【精神医学】~アルコール使用障害の薬物療法~
臨床精神医学第49巻第10号 特集/アルコール使用障害の現在とこれから 発行日:2020年10月28日
12月3日の続き。
アルコール使用障害の薬物療法
※以下、参考資料
厚生労働省 e-ヘルスネット
アルコール依存症の薬物療法
抗酒剤
アルデヒド脱水素酵素(ALDH)を阻害する作用。これにより強制的に下戸、つまりお酒が飲めない身体となる。
注意点として、飲酒欲求を抑える作用は無い。
服用後に飲酒してしまうと血中アセトアルデヒド濃度が上昇し、「悪心・嘔吐」「頭痛」「動悸」「顔面紅潮」「呼吸困難」などをきたす。結構危ないですので、気軽に処方して良いお薬ではない。「お酒は絶対に飲まない!」という約束を守ることが大前提。
心臓や肝臓等がとても悪い患者さんや妊婦には禁忌です。またアルコールの入った食品、栄養ドリンク剤などでも反応が出ることがあるので避けるようにしましょう。
現在、日本で処方可能なのは2つ。
ジスルフィラム(ノックビン(R))とシアナミド(シアナマイド(R))
シアナミドの方が即効性だけど、飲み忘れると直ぐ効果が切れてしまう。
ジスルフィラムは効き始めるまでタイムラグがあるが、飲み忘れても効果が持続するメリットがある。
飲酒欲求軽減薬
脳内のNMDA受容体を介する神経伝達を阻害することによって、飲酒欲求を抑える作用。
注意点として、抗酒剤のような不快反応は無いのでお酒は飲もうと思えば飲めてしまう。よってこちらも断酒が前提。
肝障害の患者さんにも使いやすく、抗酒剤と併用することも可能です。
アカンプロサート(レグテクト(R))が日本で採用されている唯一の薬。
その他
新しい薬、未採用薬、保険適応外だけど有効性が示唆されている薬など紹介。
オピオイド拮抗薬ナルトレキソン、アルコール依存症の治療効果はプラセボ並み 2001.12.17
ナルメフェン(セリンクロ(R))…オピオイド受容体拮抗・部分的作動薬。飲酒による幸福感・飲酒による幸福感・依存を抑制。鎮静作用により飲酒欲求を軽減する。2019年3月に国内販売開始。
ナルトレキソン…オピオイド受容体拮抗薬。アルコール依存症の原因の一つとなる飲酒の“報酬効果”をブロックし、飲酒に伴う高揚感などを失わせることで、断酒を続けやすくする効果があるとされる。日本では未承認。
トピラマート(トピナ(R))…抗てんかん薬。GABA-A受容体増強作用により、飲酒行動や飲酒欲求を抑制すると考えられている。アルコール依存症に対しては保険適用外。
まとめ
残念ながら「お薬を飲めば依存症が治る」…というわけではありません。アルコール使用障害における薬物療法は、あくまで「断酒のサポート」目的です。お酒を飲まずに過ごすための心理教育、家族会、などの取り組みこそが治療の本幹、大前提です。
以上。