【精神症候学】~不安とは~
弘文堂 精神症候学 <第2版>
ISBN:978-4-335-65141-0
不安(Anxiety)
感情の量的障害に分類される症状。(質的障害の代表は気分変調、情動不安定、など)
対処不決定の漠然とした恐れの感情。(対象がはっきりしてるなら「恐怖」。)
病や死への恐れ、生活上の諸々などへの不安は、正常なもの。
病的な不安になると、刺激が肥大化して、客観的な危険に釣り合わないほど強く・反復してあらわれる。
分離不安
乳幼児が依存対象から離されるときに示す不安。泣きやすく、睡眠障害、無表情、反応減退などをきたす。
パニック発作
動機、発汗などの自律神経症状を伴い、数分から数十分で収まるものの、過呼吸を起こすことも。
全般性不安
不眠、注意集中困難などをきたす慢性の不安状態。理由なく生じることもある。
恐怖(症)(Phobia)
こちらは思考内容の障害、に分類される。恐れる理由が無いと分かっていても、特定の対象や状況を不釣り合いに強く恐れ、避けようとする。
対象を挙げるとキリが無い(金属恐怖、不潔恐怖、血液恐怖、毒物恐怖、広場恐怖、閉所恐怖、空気恐怖、水恐怖、醜形恐怖、対人恐怖…)ので省略。
注意点として、あまりに恐れ過ぎる、異様に避けたがる…結果、妄想へと発展する可能性がある。別の病気の前駆症状として特徴的と言われているものもある。例として、自己臭恐怖は若年発症の統合失調症の初期に多い。加害恐怖が発展すると罪業妄想、うつ病の症状に変化。
不安、恐怖への対処法、治療法
まず恐れの強さが「不釣り合い」であるこを自覚するのが第一歩。精神療法、心理療法、いわゆるカウンセリングが主となります。
しかし日常生活すらままならなくなったり、うつ症状を伴っている場合には、薬物療法を開始すべきと考えられます。主に使われるのは「抗不安薬」「抗うつ薬」など。抗不安薬については後日、改めてまとめていきます。
まとめ
不安、恐怖という感情自体は、人が生きていく上で必要なもの。危険を予測し、回避することで人は成長していく。…けど、「恐くて生きていけない」となってしまっては本末転倒。そうした病的な不安、恐怖は、精神症状とみなして早めに対処、治療すべきでしょう。
精神科医療従事者の皆さんにおいては、「不安で…」と患者さんから相談を受けることが日常的と思われます。傾聴し、共感するのは勿論ですが、こうした不安が「正常なものか?病的なものか?」という評価・判断を忘れないよう心がけましょう。正常な感情に対して薬物治療を急ぎ過ぎるのは考え物ですが、病的な不安を「気にし過ぎですよー」と楽観的に捉えて受け流してしまうと、どんどん増悪し抑うつ状態となってしまうかもしれません。
治療者が症状の有無・重症度を正しく見極め適切に対処できるようになれば、患者さん側としても一層安心して話せます。信頼関係が深まれば、相談できたという安心自体で不安が軽減、という治療効果も期待されます。
頼られる、頼りになる精神科医を目指していこう!(・ω・)
以上。