医局日記

【精神療法】~内観療法~


内観法.comより


~帰省したとき、父母にきちんと「ただいま帰りました」と頭を下げ、仏壇のある家なら線香でもあげてから旅装を解いてほしい。これは親から心理的に離乳するためのイニシエーション(儀式)である。大人というのは、人にして返す能力がある人のことである。帰省の楽しみを知りませんという人がいたら、内観研修所で一週間すわってくることを勧めたい。観の転換が起こるはずである。~


内観療法について紹介します。



内観療法

「吉本伊信」らが1940年代に開発した自己観察法。「悟り」を開くことを目的とし、「いかなる境遇にあっても感謝報恩の気持ちで幸せに日暮らしできる」ために行います。

内観者は6泊7日の「集中内観」を基本とし、内観研修所に宿泊し、「内観三項目」の「お世話いただいたこと」「して返したこと」「ご迷惑かけたこと」を母からはじめ、父、兄弟姉妹など、これまでの人生に関わった方々を順々に調べ尽くします。朝6時から夜9時まで、トイレやフロの時間も「1分1秒、惜しんで内観する」。その間、面接者が1-2時間おき、1日に8-10回、約5分の面接を繰り返します。

内観三項目を想起し、主観的および客観的に自己観察(セルフ・モニタリング)を行うことにより、「自己発見」へ至ります。その際、母性的な「恩愛感」の庇護のもとに父性的な「自責感」を深めることで、「我執から解放」されることを特徴とする、東洋・日本ならではの心理療法です。


集中内観のやり方について(内観法.com)


屏風。
部屋の一隅に立てられた二つ折りの屏風の中に座り、ひたすら自分自身を見つめ続ける。
他人に対して自分のした行為を、相手の立場に立って反省する。
内観中は、原則として、起きてから寝るまでの間、屏風の中で情報を遮断した状態で過ごすため、新聞・ラジオ・テレビ・携帯電話はもちろん、面接者以外の他の内観者と一切話をしてはいけない


自分史を振り返る。
自分史をめくるように、年代順に事系列順に。身近な人を一人ずつ。
原則として母から始め、母の次は父・兄弟・姉妹・配偶者・子供・友人…といった具合に。
あらゆる人に対しての自分を時間のある限り調べていく。
起きている間中、食事をしている時でも入浴中でも一分一秒を惜しんで内観する。



思い出す。
その人に対して、自分はこれまでどういう態度や行動をとってきたかを、3つのテーマで思い出す。
(1)「していただいたこと」
(2)「して返したこと」
(3)「迷惑をかけたこと」
(このテーマは、最も重要かつ困難なので、特に重点を置いて調べる)



正座。
面接者が屏風の前に正座をして、合掌・礼拝をする。面接者が屏風を開けて、内観者に「ただいまの時間、どなたに対して、いつのご自分を調べて下さいましたでしょうか」と問う。
面接が終わると、面接者が「ありがとうございました」と結び、再度お互いに礼をして屏風が閉じられる。


…なんかすごい。(・ω・)


Q&A

Q.内観法は宗教ですか?
A.内観法は宗教ではありません。内観をするとわかることは、「自分は何者か」ということです。

Q.やることによって、かえって状況が悪くなることはありませんか?
A.内観法に従って内観した場合、する前より悪くなった例は聞いたことがありません。

Q.一週間もずっと坐っているだけだと身体が鈍ってしまうと思うのですが?
A.不思議なことに、かえって身体が元気になり、不具合だった関節や腰痛が治ったり、身体中に力がみなぎり活き活きとしたりします。


まとめ

森田療法(12月21日の日記参照)と同じく日本オリジナルの精神療法(心理療法)。入院森田療法と同じく、集中内観は一定期間、日常生活から離れて行う必要があります。実際に治療として取り入れ実践している医療機関は少ないかもしれませんが、世界的にもそれなりに知名度はあるとのこと。

(1)「していただいたこと」
(2)「して返したこと」
(3)「迷惑をかけたこと」

自分自身を責め過ぎている人。他人のせいにしがちな人。自分自身の人生を、内観療法の3つのキーワードで振り返ってみると良いかもしれません。

「病気を治す」という西洋医学の観点とは異なり、「自分自身を成長させ、乗り越える力を身につける」というのが東洋医学のアプローチ。全ての人に有効とは限りませんが、いろんな考え方、着眼点、を知ることで、きっと役に立つときが来るでしょう。

以上。