【精神薬理】~てんかん発作に関係する向精神薬~
昨日の医局会の続き…
(´・∀・)「リエゾン・コンサルテーション精神医学においては、薬の選択・処方を慎重に判断する必要があります」
(´・∀・)「てんかん患者さんの場合、精神科の薬により発作が起きやすくなってしまうリスクがあります!」
(´・∀・)「資料を持ってきました!皆さん一緒に勉強しましょう!」
(`・ω・)「みんな資料、配られたかな?さあ始めてください」
星和書店 精神科治療学 第25巻増刊号 今日の精神科治療ガイドライン より
第12章 5.精神病症状を伴うてんかん 深尾憲二朗(京都大学医学部精神科)
…の前に、学生さん・研修医さん向けに補足。
向精神薬 = 精神科で使うお薬
抗精神病薬 = 精神病症状の治療に使うお薬
精神病症状、精神病状態 ≒ 統合失調症の症状。幻覚妄想とか。
てんかん&精神病症状の分類、治療方針
①てんかん発作と直接関係する精神病症状(発作時精神病)、視覚・聴覚発作に対する心因反応としての精神病症状
→抗てんかん薬の急性投与が第一。抗精神病薬の投与は必須ではない。
②てんかん発作と直接関係しない精神病症状
→抗精神病薬を処方するが、後述する注意点あり。
③てんかん発作後に発症する発作後精神病(意識清明になってから数時間~数日間の後に発症する急性精神病状態)
→抗精神病薬を処方するけど、そんなに多く投与しなくても数日~数週間で自然寛解する傾向。
④抗てんかん薬の副作用による精神病症状
→具体的にはzonisamideとtopiramateなど。少ない量でも精神病症状を生じることがある。
→急性に発症した場合は、なるべく投薬中止。ただし、それでも長引くことがある。
⑤交代性精神病(抗てんかん薬によって発作が抑制されると、交代に精神病が増悪する)
→この場合、抗てんかん薬を中止すると重積発作が出てしまう恐れあり危険!
注意!抗精神病薬の痙攣閾値低下作用
①非定型抗精神病薬(新しめの薬。昔の薬より安全性が高い)
MARTA(多元受容体作用)系抗精神病薬(clozapine、olanzapine、quetiapineは痙攣閾値低下作用が強い!
risperidone、aripiprazoleはマシだけど、それでも閾値低下作用はある。
一番危険なのはzotepine!他のどの抗精神病薬よりも強い。
②定型抗精神病薬(昔の薬。効き目は強いが副作用も強い)
フェノチアジン系(chlorpromazine、levomepromazine、perphenazineなど)が痙攣閾値低下作用を持つ。
逆にドパミンD2受容体遮断の選択制が高いhaloperidol、sulpirideは比較的安全。
抗てんかん薬と抗精神病薬の併用時
特に問題となるのがcarbamazepine。CYP3A4(肝酵素)誘導作用があり、抗精神病薬の効き目が弱まってしまう。
なので通常より多めの抗精神病薬を投与する必要があるが、個人差もあり、試行錯誤するしかない。
まとめ
てんかん発作の既往を持つ患者さんに精神病症状が生じた場合、まず病態を見極めるべし。
抗てんかん薬を中止するのか、抗精神病薬を使用するのか、判断する。
抗精神病薬を使う場合、ゾテピン、MARTA系、フェノチアジン系の使用は避ける。(古い薬だけどハロペリドールは比較的安全。)
カルバマゼピンを使用中の患者さんの場合、通常よりも多めに抗精神病薬を使う必要があり、量の調整が難しい。
以上。