医局日記

【精神医学】~パーソナリティ障害~


林直樹先生に「パーソナリティ障害」を訊く 更新日時:2016年10月13日

パーソナリティ障害の基本的な特徴は、認知・行動特性の著しい偏りです。従来からその特性は、一般的な特性(平均値)からの違いが著しいもの、言い換えるなら、一般の人々との間に本質的な違いはないけれども、程度の差が特に大きいという性質のものだと理解されています。
名称からの単純な推測によって、パーソナリティ障害は、「パーソナリティ」の障害だと誤解されることがあり、それを「性格が悪いこと」とか「回復が難しいもの」と見る向きがありました。しかしそれは、決して性格の問題ではありませんし、十分に改善することを期待できます。なお、2013年に刊行された米国精神医学会の診断基準(DSM-5)に収載されている診断基準の一つでは、パーソナリティ障害が「パーソナリティ機能の減損」であると明快に定義されています。

パーソナリティ障害にはさまざまなタイプがあります。(米国精神医学会の診断基準 DSM-5準拠)
※解説はMSDマニュアル プロフェッショナル版より転載。


A群~奇妙で風変わり~
妄想性パーソナリティ

他者の動機を悪意のあるものと解釈する,他者に対する根拠のない不信および疑念の広汎なパターンを特徴とする。
他者に秘密を打ち明けたり,他者と親密な関係を築いたりすることをためらうが,それは情報が自分に不利な形で使われるのではないかと懸念するためである。

統合失調質(シゾイド)パーソナリティ

一般的無関心ならびに自分の対人関係における感情の幅の狭さの広汎なパターンを特徴とする。
他者との親密な関係に対する欲求をもたないようにみえる。親しい友人または相談相手がいない。1人でいることを好み,他者との交流の必要がない活動および趣味(例,コンピュータゲーム)を選ぶ。

統合失調型パーソナリティ

親密な関係に対する強い不快感およびそのような関係を築く能力の低さ,認知および知覚の歪み,ならびに風変わりな行動の広汎なパターンを特徴とする。統合失調症に特徴的な脳の異常の多くを共有していることから,その病因は主に生物学的なものであると考えられている。
しばしば普通の出来事を自分にとって特別な意味をもつものと誤って解釈する(関係念慮)。迷信的になったり,自分に特別な超能力があり,出来事が起こる前にそれを感知したり,他者の心を読んだりすることができると考えることがある。
※なおICD-10においてはパーソナリティではなく、統合失調症圏に分類されています。


B群~演技的・感情的で移り気~
境界性パーソナリティ

対人関係の不安定性および過敏性,自己像の不安定性,極度の気分変動,ならびに衝動性の広汎なパターンを特徴とする。
孤独に対する耐え難さを有する;見捨てられることを避けるために死に物狂いの努力を払い,他者が救助または世話をしてくれるよう仕向ける形で自殺のそぶりをみせるなどの危機を生み出す。
他者に対する見方を急激かつ劇的に変える傾向がある。関係の早期には,患者は世話をしてくれる人や恋人になる可能性のある人を理想化し,多くの時間を一緒に過ごし,あらゆるものを共有するよう求める。突然,患者は相手が十分に気づかってくれないと感じ,幻滅する;そして相手をけなしたり,相手に怒ったりすることがある。この理想化から幻滅への移行は白か黒かという思考法(善と悪の分裂,分極化)を反映している。

自己愛性パーソナリティ

誇大性,賞賛への欲求,および共感の欠如の広汎なパターンを特徴とする。
自分の能力を過大評価し,自分の業績を誇張する。自分が優れている,独特である,または特別であると考えている。
賞賛を受ける必要があるため,患者の自尊心は他者からの肯定的評価に依存し,このため通常は非常に脆弱である。

反社会性パーソナリティ

結果や他者の権利を軽視する広汎性のパターンを特徴とする。
個人的利益や快楽のために違法行為,欺瞞行為,搾取的行為,無謀な行為を行い,良心の呵責を感じない。
行動に対する後悔の念がない。反社会性パーソナリティ障害患者は自分が傷つけた相手や(例,傷つけられて当然である)世の中のあり方(例,不公平である)を責めることで自分の行動を合理化することがある。彼らは人のいいなりになるまいとし,いかなる犠牲を払っても自分にとって最善と考えることをしようとする。このような患者は他者に対する共感に欠け,他者の感情,権利,および苦しみを馬鹿にしたり,それらに無関心であったりする。

