【勉強会】~持効性注射剤(LAI)について~
持効性注射剤(Long Acting Injection:LAI)とは…
http://www.shizuoka-pho.jp/kokoro/sp/medicine-info/8_57f351e29a124/index.html
静岡県立こころの医療センター 持効性注射剤って、なんだ?
↑一般の方や学生さんでも読みやすい文体で分かりやすく、オススメ。
月に1~2回、注射を打つだけ。ジワジワ効き続けるタイプのお薬です。
精神科においては、統合失調症の治療薬として活用されています。(他科では、抗がん剤、ホルモン剤など。)
メリット
・お薬の「飲み忘れ」の心配が無くなる
・お薬の「管理」の手間が無くなる
・お薬の効き目が生活(食事、運動、予定外の用事など)に左右されにくくなる
デメリット
・副作用が出てしまった場合、対応が難しい(ジワジワ効き続けちゃうので)
・(注射打つ時だけだけど…)痛い
こうしてみるとメリットの方が大きいように思われますが…日本においては未だメジャーな投与法にまでは至っていません。やっぱり注射は痛い。慣れるまで大変ですからね。
有効性について
http://www.asas.or.jp/jsnp/csrinfo/03.html
統合失調症 薬物治療ガイドライン
日本神経精神薬理学会(編集) 医学書院(発行) 2017年11月22日改訂
税抜 3600円で売ってますが、上記URL(日本神経精神薬理学会のwebページ)で内容公開されてます。
で、今回のテーマである”LAI”についての記載をピックアップしてみました。
第2章 CQ2-1 統合失調症の再発・再燃時
薬物代謝能の更新・吸収障害を除外するために、血中濃度が測定できる薬や、持効性注射剤を試すことが望ましい[2D]。見かけ上の”治療抵抗性”を除外するのに役立つ。
第3章 維持期治療
CQ3-3 LAIは経口薬より有効?どのような患者に向いてる?
服薬がきちんとできないことにより再発する人に向いてる[2C]。また、患者が希望する場合には強く推奨[1C]。
お薬を飲んでも効かない…治らない…と諦める必要はありません。
その原因が、実は「ちゃんと腸から吸収できていない」「体質的に薬が直ぐ分解されてしまう」だけかもしれません。
LAIなら、薬の効き目が確実に、長時間、維持できます!
どうしても、規則正しくお薬を飲むのが難しい…飲み忘れて再発、うんざり…
LAIなら、そもそも薬を飲む、という行為から解放されます!
「使って良いですよ!」という患者さんには是非、使いましょう!
(たぶん)厚生労働省お墨付き。
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000608535.pdf
厚生労働省 保険局医療課 令和2年度診療報酬改定の概要(精神医療)
今年の1月29日に、診療報酬が改定されています。割と最近ですね。
今までは「外来通院中の患者さんに使うべし」であった持効性注射剤が、入院患者さんでも使いやすくなりました。
精神科治療の最大の目標は「社会復帰」です。「精神科病院への入院ありき」ではなく、出来る限り地域、社会で生活できるように。それが今日の精神科治療のスタンスです。今回の改定は表向きには”入院治療”に関する記載ですが、厚生労働省としてはおそらく「入院中から積極的に導入して、どんどん退院・社会復帰につなげてね!」という前向きな意図によるものと思われます。(たぶん)
まとめ
現在のところ、精神科医も患者さんも「注射かぁ…痛そうだなぁ…」で敬遠しちゃっている場合が多いと思いますが、今後はもっと積極的に選ばれ、当たり前となる日が来るかもしれません。実際のところ持続性注射剤のメリットは多く、(診療報酬改定からは)厚労省としても使用を推奨したい、という意図を感じます。
ただ、副作用が生じた際のリスクなどもありますので、その点は十分注意しましょう。
以上。