【精神医学】~病名告知~
医学書院 精神医学 2020年08月号 (通常号) ( Vol.62 No.8)
特集 精神科医療における病名告知 伝えるか,伝えるべきでないか? 伝えるなら,いつ,どのように伝えるか?
臨床医としては避けて通れない課題。
雑誌の内容をかいつまんで紹介します。
統合失調症
1990年代(精神分裂病、の病名であった時代)に比べると、徐々に病名告知が進んできてはいるものの、2000年代においても約1/3の医師が「本人には原則として告知しない」と回答している。
悩ましいのが数十年間にわたって治療中で、主治医が交代したケース。交代したばかりで信頼関係が不十分なまま告知するのは、患者さんにとってプラスに働くとは限らない。ただ、告知していなくても患者さん自身なんとなく気づいていることも多い。診断書などの書類を通じて知るケースが3割ほどとのこと。
大事なのは「告知し、心理教育へつなげる」ことである。ただ病名を伝えるだけでは無責任。
告知のタイミングとしては、発症初期・症状がピークの時期は避けたい。そもそも精神科では初診時に確定診断を下すことが難しい。典型的なタイミングとしては、急性期を乗り越え回復期に入り、リハビリテーション・社会復帰を進めていく時期と思われる。
本人抜きで家族に告知するのは、信頼関係にヒビが入る恐れがある。できれば本人・家族は勿論、看護師、精神保健福祉士などと一緒の面談の場を設けるのが良いだろう。なお、いきなり資料を準備しておくより、最初は口頭で告知し簡単な心理教育を行い、後日時間をかけてすすめていくのが良いかも。
告知においては、「患者さん自身がどう解釈しているか、どういう病名を想定しているか」を予め訪ねておくと良い。
告知した後の患者さん本人の様子を、看護師さんやご家族など、周囲の人々から情報を得てしっかり把握しておくこと。
双極性障害
「診断は変わる可能性がある」ことをきちんと説明する。
I型、II型の分類については積極的に伝えなくて良い。心理教育・治療方針自体に大きな違いは無い。
躁状態については、患者さんの自覚が乏しいことが多い。「調子が良い時期がありませんでしたか?」と尋ねる方が診断根拠となる情報を集めやすいことも。
ライフチャートの作成を推奨。病名告知の後、心理教育が大事であるのはどの疾患でも同じ。
身体症状症
いわゆる「検査しても身体に異常は無いのに、身体の症状に苦しめられる」病気。
この疾患の病名告知は慎重に進める必要がある。信頼関係が十分に築かれる前、特に初診時には告知を避けるべき。
治療者側が「身体に何も問題ないんですよ」という態度では、信頼関係を損ねるし、現実の症状として苦しんでいる患者さんにとっては何の助けにもならない。
「症状が回復可能であること」を、患者さんが受け入れられるよう、タイミング・心理教育を十分に工夫する必要がある。
パーソナリティ障害
患者さん本人と、周囲の人々の認識が大きくズレていることも少なくない疾患。
患者さんごとに問題点、状況が大きく異なるため、あまり一般化しようとしない方が良い。
「人格、人柄の問題ではないこと、改善が見込めること」を強調して伝える必要がある。
告知自体が一つの治療行為であり、実施に際しては様々な条件を考慮する。
その他、まとめ
上記雑誌においては「認知症」「発達障害」「難治性がん」などについても記事が載っています。
今回紹介した項目についても、本文ではもっと様々な状況・条件など細かに書かれています。(かなり強引に纏めたので私の解釈が間違っている部分があるかもしれません。ご指摘いただければ幸いです。)
精神科の臨床に携わる方々、ぜひご一読を。