【精神症候学】~防衛機制~
受け入れがたい状況、または潜在的な危険な状況に晒された時に、それによる不安を軽減しようとする無意識的な心理的メカニズム。精神分析学で知られるフロイト先生が考えた概念であり、その後も研究が続いて現在に至る。
まず代表的なものを紹介。中学校の保健体育とかで習ったかも。
抑圧 不安や欲求不満を無意識に封じ込めて忘れてしまおうとする。
退行 幼児期や年少期の行動・考えに戻ってしまう。
合理化 満たされない欲求に対して、もっともらしい理由をつけて自分を納得させる。
昇華 社会的に認められない欲求を社会的・文化的に認められる良い方向へのエネルギーに置き換える。
(・ω・)こんな感じで「防衛機制の一覧、まとめ」記事を書こうとしたのですが…
(・ω・)めっちゃ種類が多いことに気付いた。やべぇ全部は無理だ
というわけで、精神科の臨床において重要なもの等を中心に、部分的に紹介します。
4つの分類(ジョージ・E・ヴァイラントによる)
ハーバード大学医学部の教授らしい。この先生が「防衛機制は4つに分類できるぞ」と提唱した。
レベル1 精神病的防衛
最も原始的な防衛機制。5歳以下の子供で多くみられる。
転換:解離性障害の症状。ストレスにより、麻痺したり言葉が出なくなるなど。
否認:心を閉ざし、現実を無かったことにしようとする。「怪我なんてしてない!病院行きたくない!」
躁的防衛:不安を打ち消すために、逆に活動的になる。「恋人にフラれた…気にしない!次いこう次!」
分裂(スプリッティング):境界性パーソナリティ障害にみられる。他者・自分の良いイメージ・悪いイメージを分けて捉えようとする。
レベル2 未熟な防衛
15歳までの子供にみられる防衛機制。自分を守るためだが、人間関係や社会生活に悪影響が及んでしまう。
退行:冒頭で紹介したやつ。「失敗したぁームギャー!おうち帰る!」
行動化:抑圧された衝動や葛藤が問題行動に。「盗んだバイクで走りだし自由になれた気がした」
投影:自分の気持ちではなく、他人のものだと思い込む。「私はどうも思ってない。あの人が私を避けているんです」
取り入れ:投影の逆で、他者を真似する。「いつやるの?今でしょ!」
レベル3 神経症的防衛
悪影響は少ない、普通の成人でも良く見られる防衛機制。ただし重度になれば話は別。
合理化:冒頭で紹介したやつ。「おやつ食べられなかったけど、ダイエットになったから良いのだ」
抑圧:冒頭で紹介したやつ。否認と違い、思い出すことは可能。「そういえば若い頃、ミュージシャンを目指してたんだ俺は…」
逃避:いわゆる現実逃避。「テスト勉強しなきゃいけないのに、部屋の片づけを始めてしまった」
反動形成:ストレスに対抗するため反対の行動に走る。「あの人のことが大嫌いなハズなのに、優しくしちゃう」
知性化:理詰めで考えて感情を切り離そうとする。「納得がいくまで説明してもらいますぞ」
隔離:強迫性障害でみられる。確認行為や強迫観念で、本来の不安・不満を切り離そうとする。
レベル4 成熟した防衛
これまでの3つと違い、無意識ではなく意識的に行われる。精神的な健康を保ちながら人間関係・社会生活をより良いものに変えていく原動力となる。
昇華:冒頭で紹介したやつ。「世の中への不満を原動力に小説を書いてみた」
同一視:他人の良いところを取り入れつつ自分自身も高めていく。「自分の夢を、子供が実現してくれたのを誇りに思います」
補償:他のことで成果をだして埋め合わせる。「プライベートでうまくいってない分、仕事に打ち込むぞ」
まとめ、考察
人は誰でも何かしら不満を抱えて生きているもの。誰かが、もしくは自分自身が、傍目から見ると理不尽な言動で周りを困らせている…それは防衛機制なのかもしれません。今まさに、大きな不安や不満で追い詰められているサインなのです。
不安や不満に気付き、一緒に解決し、時には成熟した防衛機制を目指していきましょう。
以上。
※参考資料サイト
ジョブデポ ナースのヒント 防衛機制と看護|基礎知識や11種類と具体例、看護の流れやポイント 2020.11.16
医療法人平成医会 コラム 苦手な人の心理と防衛機制 2021.01.25