はどうなるか分からない。
依存症治療を担う精神科医の立場としては、本来は守秘義務を優先すべきである。
まずは患者さんに、病院に来てもらうこと。患者さんを尊重し、治療意欲を高め、社会復帰へとつなげたい。
私見
ラットパーク実験の復習になりますが、依存症は「依存せざるを得ない背景」が存在するから治りにくい。
使わせない、とにかく禁止あるのみ、というやり方ではその場しのぎ。
精神科の治療者として、常に問題の本質を見極めるべく思考・議論を深め続けましょう!
以上。