医局日記

【精神医学】~rTMS(反復経頭蓋磁気刺激法)とは~

経頭蓋磁気刺激法(Wikipedia)より
反復経頭蓋磁気刺激法:rTMS (Repetitive transcranial magnetic stimulation) と略される。

まずは一気に参考サイトの資料・画像など紹介。
解説・まとめは最後に。


TEIJIN Medical Web NeuroStar TMS 治療装置
経頭蓋治療用磁気刺激装置/承認番号 22900BZI00029000



NeuroStar Mechanism of Action(YouTube版)


医療法人東横会たわらクリニック TMS治療(磁気刺激治療)について より


背外側前頭前野の主な機能
・判断、意欲、興味をつかさどる
機能が低下することでやる気がなくなる

・扁桃(へんとう)体のバランスを整える
扁桃体は、不安や悲しみ、恐怖、自己嫌悪などの感情をつかさどる部分です。
扁桃体のバランスが崩れ、機能が低下することでこれらの感情が強く出てしまいます。

現代の医学では、この背外側前頭前野の活動が低下し、逆に扁桃体が過剰に活発し反応する状態を、うつ病のメカニズムと考えています。



前頭前野

inAIR、AI採用ソリューション
“AIコンピテンシー検査のゲームに活用された脳神経科学技術とは?”
より


(なんかよく分からん謎企業のwebサイトだけど、脳の図だけは医学系サイトよりも綺麗だった)



うつ病 発症メカニズム
より

うつ病の発症には現在いくつかの仮説が提唱されています。
1960年代にモノアミン仮説という仮説が提唱されました。
しかし、その後、モノアミン仮説だけでは説明が難しいことがわかってきました。
そして、新たな仮説が提唱され現在に至っています。

・モノアミン仮説
・コルチゾール仮説(HPA系仮説:視床下部-下垂体-副腎系仮説)
・神経可塑性仮説(BDNF仮説)
・神経炎症仮説(ミクログリア仮説)

(上記サイト、各仮説を詳しく、分かりやすい図で解説しています。オススメ)


まとめ、解説

うつ病は頻度の高い疾患で、現代では「抗うつ薬」による内服治療が一般的に行われています。
…が、そもそも「なぜ、うつ病が生じるのか」という原因・メカニズムは完全には解明していない。「でもお薬効いてるじゃん」という(後付けな)事実を根拠として「モノアミン仮説」が支持されているが、今もなお「仮説」止まりのまま。(有力な仮説であれば、検証が進んでいくうちに”立証”され、確たる事実として受け入れられても良さそうなのですが…。)最近では、モノアミン仮説以外の仮設も提唱され、研究が進められています。(ちなみにウチは”炎症仮説”の研究がメインです)

rTMSは、うつ病を「脳の特定部位(前頭前野の背外側)の機能不全」による病気とみなし、磁気による刺激を与えることで症状改善をはかる、という治療法です。(べつに”モノアミン仮説に物申す新たな仮説じゃ!”…ってわけではないみたい。従来の仮説と矛盾しているわけでも無いですし。)

お薬だろうがrTMSだろうが、効く人にはバッチリ効くし、効かない人には全然効かないこともあります。何で効き目に個人差があるのか?そもそもうつ病とは何者だ?…まだまだ、分かっていない事の方が多いです。

いずれ研究が進めば、うつ病を「血液検査で診断」できる日が来るかもしれません。そして結果をもとに「あなたに効く治療法はコレ!〇〇週間で完治しますよ!」と言い当てることが出来るかもしれません。


私も、そんな未来を目指す医療従事者の一員。
今後も臨床・研究がんばっていきたいと思います!(・ω・)