【勉強会】~高齢者の健康、フレイル~
高齢者が抱える健康課題
高齢者の特性を踏まえた保健事業ガイドライン第2版 令和元年 10 月 より
高齢者、その中でも特に後期高齢者については、複数疾患の合併のみならず、加齢に伴う諸臓器の機能低下を基盤としたフレイルやサルコペニア、認知症等の進行により個人差が大きくなり、多病・多剤処方の状態に陥るなど、健康上の不安が大きくなる。こうした不安を取り除き、住みなれた地域で自立した生活ができる期間の延伸、QOLの維持向上を図るためには、高齢者の特性を踏まえた健康支援・相談を行うことが必要である。
フレイルとは
フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント 平成 26 年 5 月吉日 より
健常な状態から要介護状態に突然移行することは、脳卒中などのケースでみられるが、今後人口増加が見込まれる後期高齢者(75 歳以上)の多くの場合、“Frailty”という中間的な段階を経て、徐々に要介護状態に陥ると考えられている。Frailty とは、高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し、生活機能障害、要介護状態、死亡などの転帰に陥りやすい状態で、筋力の低下により動作の俊敏性が失われて転倒しやすくなるような身体的問題のみならず、認知機能障害やうつなどの精神・心理的問題、独居や経済的困窮などの社会的問題を含む概念である。
Frailty の日本語訳についてこれまで「虚弱」が使われているが、“加齢に伴って不可逆的に老い衰えた状態”といった印象を与えてきた。しかしながら、Frailty には、しかるべき介入により再び健常な状態に戻るという可逆性が包含されている。従って、Frailty に陥った高齢者を早期に発見し、適切な介入をすることにより、生活機能の維持・向上を図ることが期待される。このような学術的背景により…(中略)…様々な案について検討を行った結果、「虚弱」に代わって「フレイル」を使用する合意を得た。
診断基準について
フレイル(虚弱)>フレイルの診断 更新日:2020年7月 3日 より
フレイルの統一された評価基準はなく、下記のFriedらの評価基準が一般的に用いられています。
Friedらのフレイルの評価基準
①体重減少「6か月間で2~3㎏以上の(意図しない)体重減少」
②主観的疲労感「(ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする」
③日常生活活動量の減少「軽い運動を1週間に1日もしていない」
④身体能力(歩行速度)の減弱「歩行速度が1メートル/秒未満」
⑤筋力(握力)の低下「利き手の測定で、男性26㎏未満、女性18㎏未満」
3項目以上該当した場合をフレイル、
1~2項目該当した場合を前フレイル(プレフレイル)、
該当項目が0の場合は健常となります1)。
簡易チェック
上記サイトにて、他にも具体的・実用的なチェックシートが公開されています。
フレイルの問題点と対策
フレイルとは より
出典:鈴木隆雄. 介護予防とフレイルアンチ・エイジング医学. 2016;12:5を元に作図
こうした悪循環をフレイル・サイクルと呼び、転倒や骨折あるいは慢性疾患の悪化をきっかけとして要介護状態になる可能性が高くなります。
「ニッポン一億総活躍プラン」 フォローアップ会合資料(PDFデータ) 2018年5月30日 より
「食べ物大事!」「コミュニティが大事!」という内容が主でした。
まとめ
フレイルは特殊な病気・症候群でも何でもありません。ありそうでなかった「概念」です。
「高齢になると、なんとなく病気がちになって、だんだん介護が必要になっていく」ってイメージ自体は昔からあったと思いますが、まさにその”だんだん弱っていく”状態を示す明確な専門用語・定義が中途半端だったんですよね今まで。(「虚弱」とか言われてもイメージ悪い)
今後は高齢化が進んでいくため、国として「フレイルを意識して、弱る前に適切な介入・支援をしましょう」と取り組んでいます。
(厚生労働省の資料を読むと、めっちゃ「フレイル」という言葉が頻回に出てくる。全力で流行らせたいのでしょう、たぶん。)
医療・福祉全般における重要な概念として今後定着していくと思われますが、精神科医療においては特に「精神・心理面」で関りが深いです。8月26日の日記でも紹介した通り、高齢者の精神科疾患というのは若年者とは異なる部分があり、治療も難しいことがある。
わざわざ新しい概念として提唱されたのは、「適切に対応すれば健康を維持できる」という大きな希望があるからです。今後は高齢化社会であり、高齢者の健康寿命を保つことは、医療従事者にとっての重大な使命となるでしょう。我々もその一員として日々がんばってまいります。(・ω・)
以上。