医局日記

【精神医学】~発達障害~

大人の発達障害について

発達障害とは

最近、うつ病や不安症などの原因や会社や人間関係で困難をきたしている人の原因として注目を浴びるようになってきた疾患概念です。発達障害者支援法により定義付けられ、主に
①広汎性発達障害
②学習障害(LD)
③注意欠陥多動性障害(ADHD)
の3種類に分類されています。自閉症やアスペルガー症候群は①の広汎性発達障害に含まれます。


自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder)

これまでアスペルガー症候群、高機能自閉症、早期幼児自閉症、小児自閉症、カナー型自閉症など様々な診断カテゴリーで記述されていたものを、「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」の診断名のもとに統合されました。

特徴
対人関係・社会性の障害…集団に馴染めない、いわゆる「空気を読む」ことが苦手。
コミュニケーションの障害…自分のことばかり話す、自覚がないまま失礼な物言いをしてしまう。
パターン化した行動・想像力の障害…こだわりが強く、物事の変化に対応するのが苦手。


注意欠如・多動性障害(Attention-Deficit / Hyperactivity Disorder)

特徴
衝動性…熱しやすく冷めやすい、思いつきで行動しがちで待つことが苦手。
不注意・多動…忘れ物が多い、気が散って仕事に集中できない。


限局性学習障害(Specific Learning Disorder)

特徴
「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」という能力のうち、極端に苦手な部分がある。
他の部分は問題なくても「メモをとるのが苦手」「電話での対応が苦手」「数字や計算が苦手」など。



発達障害者支援法とは?法律の内容や支援対象、実際に受けられる支援についてご紹介します 2019/10/02

障害は「個人の問題」ではなく「社会の問題」
2016年の発達障害者支援法改正で、発達障害のある人が社会生活を営む上で直面する不利益は、本人ではなく社会の責任であるという考えが明確に示されました。つまり「車椅子の人が階段を上れないのは個人の障害」ではなく、「エレベーターやスロープを用意しない社会の障害」であり改善されなければならない、という考え方と同じ。


以下、私見を交えた解説

10~15年ほど前(私が医学生だった頃)まで、「自閉症」には「アスペルガー(知能は高い)」「カナー(知的障害を伴う)」という区別があったり、「自閉症」と「ADHD」は対照的な障害だから合併することはない、などと言われていました。現在は「スペクトラム」という概念に変わり、そもそも正常と自閉症との間に線引きは出来ない、と言われるようになりました。自閉症とADHDが合併することは珍しくないという事も分かってきました。

発達障害は「社会の問題」なので、症状を治すことが目標とも限りません。症状があっても無くても気にせず生活・仕事できる、というのが理想的です。まぁ誰しも、環境や相性の問題で「空気読んでよ!」「ちゃんと話聞いてよ!」と怒ったり怒られたりするもの。相手に責任を負わせるのではなく、「どうすればお互い気持ちよく過ごせるかな」という視点で問題解決をはかりましょう。アサーションとか(10月02日の日記参照)是非知って欲しい。きっと役に立ちます。

治療者においては、ちょっと気を付けておくべきポイントとして「鑑別疾患」を忘れないようにしましょう。「こだわり」は自閉症だけの特徴ではありません(1月7日の日記参照)。別の疾患による症状としての思考障害(7月27日の日記参照)が背景にあるかも。ADHDの「熱しやすく冷めやすい」特徴も、もしかしたら双極性障害(躁うつ病)の症状かもしれません。正しく診断し、正しい治療に繋げることが精神科医療従事者の責務です。


以上。