医局日記

【精神医学総論】~感情の分類、感情の障害~

↓参考文献。


南山堂 精神医学入門 改訂25版 共著 西丸四方/西丸甫夫

今回の参考文献について、最初に紹介させていただく。
西丸四方先生(東大医学部卒、信州大学医学部教授、愛知医科大学教授。2002年没)が書かれた本。第1版は何と1949年。最新は25版と、相当昔から売れ続けています。
私が精神科医を志したとき、先輩に勧められた最初の教科書が、これでした。

特徴は、とにかく具体的。「症例」として患者さんの生々しい発言内容が小説のセリフのように書かれている。また患者さんの顔写真まで載っている。プライバシーが尊重される現代では考えられないことだが、ここまで「生々しさ」を伝えてくれる精神科の教科書は貴重だ。

入門と言うだけあって、読みやすい文体で精神科領域を幅広く解説しています。歴史、心理学、治療法、薬物、脳生理学などまでちゃんとカバーしている。欠点を挙げるとすれば、現代では注力されている「地域連携」「社会復帰」といった点においては解説が乏しい。


では早速、「感情」の項目について抜粋、まとめてみる。
(書き始めてから気付いたが、文は読みやすいけど表現がややこしく纏めにくい。ちょっと強引だけど分かりやすさ優先で書いていく)



【身体的感情】

感覚と結びついている、体感とはっきり区別できない感情のこと。
例えば「痛い」という感覚は、不快な感情と結びついている。
光、触、色、音、嗅、温度などの感覚は、それぞれ同時に快or不快の感情をもたらす。

生気感情
具体的な感覚器官に限られないもの。快適、圧迫、緊張、不調、落ち着きなさ、期待、渇き、など。


【精神的感情】

動機のある、反応的感情。例えば「友人の死」という出来事に対する悲しい感情など。
これも快、不快の感情をもたらすが、身体的感情よりも複雑。喜び、爽快、満足、悲しみ、恐れ、懐郷、怒り、など。


価値感情
自己や他人に「はたらきかける」もの。愛、憎しみ、尊敬、恥、自慢など。

感動・情動
急に発生し著しい身体的表現を伴うもの。

気分、機嫌
長く続く、弱い感情が持続する状態。


【意欲と感情】


関心、興味
意欲と感情が結びついて一体となったもの。
これが無いと無関心という。


【身体的感情の障害】

快の方向への昂進
躁病、中毒、進行麻痺、統合失調症などにみられる。


不快の方向への昂進
うつ病、統合失調症、神経衰弱などにみられる。


感情自体の減退
無感情、感情鈍麻、感情貧困となる。多くは無意欲、無為をともなう。


【精神的感情の障害】
身体的感情よりも多彩。主として動機に対して過多か過少か、で判断する。


感情失禁、感情不安定
僅かな動機で強い感情が現れるもので、脳の器質性疾患のとき、重い身体疾患の回復期にみられる。


急性情動麻痺
強い恐れの時に感情の空虚と無関心を起こす状態。突然の大災害の時にみられる。


感情荒廃、感情鈍麻、無関心
統合失調症や欠陥状態でみられる。軽いものは無遠慮、無関心、気が利かないという形を呈する。
著しいときには身体感情までも鈍くなり、痛みや飢えも感じなくなる。


感情喪失感
統合失調症の初期やうつ病でみられることがある。離人、現実喪失感に属する。
「感情が無くなってしまった」と訴えるが、その状態を辛いと感じる感情はある。表情には感情が出ているけど、本人は感情が無いと主張する。


両価性
精神的感情と動機との関連障害。同一の対象に対して相反する二つの評価、愛と憎が起こる。



【医局雑談】

(`^ω^)「おー勉強熱心!偉いね!」
(・ω・)これ、私が精神科医になって初めて買った本なんです
(・ω・)先生は、どんな本がオススメですか?
(`^ω^)「実は僕が精神科医になって、某院長から初めて勧められた本がさ…」


医学書院 標準精神医学

Σ(・ω・)えっ!?学生さん向けの教科書ですよねコレ
(`^ω^)「僕もびっくりしたんだけどね。そしたら『これを何度も繰り返し読みなさい』と。」

「あ、確かに全分野まとまってる」「どの教科書でも基本は同じだもんね」「そうですよねー」


【まとめ】

(`^ω^)(・ω・)「教科書の選び方より、買った教科書をしっかり読み込むことが大事だ!」

以上。