医局日記

【精神医学】~リカバリーとは~


英和辞典・和英辞典
recoveryとは

主な意味 取り戻すこと、回収、(経済状態などの)回復、復旧、修復、回復、全快、(権利・財産の)回復


精神科領域で重要な言葉である、「リカバリー」。
従来の”病状回復”とは異なる概念ですので、解説いたします。

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統合失調症からの回復 (監修:東京都立松沢病院 岡崎祐士院長)

最近、統合失調症のご本人や支援者の間で、リカバリー(recovery)ということばが盛んに使われるようになりました。ぴったり当てはまる日本語のことばがないので、そのままカタカナで使われています。
リカバリーとは、「精神障害のある人が、それぞれ、自分が求める生き方を主体的に追求すること
リカバリーの目的は、症状をなくすことではありません。治療によって症状を和らげることはもちろん必要ですが、何より大切なのは、本人が、こういう生活がしたいという夢や希望を持ち、それを周囲が支えることです。たとえ統合失調症の症状が残っていても、症状とうまくつきあいながら、学校に通ったり、働いたりしている人は少なくありません。結婚・子育てをしている人もいます。誰にでもリカバリーは可能なのです。

リカバリー(Recovery)

リカバリーに関連する概念は欧米における1960・70年代の脱施設化や当事者運動の中で徐々に育まれ、1980・90年代から主に米国で具体的に「リカバリー」という言葉で言及されはじめました。21世紀になってから欧米を中心に徐々に国際的な広まりをみせ、2010年代ではリカバリームーブメントとして精神障害者支援における世界的な潮流となっています。
このように世界中の支援者/専門家に広まったリカバリーですが、「リカバリー」という言葉自体は非常に多義的です。そのため、最近ではリカバリーを「臨床的リカバリー」と「パーソナル・リカバリー」という区分でわけて整理しています。


リカバリーにおいて医療者が気を付けるべきこと


精神科研修ノート 改訂第2版
ISBN9784787821904

周囲がどうさせたいか、ではない。本人がどうありたいか、である。
精神障害を有する人は、1人の人間というよりは「治療や支援の必要な人(患者さん)」として扱われてしまうことが多かった。
精神障害を有する人は医療を強制されることもある。しかし、どのような状況の治療であっても、本人の意見や意思を聞く姿勢を示すこと。
リカバリーは人それぞれであり、リカバリーへ向かうかどうかも本人が決めることである。~するべき、~するのが幸せなはず、という価値観で関わるとリカバリーの押し付けになってしまう。

人には元来力が備わっており、困難に出会ったとしても、状況を柔軟に乗り越えていくことができる
経験の機会を本人から奪わないことも重要である。


まとめ

このリカバリーという概念、学生さんや若手医師にとっては「普通のことじゃん」と感じるかもしれません。患者さんの意思・権利を尊重するのは医療従事者として当然の義務ですからね。しかし精神科においては、こうした当たり前の感覚、を特に意識しておく必要があります。強制的な入院も有り得る精神科医療においては、時に本人置き去りの治療となってしまう恐れがあるからです。

「症状を治す」のではなく「うまく付き合う」という考え方、大事です。

概念ってのは理解が難しい。まずは意識することから。
「これはリカバリーとして、どうかな?」と意識しながら言葉を交わしていきましょう。


以上。