【雑誌紹介】~精神疾患を描いた漫画~
臨床精神医学第48巻第3号 特集/精神医学と芸術の多様な接点 発行日:2019年03月28日
精神医学・精神疾患を描く文学・マンガ (京都大学)三嶋 亮・他 より
医学雑誌で紹介された漫画についてまとめました。
人間仮免中 卯月 妙子
ISBN 9784781607412
出版社 : イースト・プレス
夫の借金と自殺、自身の病気と自殺未遂、AV女優他様々な職業…波乱に満ちた人生を送ってきた著者が36歳にして出会い恋をした、25歳年上のボビー。男気あふれるボビーと、ケンカしながらも楽しい生活を送っていた。そんなある日、大事件が起こる――。年の差、過去、統合失調症、顔面崩壊、失明……すべてを乗り越え愛し合うふたりの日々をユーモラスに描いた、感動のコミックエッセイ!
~退院後から終盤にかけての展開こそが一番の見所であり、やや冗長にも思える前半の日常描写も、後半の心揺さぶられる展開に至れば、必要な下地であったことに気づかされる。2012~2013年に複数の漫画賞を受賞。2017年には続編の「人間仮免中つづき」も発刊され、こちらも漫画賞を受賞している。~
統合失調症日記 木村きこり
ISBN 9784821144778
出版社:ぶんか社
高校生のある日、急に統合失調症になった作者の日常は、普通とは少し変わったものになってしまいました。「姿のない3人の人間が自分に話しかけてくる」(幻聴)、「いるはずもないカラスが家の中に現れ、のど元をつつかれる」(妄想)(幻痛)など、発症時の自身に起こった出来事をセキララに描くコミックエッセイ! 100人に1人弱が発症するにもかかわらず、なじみの少ない統合失調症を、当事者の目線で描いた1冊です!
~他の作品に比べてデフォルメされていない人物描写などから作り出される独特の雰囲気がとても印象に残る。いわゆる「生の表現」は読み手に強く訴えかけ、著者の感じているであろう生きづらさを、言葉にならない部分を含め共有させてくれる。~
統合失調症だけど、がんばって生きています みえっち
ISBN 978-4-286-17067-1
出版:文芸社
たくさんの“ごめんなさい”と“ありがとう”。憧れていたOLとなったみえっちだが、彼女の身に突然、想像もしなかった事態が!! 「悪口を言われていないのに気になる」「盗聴器を仕掛けられているかも」──そんな不安感に襲われたみえっち。病気と分かり、そこから、苦難の道が待ち受けていたが……。統合失調症との闘病の日々を綴ったコミックエッセイ。
~幼少時代から漫画家を志し、20歳頃には漫画賞の受賞経験もある方。著者の生活が10年間にわたりフォローされている点に特徴があり、特にリハビリや福祉制度の利用についての解説、そして恋愛や結婚に関する話題は当事者・支援者にとっても参考になるだろう。~
こころを病んで精神科病院に入院していました。安藤 たかゆき
ISBN:9784040677385
出版社:KADOKAWA
吃音、幻聴、リストカット——-こころを病んで病院に搬送された私は統合失調症と診断されました。最初の晩は少し泣いたけど、こころを病んだ優しい人たちが集まるここでの暮らしはとても穏やかで----。
~今回紹介した本の中で唯一の男性執筆者。精神科病院の建築やシステムなどに重点が置かれているのが特徴のひとつ。病棟の見取り図、窓の構造、保護室などについても詳しく図示されている。~
強迫性障害です! みやざき明日香
ISBN978-4-7911-0975-3
出版:星和書店
強迫性障害をもつ著者自身の半生を描いたコミックエッセイ。ドアノブを壊すほどガチャガチャと戸締まりを確認してしまう「確認強迫」、物が捨てられない「保存強迫」、人にケガをさせていないか気になる「加害強迫」、苦手な数字を見ると動けなくなる「縁起強迫」、など様々な症状をもつ。発症のきっかけ、精神科にかかるまでのいきさつ、診断と通院、漫画家として鮮やかなデビューを飾るも症状と苦闘する日々……。何を「汚い」「怖い」と感じるのか。強迫性障害をもつ著者ならではの感性で、悩みや症状、日常を赤裸々に描く。
~著者は既に一般紙での連載経験もある方で絵や構図、漫画表現手法は洗練されており、視覚的に分かりやすい。強迫行為、強迫思考や日頃から苛まれている様が具体的に描写されており、医療従事者、支援者にとっては患者さんを理解するうえでの助けとなるだろう。~
精神病棟入院記 岡野く仔
ISBN-13 : 978-4860721343
出版社:まんだらけ
売店での買い物、お風呂など病院での日々のルール、外出許可、外泊許可とは・・・。そして、入院中に知り合った女性二人はどんな人たちだったのか。退院後も紆余曲折しながら、社会復帰を果たした作者。どのようにして病状を抑え、快復したのかを独自の視点で描き綴った作品。
※web漫画。上記サイトで無料で読めます。
~今回紹介した中では最も家族力動の読める作品である。リストカットに対する両価的な心情の解説は自傷を行う当事者の内面を支援者が理解する一助となるかもしれない。~
史群アル仙のメンタルチップス~不安障害とADHDの歩き方~ 史群アル仙
ISBN:978-4-253-10696-2
出版社:秋田書店
自分が何者か。それすら分からず悩み、もがき、苦しむ。街中徘徊、自殺未遂、誤診、精神病棟入院…。そんな壮絶な日々を送りながら、彼女は生きる。現在進行形で様々な症状と向き合う著者の衝撃エッセイ。
~ADHDならではの「自分だけ上手くいかない」達成感や自己不全感が表現されており、ほどよい距離から支援してくれる人々との出会いと関りも感動的に描かれている。~
アル中ワンダーランド まんきつ
ISBN 9784594072469
出版社:扶桑社
実はアル中だった!?可笑しく切ない事件の日々
ブログ『オリモノわんだーらんど』で注目を集めた漫画家まんしゅうきつこは、その陰で酒浸りの日々を送り、気づけばアル中に……。可笑しくも切ないアル中の日常を漫画化!
~底つき体験から治療の決意と挫折、断酒会参加とひとすじの希望へと、アルコール依存症闘病記としては標準的なストーリーが進行するのだが、エピソードごとに核となるダークなギャグ要素が備わっており、どこを読んでも爆笑できる稀有な当事者モノに仕上がっている。~
※ついでに紹介
やたら下ネタが多め、という点では人を選ぶかもしれないが、精神科・心療内科を紹介する漫画作品としては質・量ともトップクラスの作品。専門的な内容をギャグを通して分かりやすく解説しており、一般の方が読んでも楽しめる。現在もweb上で不定期連載されており、精神疾患・症状など全ジャンル網羅しつつある勢い。もはや精神科の教科書レベルであり、学生さんは教科書買うよりこっち読んだ方が勉強に役立つ(と思う。たぶん)。ただし、やたら下ネタが多めである。
いつのまにかアニメ化していた。第1話、YouTubeで無料公開されています。
以上。