医局日記

【精神療法】~支持的精神療法入門~


動画で学ぶ支持的精神療法入門 [DVD付]
ISBN 978-4-260-02081-7


基礎中の基礎!とか書かれているし、そろそろ紹介しておきます。


定義

支持的関係、支持的かかわり…関心を示すこと、具体的な手助けを行うこと、勇気づけ、楽観主義などのアプローチ。

支持的療法…患者に精神的な安らぎを与えるが根底にある問題自体は扱わない、非特異的なサポート。

支持的精神療法…症状を改善し、自己評価や自我機能、適応スキルの維持や再獲得、改善などの直接的な手法を用いる力動的な治療法。支持的-表出的精神療法の連続線上に位置する。

表出的精神療法…治療関係の分析を行い、本人が気づいていない感情や思考、欲求、葛藤の洞察を深めるための様々なアプローチの総称。


(・ω・)…冒頭のページ、定義から既に難しい。どうやら「精神分析」が大流行していた時代、根掘り葉掘り聞きこむことばかりに熱中せず、患者さんが安心して話してもらうことを優先しましょ、ということで生まれた技法らしい。理想的には、患者さんが話しながら自分で問題点に気付き、自分で解決できるよう誘導していく。ただ、その技法を磨くためにはある程度の「精神分析」のスキルが前提ですよ、という事が言いたいのだろう。


基本

精神分析とは対照的に、支持的精神療法は意識できる問題や葛藤を扱う。背後にある無意識の葛藤、パーソナリティの歪みは扱わない。治療者と患者の関係は、サービス提供者とクライエント、として扱う。クライエントである患者様を十分に尊敬し、関心を向け、誠実に対応し、目的を成し遂げるために努力しましょう。友人、恋人みたいになるべきではない。特に治療者の方から長々と話している場合は要注意。患者さんとの面接を「楽しんでいる」のだとすると、それは患者さんを搾取しているのかも。治療者は常に中立を意識しましょう。

精神療法における会話と、日常生活における会話は異なる。日常の普通の会話は、話す番、聞く番が入れ替わっていくが、精神療法においては「いつも患者が話す番」なのである。治療者側から質問することもあるが、立て続けに聞くのは控える。常に患者さんに話してもらうよう意識しよう。患者さんの話を深めるかたちの質問であれば、関心や注意を示していることが伝わり、より支持的。(「何でそんな事したの?」とか煽るような感じはダメだけど。)

「例えば、どんなことでしょうか」と聞いていけば間違いはない。素晴らしいフレーズである。

自己評価を維持し、高めるよう促す。これが支持的精神療法のキモ。まず治療者自ら、患者さんを受け入れ、関心を示そう。ただ、言葉遣いがとっても大事。「ちょっと何言ってるか分かりません」→「私の考えを整理するため、もう少し詳しく聞かせていただけませんか」と、同じ内容でも表現の違いで印象も変わってきます。特に、

「なぜ、どうして」で始まる言葉は相手を怒らせやすいため要注意。

「そのとき、何を感じたのでしょう?」などと聞き方を変えましょう。



まとめ

とりあえず冒頭の部分、基本的な内容のみ紹介しました。序盤だけでなく後半の専門的・特殊なケースにおいても具体的な会話の例、を中心に書かれており、その点は読みやすいです。…が、読み進めていくと心理学の専門用語も結構出てくるので、しっかり習得しようとするとそれなりにヘビーな内容。やはり専門家向けに書かれた本であるのは間違いない。

もともと話を聞くのが好き、聞き上手な先生であれば、ある程度は意識せずとも体得しているかも。「実はあんまり自身が無い」「話の聞き方を、専門技術としてきちんと学びたい」という先生には是非お勧めです。


以上。