【リハビリ】~作業療法(Occupational Therapy)~
精神科病院においては必ずといって良いほど導入される、作業療法(OT)。学生さんや研修医さん達には馴染みが無いかもしれないが、精神科のリハビリテーションにおける大切な要素ですので、紹介。
「作業療法との出会い」~その取り組みと姿を追う~(YouTube:一般社団法人 日本作業療法士協会)
厚生労働省 理学療法士及び作業療法士法 (昭和四十年六月二十九日)
第二条2 「作業療法」とは、身体又は精神に障害のある者に対し、主としてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工作その他の作業を行なわせることをいう。
理学療法(PT)との違いは?
理学療法士は運動機能回復のスペシャリスト。立ち上がる、起き上がる、歩く、寝返るなど、基本となる体の動作のリハビリテーションを行います。例えば、平行棒を使っての歩行訓練、ベッドから起き上がる動作の訓練などのリハビリテーションがあげられます。
作業療法士は生きがい支援のスペシャリストです。日常生活をスムーズに送るための応用的動作のリハビリテーションを行います。ここで言う応用動作とは「食事をする」「顔を洗う」「料理をする」「字を書く」等の生活する上で必要不可欠な動作の事を指します。理学療法士が体の大きな動きのリハビリテーションを行うのに対して、作業療法士は手の動作や指の細かい動作などのリハビリテーションを行う場合が多いです。 また、作業療法士ならではの特徴として、精神分野のリハビリテーションを行うという事があり、精神科の病院などで活躍する作業療法士もいます。
急性期、回復期、生活期、といった段階ごとに、必要となる機能の維持・回復をはかっていきます。
各病院における、作業療法の実際(写真とか)
精神科作業療法 個人OTでの手工芸品
病院、施設によって違いはあると思いますが、「工作」「体操」「ボードゲーム」「カラオケ」あたりが定番っぽいです。楽しそう(・ω・)
精神医学 60巻8号 (2018年8月) 特集 作業療法を活用するには
わが国の作業療法の源流は、呉秀三がドイツより帰国し、拘束具を廃して実施した移導療法である。1916年に『日本内科全書』を執筆しており、この時点で作業療法の原点というべき内容が多く含まれている。
「精神的作業は、精神的苦痛を緩和し、苦痛なる観念を漸次に記憶外に駆逐し、有利の影響を与えることを得るものなるは確実なり。吾人の精神は必ず、一定の作業を要求するものなり。職業もなく、娯楽もなきときは、その人の注意は自己の肉体の状況にのみ傾注せられる。」
「作業と称するは、明瞭なる目的をもって意識の命ずるところによりて精神的に活動することをいうなり」
「精神的作業療法の一方として受容性作業と名づくべきものあり。講和を聴き、彫像図画を鑑賞する。他人の作業を引き受けて精神を働かすものなり。」
「何か作業に集中する」「音楽鑑賞などを楽しむ」という精神活動が治療に有効である、ということ。現代人としては当たり前に感じますが、呉先生の時代(11月20日の日記)、それまでの精神科治療と言うのは私宅監置や身体拘束という、ひたすら患者さんを動かさない、活動させない、という内容に偏っていました。「いやいやおかしいでしょ!」と声を上げ、改革を実行した呉先生は偉いのです。
しかし1975年、作業療法の保険点数化にあたっては精神科医からも反発がありました。「強制的に入院させられている患者さんも居るのに、患者さん自身に身の回りのことをやらせておいてお金取るとは何事じゃ!(`Д´)」という意見。作業療法の発展、普及とともに現在ではそうした声は聞かなくなりました。
上記雑誌において、各論文を書かれている先生方の共通意見として、「その人に合わせた計画が大事」ということ。その人の能力、できること、やりたいこと、生きがい、目標、環境、…。その人をよく観て、意見を聞いて、最適な作業療法の計画を立てていくことが求められます。「みんな同じ」よりも「人それぞれ」が求められる精神科において、作業療法は特にその要素が大きいと言えるでしょう。
(・ω・)実際、作業療法士さんの書く「計画書」、凄いっす。患者さんの得意なところ、良いところ、できるところ、すっごく丁寧に分析しています。凄いっす。
まとめ
佐賀大学の精神科病棟&外来においては、作業療法は導入されていません。精神科においては大事な治療の一環なのですが、大学病院精神科という特殊性ゆえ、そこまでカバーできておりません…残念。
他病院、他施設にて見学、参加する機会があれば是非。
以上。