医局日記

【宇宙ネタ】~水星探査機、航行中~


WikiPedia「水星」メッセンジャーが2008年(平成20年)に撮影した水星 より

水星って、実は調査が進んでいなかった惑星。
太陽に近過ぎて「近点移動」が起きてる。一般相対性理論が発表されるまで、計算と実際の軌道のズレが説明できなかった。
つまり太陽の質量による”時空の歪み”の影響をモロに受けているレベル。やばい。
そんな水星に向けて現在、ある探査機が航行中である。


BepiColombo(ベピコロンボ)計画

宇宙航空研究開発機構(JAXA)とヨーロッパ宇宙機関(ESA)が協力して進める国際水星探査計画。
JAXAが担当する水星磁気圏探査機「みお」と
ESAが担当する水星表面探査機MPO
の2機の探査機を同時に水星周回へ送り込み、総合的な観測を行う大規模国際協力ミッション。


旅の行程


2018年10月20日、ギアナ宇宙センターより、アリアン5ロケットにて打ち上げ。
AstroArts 水星探査機「ベピコロンボ」打ち上げ成功 2018年10月22日 より


合計9回のスイングバイ

水星に辿り着くまでが至難。太陽の近くなので公転速度が速く、しかも変な角度差がある。

燃料を節約しつつ接近するため、スイングバイ航法をフル活用する。

WikiPedia スイングバイ より


BepiColombo – orbit and timeline より

2020年4月10日 地球スイングバイ
2020年10月15日 金星スイングバイ1回目
2021年8月11日 金星スイングバイ2回目
2021年10月2日 水星スイングバイ1回目
2022年6月23日 水星スイングバイ2回目
2023年6月20日 水星スイングバイ3回目
2024年9月5日 水星スイングバイ4回目
2024年12月2日 水星スイングバイ5回目
2025年1月9日 水星スイングバイ6回目
2025年12月5日 水星の周回軌道(衛星軌道)に到達

出発から7年もかかる!大変です。
今のところ順調で、次のスイングバイは10月15日。接近時の金星の写真、送って来るかな?楽しみ。


到着後、2機に分離して調査開始


欧州宇宙機関(ESA)担当の水星表面探査機(MPO:Mercury Planetary Orbiter)は、水星の表面~内部を調査。


JAXA担当の水星磁気圏探査機(MMO:Mercury Magnetospheric Orbiter)は、「みお」という名前。
日本の得意分野である磁場・磁気圏の観測を行う。


水星を探査する意味

水星がもつ磁場は地球よりも弱く(1/100程度)、しかもはるかに強烈な太陽風にさらされています。このような地球と異なる過酷な環境でどのような現象が起きているかを知ることで、惑星磁場が太陽風に対して果たす役割を明らかにします。
将来的には、その理解は太陽系以外の惑星における生命存在可能性を探るのに役立てられると考えられています。
特に注目されているのが、温度の低い星のごく近くを回る惑星です。

以上、JAXAのサイトに書かれていた解説。
「温度の低い星のごく近くを回る惑星」について、説明を加えておこう。


赤色矮星と、系外惑星への移住可能性

NASAより

赤色矮星。太陽に比べて小さく、軽い恒星。
銀河系内の恒星の3/4以上を占めると言われている。(逆に言うと我らが太陽は上位1/4圏のサイズ。)
核融合が穏やかで寿命が長い。ギンギラギンに輝く太陽と違い、オレンジっぽい色でボヤーっと暗く光っている。

赤色矮星自体が多いので、「赤色矮星の周りを回る」「水が存在できる温度」の惑星はそれなりに多いと予想される。地球外への移住先候補だ。
しかし地球-太陽と違い、主星に近過ぎる。ホントに住めるのかな?

そうした疑問を解決するためには、恒星に近い惑星を実際に調査してみるのが一番。
というわけで水星探査、大いに期待されています。


主な資料:JAXA 水星磁気圏探査機「みお」特設ページ


宇宙の旅ってのは時間がかかるので、どうしても打ち上げ・到着とか派手なイベントばかり注目されがち。
背景、目的、行程まで、きちんと理解しておきたい。(・ω・)