医局日記

【精神医学】~睡眠障害まとめ~


金原出版 現代臨床精神医学 第12版 2013年
ISBN 978-4-307-15067-5


睡眠障害といえば「眠れない」が主訴の不眠症のイメージが強いが、それだけではない。
睡眠に関する代表的な疾患について、ざっくり紹介します。


不眠症(Insomnia)

やっぱり「眠れない」が一番多い症状。国内では成人の約1割が重症の不眠にあたり、100人に1人は睡眠薬を服用していると言われているそうだ。何らかのストレス、他の精神疾患(うつ病、統合失調症など)、不規則な生活、飲酒、身体疾患、など原因は様々。


睡眠関連呼吸障害(Sleep Related Breathing Disorder)
睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome

寝ているときに10秒以上呼吸が止まる病気。このため睡眠が浅くなり、翌日酷い眠気、だるさ、注意力低下をきたしてしまう。いくつか原因はあるが、閉塞型が最多


ナルコレプシー(Narcolepsy)

過眠症の一種。特徴的な症状は以下4つ。(たぶん国家試験に出るぞ!)
日中の睡眠発作 「仕事中にも耐えられず眠り込む」
情動脱力発作 「笑う、驚くなどの情動変化時に脱力(倒れることも)」
入眠幻覚 「眠りぎわ、現実的で不快な幻覚」
睡眠麻痺 「覚醒→睡眠の移行期に金縛り状態になる」


その他の過眠症(Hypersomnia)

ナルコレプシーのような発作は無いものの、日中の過度の眠気を訴える。

クライネ・レヴィン(Kleine-Levin)症候群

過眠+病的な空腹感を伴う。10歳代の男子に多い。


概日リズム睡眠障害

不眠、過眠ではないが、睡眠時間がズレている状態。睡眠相(眠る時間帯)によって後退型、前進型など分類される。時差ボケもこの疾患の一種。


睡眠時遊行症(夢遊症)

睡眠時随伴症(パラソムニア)の一種。ノンレム睡眠期に起こる。睡眠中に歩き回り、びっくりして周りの人が止めようとしても、なかなか目が覚めない。起きた後は、そのときの事を全然覚えていない。若い男子に多い。

夜驚症(夜泣き)

幼児に多く、深い睡眠期に突然叫び出す。


レム睡眠行動障害(RSBD:REM Sleep Behavior Disorder

レム睡眠期に筋肉の脱力が起こらず、夢の内容に一致した行動(叫ぶ、殴る蹴る、走り出す)を行う。明け方に多い。夢遊症とは「レム睡眠期である、夢の内容を覚えている、50歳以上の高齢者に多い」という点で対照的。


むずむず脚(レストレスレッグス)症候群

睡眠関連運動障害の一種。11月2日の日記でも解説しましたのでそちら参照。


周期性四肢運動障害PLMD : Periodic Limb Movement Disorder)

睡眠関連運動障害の一種。睡眠中、激しく脚を動かす。本人は自覚せず、家族が蹴っ飛ばされて気づくことが多い。


まとめ

国家試験にも出やすい、代表的な睡眠障害について紹介しました。研修医の皆さん、「よく分からんけど、とりあえず夜ぐっすり眠れりゃ健康ばい」と気軽に睡眠薬を処方しないようご注意ください!疾患によっては逆効果となる恐れがあります。睡眠障害の治療においては、まずは病態を見極め、正しい診断につなげることであります。

以上。