医局日記

【精神症候学】~妄想の種類まとめ~


弘文堂 精神症候学第2版
ISBN 978-4-335-65141-0

第II部 異常体験 F.思考の障害 より

妄想(delusion)は、思考内容の障害で、主として自分に結び付いた病的な誤った確信。自分自身に関連した(自己関係づけ)、事実無根の内容にもかかわらず、主観的な確信は揺るがず、どのような反証にも決して屈しない(訂正不能)。妄想観念ともいう。
知識・教育不足から生じた誤解、偏見、特定の文化・思想・宗教における迷信や判断の誤りなどは妄想と呼ばない。


まずは妄想内容による分類として「被害妄想」「微小妄想」「誇大妄想」「被影響妄想」から順にまとめていきます。


被害(迫害)妄想(delusion of persecution)

他人から嫌がらせをされる、危害を加えられると思い込む。統合失調症に多く、対象が複数・不特定で変わりやすい。他にも、うつ状態、器質・症状・中毒精神病でもみられる。

関係妄想「タイミングがぴったり合うので偶然とは思えない」
被毒妄想「毒を入れられている」
注察妄想「周囲から監視されている」
嫉妬妄想「相手が浮気をしている」
もの盗られ妄想「物を盗まれる」


微小妄想(delusion of belittlement , unworthiness)

自己の価値や能力を低いと確信する。

貧困妄想「財産を失った」
罪業(罪責)妄想「重大な過失を犯した」
心気妄想「健康を害した」
疾病妄想「重い病気にかかった」
否定(虚無)妄想「自分の体や臓器、世界の存在、生死を否定する」
※コタール症候群「内臓が無い」「私はすでに死んでいる」
加害妄想「事故や出来事を引き起こしたと確信」


誇大妄想(grandiose delusion , megalomania)

自分の能力や価値を過大評価する。

血統妄想「高貴な家柄の生まれである」
恋愛(被愛)妄想「特定の有名人から愛されていると信じる」
発明妄想「世界的な発見・発明をした」
宗教妄想「天啓を授かった、預言者である、選ばれたものである」


被影響妄想(delusion of being influenced , control)

憑依(つきもの)妄想「何かが乗り移って自分が占領される」

変身妄想「自分がほかの何かに変わる」
獣化妄想「動物へ変身する」
化身妄想「別人になる」


その他…妄想形式による分類

妄想気分「どこかいつもと違う」などの漠然とした不安・緊張感。
※世界没落体験「この世の終わりがくる」などの不安、宗教的高揚感。
妄想知覚「犬が前足を上げたのは天の啓示だ」など、誤った意味づけ。
意味妄想「あるものがある意味をもつ」という意味意識が病的に変化し、自分に結ぶ方向の意味づけとなったもの。
妄想着想「自分は王の子だ」「あとをつけられている」などを理由もなく確信する。
妄想追想「昔使っていたフォークの柄は、王族の証だったのだ」と、過去の出来事が新しい意味を帯びて思い出される。
説明妄想 幻聴などの異常体験から二次的に生じた被害妄想。


おまけ(私の経験など)

●恋愛は妄想である(!?)
(´・∀・)「精神分析の観点では…人間づきあいって実は「妄想」で成り立っているんです。あの人が好き、付き合ったりとか、互いの妄想が一致しているだけです」
Σ(・ω・)なんと

●妄想=訂正不能。
(´o`)「私は入院費を滞納しているのです、もう払いきれない借金があるのです」
(・ω・)そんな事ありませんよ、ほらこれ、領収書…
(´o`)「そんな偽物には騙されませんよ」
(・ω・;)だ、だめだった。信じてもらえない…

●妄想も、その人にとっては必要なこと
…以前、偉い先生との会話にて…
(-ω-)「そもそも妄想か否かなんて、誰にも証明はできないものじゃよ」
(-ω-)「誰にだって多かれ少なかれ、妄想的な考え方は存在するものだ」
(-ω-)「その人にとっては現実であり、自分を守るために必要なこと。だから”訂正するわけにいかない”のだ」
(・ω・)では妄想は、治らないものなのでしょうか?
(-ω-)「あっても無くても生活できれば良いのだ。治そうとしなくて良い」
(-ω-)「そのためにも妄想を否定すべきではない。その人にとって必要な考え方なのだから、尊重してあげることが大事なんじゃよ」
(・ω・)なるほど

客観的な視点を保ち、事実を把握することも大切ですが、精神科においては「主観的な体験」をいかに捉えるかが問われます。

勿論、相手を理解するためにも、まず自分自身を理解しようとする姿勢も大事。「わかってもらえない!」と感じたとき…自分の考え方、視点を変えてみたら解決するかも?


以上。