演技性パーソナリティ

過度の情動性および注意を惹きたい欲求の広汎なパターンを特徴とする。
継続的に注目の的になることを求め,しばしば活発,劇的,情熱的でなれなれしく,新しい知人を魅了することもある。
しばしば不適切に誘惑的かつ挑発的な形で衣服を着用し,行動する。患者は自分の外見で他者に印象づけたいと考え,そのため自分の外見にとらわれていることが多い。
他者および最新の流行に容易に影響を受ける。非常に人を信用しやすく,特に,自分のあらゆる問題を解決してくれると考える権威者を盲信する。


C群~不安で内向的~
依存性パーソナリティ

世話をしてもらいたいという広汎で過度の要求を特徴とし,服従的でまとわりつく行動を生じる。
自分で自分の面倒をみることができると考えていない。患者は服従することで他者に自分の世話をしてもらおうとする。通常の判断を下す際に大量の安心および助言を必要とする。
自分が劣っていると考え,自分の能力を卑下する;患者はあらゆる批判や否認を自分の無能力の証拠と受け取り,さらに自信を失う。

強迫性パーソナリティ

結果的に仕事を遅らせたり,仕事の完了を妨げたりするような規律性,完全主義,およびコントロール(柔軟性の余地がない)への広汎なとらわれを特徴とする。
規則,詳細,手順,スケジュール,およびリストを重視する。その結果,計画や活動の要点が見失われる。このような患者はミスがないか繰り返し確認し,細部に法外な注意を払う。時間を有効に利用することがなく,しばしば最も重要な仕事を最後まで残してしまう。
感情の表現も厳格にコントロールされる。人付き合いは形式的な,堅苦しい,または真面目なものとなる場合がある。多くの場合,話すべき正確な内容を考えてからでないと話し出さない。論理および知性に重点を置き,感情的行動または表現行動に不寛容である。

回避性パーソナリティ

拒絶,批判,または屈辱を受けるリスクを伴う社会的状況または交流を回避することを特徴とする。
社会的交流を望んでいるが,自分の幸福を他者の手に委ねることを恐れている。このような患者は人との交流を限定するため,比較的孤立する傾向がある。
なんであれわずかな批判,否認,または嘲笑に対して極めて敏感である。自分に対する否定的反応の徴候がみられないか警戒している。患者の緊張した不安そうな様子のために周囲から嘲りやからかいを受けることがあり,それにより自信の喪失を強めてしまうようである。


診断
上記のような認知・行動の特性(症状)が比較的持続的であること、広い範囲の(複数の)精神機能の減損があること、多くの生活場面で症状が認められることが必要であり、さらにそれが他の種類の精神疾患によって説明されないことが条件とされています。

治療
精神療法(心理療法)が重要な役割を果たします。精神療法は、患者が治療者と協力して、問題への認識を深め、それへの対処法を築き上げる、自分の思いや気持ちを整える、といった作業を進めることによって克服しようとする治療法です。取り扱われる問題は多様なものになりますので、さまざまな治療アプローチが組み合わされて用いられることがあります。そして多くの場合、それらの治療アプローチをしばらく積み重ねることが必要になります。


まとめ

「パーソナリティ=性格なのだから治らない」「診断基準が”他の病気では説明がつかない”のだから、そもそも病気ではない」と誤解されがち。
ですが脳生理学的な異常との仮説もありますし、何より”パーソナリティ機能の減損”により生活に重大な支障をきたしているのは事実。
精神科領域においては、こうした障害を「改善が期待できるもの」としてとらえ、粘り強く治療にあたっていくことが求められます。
パーソナリティ障害+うつ病、など併存疾患がある場合も少なくないため、必要であれば薬物療法も用います。
勿論、大事なのは心理教育。そして周囲のサポート体制を整えること。焦らず、長期戦で、粘り強く。
主治医の立場になった場合、精神科医としての総合力が求められる疾患と言えるでしょう。

以上。