医局日記

【認知症】~認知予備力とは~


アークメディア 臨床精神医学 第49巻第5号 発行日:2020年05月28日

認知予備力と認知症予防 (大阪河﨑リハビリテーション大学)武田 雅俊
教育と認知症予防 (大阪市こころの健康センター)喜多村 祐里
運動と認知症予防 (国立長寿医療研究センター)島田 裕之


認知予備力

脳の老化による機能低下に拮抗して、認知機能を維持する力。
脳にアミロイドβが沈着したり、脳が委縮しても、認知予備力が高い人では不思議なことに直ぐには認知症にならず、発症時期を遅らせることが出来るようです。


スタッフブログ 2019.02.22 認知症の研究について


Nun Study

「100歳の美しい脳」(David Snowdon著2004年)で紹介されたnun-studyという研究報告です。アメリカの修道女(Nun)678名(75歳~102歳)を対象に、毎年認知テストを行い、その経過を調べました。さらに被検者が死亡後、解剖して全員の脳の状態を記録しました。すると、脳が委縮しアルツハイマー型認知症の状態であるのに、まったく認知症の症状が出なかった人が8%いたそうです。
8%の人たちの共通点は、毎日規則的で役割を持った生活をしており、そのような生活が病変に打ち勝つことを示唆していたと報告されています。


上記雑誌によると、認知予備力の要素としては…

・児童期の認知機能が高い(8歳頃が重要らしい)


・思春期に穏やかな成熟した性格であった


・教育歴、学歴が高い


・社会経済的地位が高い


・健康(高血圧、糖尿病、難聴、喫煙、飲酒などは認知症リスク)

とのことでした。



運動
健康に良いから当然、認知症予防にも繋がる…かと思いきや、今のところ証明されていないようです。運動といっても激しいものから軽いものまであるし、どの程度が適切な運動量・運動習慣なのか、これからの研究に期待です。


まとめ

結論として「よく勉強し、健康に気を遣い、心にゆとりを持って、たくさんの人と接する」ことが大事。認知症の予防に役立ちます。

以上。