医局日記

【精神医学】~解離性障害について~


解離性障害

※参考資料
厚生労働省 みんなのメンタルヘルス 解離性障害
I
CD-10(WHO)による診断基準など

解離性障害は、自分が自分であるという感覚が失われている状態。ある出来事の記憶がすっぽり抜け落ちていたり、まるでカプセルの中にいるような感覚がして現実感がない、いつの間にか自分の知らない場所にいるなど、様々な症状があります。これらの症状は、つらい体験を自分から切り離そうとするために起こる一種の防衛反応と考えられています。



解離性健忘

最近の重要な出来事の記憶喪失。事故、死別などトラウマ的な出来事が関係し、抜ける記憶は部分的。数日で戻ることが多いが、長期化するケースも無くはない。



解離性遁走(フーグ)

ある日突然失踪し、いつのまにか普通に旅している。これも数日で終わることが殆どだが、時には長期間、全く別の人生を歩んでいたというケースも。



解離性昏迷

昏迷(反応が無く、大きな声で「大丈夫ですかー!!?」と言われてやっと覚醒する状態)をきたす。呼吸や眼の動きは保たれていることから、眠っているとか意識障害に陥っているわけではない。ただ話せない、動けないだけ。



ガンサー症候群

質問に対する「的はずれ応答」が特徴的。ぼんやりとしていて、一見すると認知症のような状態。刑務所など閉鎖的な環境に居た人で発症する、拘禁反応の一種として知られる。



離人・現実感喪失症候群

自分自身の心、身体が自分のものでないような感覚となり、そして周囲は色彩と生命感を欠いて人工的に見え、「非現実的」に感じる状態。生きている感じがせず、「自分自身を遠くから眺めているみたい」と訴える。単独で生じるケースは稀で、うつ病、恐怖症、強迫性障害などと関連して生じる。臨死体験もこれの一種では?という説が。



多重人格(解離性同一性障害)

複数の人格をもち、それらの人格が交代で現れます。人格同士はしばしば、別の人格が出現している間はその記憶がない場合が多く、生活上の支障をきたすことが多くなります。人格はそれぞれ、独立した記憶、行動、好みを持っていて、殆どの場合「互いの人格の存在には気づかない」。発症初期の頃の人格の交替は、突然に起こる。



その他、要点など

解離性障害のタイプには他にも、「身体が思うように動かなくなる」「感覚が変になる」「けいれんが起きる」など様々な症状をきたすことがあります。
いずれの症状においても、常に注意しなければならないのが「鑑別疾患」。ストレスで不思議な症状が出ている…と思いきや、脳梗塞などの病気で本当に麻痺、意識障害が起こっているかもしれません。そうした重大な病気を見落とさないこと
(・ω・)「解離を見たら器質(本物の身体の病気)を疑え!くまなく検査せよ!」
と、研修医時代に厳しく指導されました私。

他の精神疾患との鑑別も重要です。「現実感が無い」「自分が自分でない」といった自我障害の症状は、統合失調症など他の疾患でも起こることがあります。解離性障害は「ストレスが原因」であり、ストレスを取り除き安心を得るのが最大の治療ですが、他の疾患であれば治療方針も変わってくる可能性があります。よく観察し、よく話を聞き、正しい診断に繋げましょう。


以上。