医局日記

【宇宙ネタ】~3,2,1,LIFT OFF!!~

ロケット打ち上げ動画を見ると元気が湧いてくる。



Space Shuttle Launch Audio – play LOUD (no music) HD 1080p
スペースシャトル打ち上げ動画は幾つかあり、これが一番人気。音質が良い。


1969 Apollo 11 Saturn V launch, 1969 TV broadcast
初めての月旅行。ゆーっくり浮かび上がっていく。
WikipediaによるとサターンVロケットの総重量は3,038,500kgとのこと。重い。


H-IIAロケット29号機(高度化仕様)打ち上げクイックレビュー | Launch of H-IIA F29 (H-IIA UPGRADE) Quick reviewed movie.
JAXA公式より。組み立てから発射台セッティングまでも収録。
淡々としたアナウンスだけど、リフトオフの瞬間は声のトーンが上がる。嬉しそう。



Falcon Heavy Test Flight

LIFT OFF!!YEAAAAAAAAAAH!!FOOOOO!!
2018年2月6日、アメリカSpaceX社、ファルコン・ヘビーのテスト打ち上げ。
29分30秒あたりからの「1段目ブースター2機が発射場に無事帰還」シーンで観衆の興奮は最高潮に。



おまけ
ロケット打ち上げ時のポイントについて解説しよう!


打ち上げ脱出システム(Launch Abort System)(Wikipedia)

アポロとかソユーズの先っぽに付いてるアレ。
燃料満載のロケットは僅かな故障で巨大な爆弾と化す。打ち上げ直後が最も危険な瞬間だ。
トラブルが発生した場合、直ちに最上段カプセルごと上空へと避難させる。

BBC NEWS JAPAN ソユーズ宇宙船の打ち上げ失敗、ロシア当局が原因調査開始 2018年10月12日
最近でも打ち上げ中の事故は発生している。
脱出システムが正常に作動したお陰で、乗組員は全員無事だった。


重心

JAXA宇宙教育センター かさ袋ロケットをとばそう
ロケットは重心が命。バランスが崩れると真直ぐ飛んでいけない。
前後左右対称の形に設計するのは勿論、先端-尾部も重要。
弓矢とか槍と同じで、先端側が重い方が安定する。


ロケットエンジンの基礎知識
ロケットエンジンの推進剤(Wikipedia)

メインエンジンは液体燃料。ケロシンとか液体水素とか。精密制御が可能。
ケロシンは燃費悪いけど常温保存できる。液体水素は燃費良いけど極低温でないと保存できない等扱いが面倒。

液体燃料に比べると燃費悪いけど、固体燃料は構造が簡単で安価に製造でき、保管も簡単。
ただし一度点火すると燃え尽きるまで止まらないので精密な制御は難しい。
固体ロケットブースター(SRB:Solid rocket booster)として、低空を脱するまでの使用が基本。
ロケットエンジンノズル(Wikipedia)

ラバール・ノズルという形状。で、形によって「地上向き」「真空向き」と性能が変わってくる。
適切に設計しないと「過膨張」「不足膨張」が起こり、効率が悪くなったり制御困難に陥ってしまう。
地上~低空では、大気圧(外部圧力)を押しのけ効率よく噴射し、重い機体を大気圏上層部まで運ぶパワーが要求される。
大気圏上層~真空中に到達したら、真空向きで燃費の良い二段目エンジンにバトンタッチ。


打ち上げ方向

人工衛星を載せたロケットは、なぜ東向きに打ち上げるのですか? より
ロケットを打ち上げる場合、東側に打ち上げることによって、地球の自転速度を有効に利用することができ、エネルギー的に効率がよくなります。
ちなみに、真西に打ち上げる場合の人工衛星の質量は、真東に打ち上げる時のほぼ2分の1の物しか打ち上げられなくなってしまいます。それほど地球の自転速度は、打ち上げる人工衛星の質量に影響しているわけです。


打ち上げ時刻

JAXA FAQ ~よくある質問~ H-IIBロケットの打ち上げ時刻はなぜ午前2時4分頃? より図
H-IIBロケットはISS(国際宇宙ステーション)軌道面が種子島宇宙センター上空にあるときに発射しなければなりません。
※増速ロス:例えば、打ち上げ時刻が10分前後するだけで、HTVがISSの軌道面に合わせるためには搭載した推進薬の大部分を使ってしまいます。


重力損失

Gについて -快適に宇宙に行くために- JAXAメールマガジン第248号(2015年7月21日発行)
ロケットはエンジンを使って空中に浮いています。仮にロケットエンジンを使って空中の一点に静止している状態を考えると、速度も高度も増えません。このように自重を支えるために推進剤が必要(無駄?)になることを重力損失といいます。重力損失は軌道に達するまでの時間が長ければ長いほど大きくなってしまい、それだけ推進剤を余分に搭載する必要がでてきます。つまり、重力損失を減らして効率的に打ち上げるにはなるべく短時間で、いいかえればなるべく大きな加速度で打ち上げた方がいいのです。
…ちんたら飛んでたら燃料が足りなくなる。乗り心地が悪くても我慢しましょう。


1st stage分離(separation)

Onboard camera view: launch and separation of Sentinel-1A
大気圏上層に到達したら、SRBや1段目エンジン分離。
タイミングがズレたり装置が正常に機能しなかったりすると、切り離したはずが引っかかる、ぶつかる、などの事故に繋がる恐れがある。
無事に切り離しまで成功したら1st stage終了。2nd stage開始、2段目エンジン点火。衛星軌道へ。


まとめ

今回は基本的な知識のみの紹介。実際には燃料消費とともに変化していく重心のバランス、速度、空気抵抗、など…ロケットを打ち上げるには、山のような課題をクリアしなくてはなりません。
時には失敗することもある。実際、SpaceX社も初期は失敗続きだった。諦めず、失敗から多くの教訓を得て活かし続けた結果、初めての民間有人宇宙飛行を成功させるに至った。

大勢の人々が力を合わせ、時を待ち、準備万端で挑む。
ロケット打ち上げは、そうした努力や想いが形となって実現する瞬間だからこそ格好良いのだ。

以上。