医局日記

依存症について、”ラットパーク実験”の話。

https://gigazine.net/news/20130917-rat-park-experiment/

GIGAZINE 薬物中毒の原因を生活環境にあると考えた「ラットパーク」実験とは?

1980年、サイモン・フレーザー大学、ブルース・アレグサンダー博士による実験。
それまで薬物の依存性については「薬物の成分が原因」というのが定説であった。

お薬には中毒性がある。一度使うと止められなくなる。
だから一度でも使ったらアウド。「ダメ、ゼッタイ。」
現代でも、この考え方は一般的だと思われます。


アレグサンダー博士「ちょっと待った!」(`・ω・)☝
そもそも実験用のネズミさんにお薬を投与する環境自体…

檻の中で身動き取れないんだから、ストレスありまくりじゃないか。
薬に溺れる以外に、どうしろと言うのか。
環境が原因なのではないか?


というわけで、ネズミさん達にとっても広くて快適な”楽園”を用意してみた。

アレクサンダー博士「さあネズミ達、のびのびと遊びたまえ」(・ω・)
アレクサンダー博士「お薬欲しかったら、いつでも飲めるぞ」(・∀・)誘惑

するとどうだろう、ネズミさん、薬に溺れることはなく、仲間同士で楽しく遊んで過ごしていた。
むしろ檻に入れて薬中毒になったネズミさんを途中参加させてみたら、なんと依存から脱却できた。

「依存症の原因は薬自体ではなく、孤独な環境にあったのだ!」


残念ながらこの研究結果は世間に受け入れられず、予算を止められ中止となった。(;ω;)
しかし2000年代になってからは、徐々に注目が集まりつつあるようです。


精神科の臨床の場では必ずと言って良いほど経験するものなのですが、
依存を止めようとすると、今度は別のものに依存してしまうことが多いのです。
依存せざるを得ない、依存することしか逃げ場が無いのですから。
「止めろと言われて止められるもんなら苦労しねぇ!」

薬物依存に限らず依存症、いや精神科疾患全般に通ずる考え方として、
原因と結果だけに注目しても、なかなか問題は解決しない。

その裏に隠されている過去、背景まで、きちんと扱っていく必要があるのです。
より視野を広く、深く。
それが精神科の仕事なのであります。