医局日記

【国試ネタ】~精神科系の問題~


第112回医師国家試験の問題および正答について
より。問題と正答ぜんぶ公開されている。とりあえず第112回の問題からチョイス。
参考文献は精神症候学(ISBN 978-4-335-65141-0)、現代臨床精神医学(ISBN 978-4-307-15067-5)など。


第112回 A問題 第6問(以下、112-A6と略記)

睡眠について正しいのはどれか。
a 夢を体験するのは浅いノンレム睡眠の時期である。
b 深いノンレム睡眠は朝方に向けて減少する。
c レム睡眠は緩徐な眼球運動が特徴である。
d 乳幼児ではレム睡眠が成人より少ない。
e 総睡眠時間は青年期以降一定である。



睡眠のキホン

「最初は深く、だんだん浅くなっていく」というイメージで覚えよう。
だって起きる瞬間は「夢から覚める」。一番浅くなってるわけだし。
赤ちゃん、子供は寝まくってる。(お昼寝タイム)
高齢者ほど短く、浅くなっていく。(おじいちゃんは早起き)

Rapid Eye Movements(REM)睡眠
夢を見ている浅い睡眠。身体は動いてないけど、目玉は“急速に”動いているらしい。

よって、
a 夢を体験するのは浅いノンレム睡眠の時期である。 x 浅いのはレム睡眠。
b 深いノンレム睡眠は朝方に向けて減少する。〇 正解。
c レム睡眠は緩徐な眼球運動が特徴である。 x ”Rapid”、急速。
d 乳幼児ではレム睡眠が成人より少ない。 ? (参考文献に載ってなかった…)
e 総睡眠時間は青年期以降一定である。 x おじいちゃんは早起き。


112-A26

67 歳の女性。不眠を主訴に来院した。1か月前から夜になると両足に虫が這うような不快な感覚を自覚していた。この不快感は安静にしていると増強するが、足を動かすことで軽減する。かかりつけ医からは経過をみるように言われたが良くならず、足を動かしたい欲求が強く寝つけなくなり受診した。四肢の筋トーヌスは正常で筋力低下を認めない。腱反射は正常で、Babinski 徴候は陰性である。感覚障害と小脳性運動失調とを認めない。歩行に支障はなく、日常生活動作にも問題はない。血液生化学検査では血清フェリチンを含めて異常を認めない。
適切な治療薬はどれか。
a β 遮断薬
b 筋弛緩薬
c 抗コリン薬
d ドパミン受容体作動薬
e アセチルコリンエステラーゼ阻害薬



医療法人東横会 たわらクリニック むずむず脚症候群 より

むずむず脚(レストレスレッグス)症候群
・脚の不快な感覚のため、脚を動かしたくてたまらなくなる
・安静にして、横になったり座ったりしていると症状があらわれる、または強くなる
・脚を動かすと、不快な感覚が軽くなる
・夕方から夜にかけて症状が強くなる
といった症状が特徴。ドパミンの機能障害や鉄が関与していると言われている。
精神科のお薬の副作用で生じることがある。(ドパミンを抑える作用の薬)
副作用なら原因薬の減量・中止が望ましいが、原因不明で発症するケースもたまにある。
対策、治療法
・カフェインやアルコール、喫煙を避ける
・鉄分を補充し、バランスのよい食事
・ストレッチやマッサージ
ドパミンの働きを補う薬、てんかんの薬

よって正解は d ドパミン受容体作動薬 一択。


112-A42

27 歳の女性。突然起こる動悸や息苦しさを主訴に来院した。約1か月前、出勤時の電車内で突然、動悸と冷や汗が出始め次第に呼吸が荒くなり、「このまま窒息して死んでしまうのではないか」という恐怖感に襲われた。途中の駅で電車を降りたところ、症状は約 10 分で軽快した。以後も電車の中と自宅で1回ずつ同様の症状があった。心電図を含めた精査を行ったが、異常を認めない。どのような場所にいても「また症状が起きるのではないか」という心配が続いている。
このような心配が持続する症状はどれか。
a 心気妄想
b 自生思考
c 閉所恐怖
d 妄想気分
e 予期不安


パニック発作
「動悸、発汗、窒息感、死の恐怖」などから過呼吸を生じる症状。
救急車要請となるケースも多い。
この症状だけで死ぬことは無いが…めっちゃ苦しくて怖い。
繰り返すうちに「もう嫌だー、また起きたらどうしよう」と、”予期不安”を生じる。

ちなみに「パニック”発作”とパニック”障害”って、どう違うの?同じ?」という方へ。
パニック発作は、色々な原因・病気(閉所恐怖症、高所恐怖症、社交恐怖症などなど)で生じることがある。
原因が無いのにいきなり発作が生じるのが「パニック障害」です。
予測・回避困難なため凄く大変な病気。


というわけで e 予期不安 が正解。

ちなみに他の選択肢…
心気妄想:「病気に違いない!」という妄想。
自生思考:「関係ない思考が勝手に浮かんでくる」。軽微な自我障害。
妄想気分:「どこかいつもと違う…!」という漠然とした緊張。
です。



今回はここまで。以上。