ゼロリスク信仰を捨てることの勧め
なかなか精神保健指定医のレポートの結果が来ません。口頭試問に進んだ場合でも、今のコロナの状況を考えると口頭試問が予定通りに行われるかどうか、という心配を抱えている前管理人であります。
口頭試問は2月末に東京と、3月半ばの大阪のどちらかで行われる予定ですが、とうとう首都圏では緊急事態宣言が出ちゃいましたしね…。そうこうしているうちに関西圏でも緊急事態宣言を検討しているとか。
心配してもどうにもならないことなので、とりあえず今やるべきことに集中していきたいと思います。今週は入院してきたときは「これは転院かな…」と覚悟していた患者さんが自宅に退院していきました。本人、家族、病棟看護師、そして私を始め主治医チーム、皆が満足感を得られたんじゃないかと思います。
さて、緊急事態宣言が出てしまったように、今年に入って毎日のように新規感染者が最多更新というニュースが流れています。
私も佐賀県の感染状況は毎日チェックするようになりましたが、やはり3密になりやすい状況が問題なようですね。
よく言われるのが「移動自体が感染リスク」だと言うことですが、私は移動自体はさほど大きな問題ではないと思っています。通勤列車でクラスターが発生したという話は聞いたことがないですからね。
ただ、旅行先や帰省先では人はハメを外しやすいです。旅先で気分が高揚して、知り合いなどと会ったらつい盛り上がってしまう。その盛り上がりの場には酒が付きもので、酒が入るとまた気が大きくなってしまう。
その結果として感染が蔓延してしまうのだと思います。
逆に言えば、3密の状況を避けて、基本的な感染対策をしっかりやっていれば、リスクは0にはならないまでも、0に近いところまで持って行けると思います。
しかしどうも日本人はリスクが完全に0にならないと気が済まない人が多い気がする。日本の大企業が思い切った改革ができず、国際競争力が低下しているとよく言われますが、これもちょっとしたリスクを過度に恐れているからでしょう。
コロナ渦で話題になった自粛警察や帰省警察もゼロリスク信仰から来ているものだと思います。
先ほど「3密の状況を避けて、基本的な感染対策をしっかりやっていれば、リスクは0にはならないまでも、0に近いところまで持って行ける」と書きましたが、0に近いところから0に持って行こうとするには多大な労力を使います。というより0にするのは不可能です。
0に近いところから0に持って行こうとして、神経をすり減らして精神的に病んだり、周囲との衝突を生むようではコロナにかかる以前の問題と思います。
精神科医の立場としても、本当にゼロリスクを求めるのであれば、薬物療法も心理療法も出来ません。
薬物療法はどんな薬でも副作用のリスクは0ではないし、心理療法でも予想しないところで患者さんが動揺することもあります。
もちろん副作用のリスクは説明するし、動揺が予想される場合は事前に「踏み込んだ話をしますが大丈夫ですか」などと確認をしていますけどね。
今日の日記の一番最初にも書きましたが、心配してもどうにもならないことは心配しない、そしてゼロリスク信仰を捨てる。
コロナ渦で何かとストレスが溜まるこのご時世ですが、この2つのことを気にかけるだけでも、気持ちはだいぶ楽になると思います。
今日は管理人の先生を見習って、少し精神科医らしいことを書いてみました。