医局日記

【精神医学】~医療観察法~

第112回医師国家試験の問題および正答について より

112-C12 心神喪失の状態で殺人未遂を犯し、不起訴処分になった者の指定入院医療機関について定めた法律はどれか。

a 刑 法
b 医師法
c 医療観察法
d 地域保健法
e 精神保健福祉法


正解はC。
国家試験にも出た、この法律について紹介します。


厚生労働省 ホーム > 政策について > 分野別の政策一覧 > 福祉・介護 > 障害者福祉 >
心神喪失者等医療観察法(心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律) より

概要:心神喪失又は心神耗弱の状態(精神障害のために善悪の区別がつかないなど、刑事責任を問えない状態)で、重大な他害行為(殺人、放火、強盗、強制性交等、強制わいせつ、傷害)を行った人に対して、適切な医療を提供し、社会復帰を促進することを目的とした制度。

上図に載ってない部分を含めて解説。


国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 司法精神医学研究部 より

刑事責任能力鑑定

起訴前鑑定
検察官がその事件を起訴するかどうかを判断する際に、参考として行われるもの。通常の勾留期間中に半日~1日で行われる「簡易鑑定」と、通常2ヶ月程度の鑑定留置期間を別途もうけて行われる「起訴前本鑑定」とがあります。
起訴後に裁判所の判断で行われるのが「公判鑑定」です。最近では公判前整理手続きのなかで行われることも多く、とくにこの場合を「公判前鑑定」と呼んで区別することもあります。

刑事責任能力とは

1.責任無能力(心神喪失)=無罪
…精神の障害によって、善悪の判断をする能力またはその判断にしたがって行動をする能力が失われている状態。
2.部分責任能力(心神耗弱)=減刑
…精神の障害によって、善悪の判断をする能力またはその判断にしたがって行動をする能力が著しく障害されている状態
3.完全責任能力=有罪
…能力が障害されていたとしても「著しい」に達しない状態。
という3つに区別されています。

責任能力についての鑑定書の書き方、具体例を含めた詳細な解説が上記サイトで公開されてます。
7つの着眼点(動機の了解可能性、犯行の計画性、違法性の認識、免責可能性の認識、平素の人格に対する異質性、犯行の一貫性、犯行後の行動)など、司法精神医学を志す人は必読。


医療観察法鑑定

医療観察法の審判にあたって、その判断材料を得るために行われるもの。医療観察法の処遇の3要件「疾病性」「治療反応性(可能性)」「社会復帰要因」について検討されます。

観察法の鑑定入院
最終的な決定が出されて、指定入院医療や指定通院医療の処遇が開始される(あるいは処遇が行われないことが決まる)までの期間、対象者は病院に入院して、標準的な精神医療を受けます。この期間を「(医療観察法の)鑑定入院」と呼びます。


医療観察法の指定入院医療

医療観察法の処遇として行われる、入院医療。全国で標準化されたガイドラインにそった治療が提供されています。急性期(3か月)、回復期(9か月)、社会復帰期(6か月)の3期に分けて目標設定を行い、多職種チーム医療を基本とした治療を行っています。
半年ごとに入院の延長が必要かどうかについて、地方裁判所の審判による決定を受けます。症状が改善して地域での生活ができるようになると、地方裁判所における退院の審判決定を経て、指定通院医療に移行します。


補足

厚生労働省 指定入院のガイドラインより

20201105_01

こんな感じで、様々な観点・評価をきめ細かにチェックしていくことになります。


法律制定の背景・歴史…

相当長く、複雑な内容になるため、今回は控えます。
この法律は制定まで紆余曲折あり、今もなお賛否両論あるため、私自身うまく纏めきれる自信が未だありません。引き続き、勉強してまいります。


以上。