【国試ネタ】~精神科の用語 思考編~
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp190415-01.html
厚生労働省 第113回医師国家試験の問題および正答について
E問題-09 双極性障害でみられる思考障害はどれか。
a 連合弛緩
b 滅裂思考
c 思考途絶
d 言語新作
e 観念奔逸
正解はe。
この問題のポイントは、
”統合失調症(の陽性症状)” と ”双極性障害(の躁状態)”
それぞれに特徴的な症状についての理解です。毎年必ず出題されるレベルの頻出問題。
↓解説に用いる文献。
https://www.kanehara-shuppan.co.jp/books/detail.html?isbn=9784307150675
金原出版 現代臨床精神医学 第12版 P.91~
【思考】
定義をざっくり言うと「与えられた情報を、目的に向かって整理し、結論を導く」精神活動。
「なんか変なことを言っている、辻褄が合わないことを言っている」だけでは、思考障害とは限りません。与えられた情報が間違っているのであれば「感覚障害」「記憶障害」、話し方がおかしいのなら「言語機能障害」、が原因となっている可能性がありますので。
①思考形式の障害
-a.思考の流れの障害
-b.思考の体験の障害
②思考内容の障害
に分類されます。
①a.思考形式-流れの障害
話の組み立て方がおかしい、というイメージ。聞いている人としては「結局何が言いたいんだろう…」という印象を抱く。
観念奔逸
躁状態に特徴的。思いつくままに話すため、どんどん脱線していく。
(具体例)「喉が渇くので糖尿病ではないでしょうか、水をがぶがぶ飲むので…飲むのはミネラルウォーターが良いですね、家の井戸からとれる水で、私がうつ状態のとき飛び込んだ井戸ですよ、結局浮き上がってきて、隣の人に見つけてもらって、その人は本当にいい人で、恩返ししたいけれど、孝行したい時には親はなし、って言いますし…」
思考制止(思考抑制)
うつ状態(うつ病、双極性障害のうつ病期)に特徴的。
(いわゆる、「頭が回らない…」という状態。本人にも自覚がある)
減裂思考 -> 連合弛緩 -> 言葉のサラダ
統合失調症に特徴的。話が繋がっていない状態。”句読点が無いまま続く”文、というイメージ。
(具体例)「鶏…肝を抜いて…松竹立てて…だから地震があって…」「生物も時間も一切の両極の中和であろうと察せられる共存共栄の身をあげつつある世界において…」「タバコで市役所が花火が綺麗でお好み焼き屋の電車が…」
思考途絶
統合失調症に特徴的。話している途中で急に黙り、かと思えば急に再開する。
(「なんで黙ったか自分でも分からん」と、本人には自覚がないことが多い)
①b.思考形式-体験の障害
なんだか共感しにくい、というイメージ。「話は理解できるが、気持ちは理解できない」という印象を抱く。
強迫思考
強迫性障害に特徴的。「変だと分かっていても、考えが止まらない!」
(具体例)「手が汚れているような気がして…」「ずっと下ネタを考え続けてしまう…」
恐怖症
強迫性障害に特徴的。「頭では理解できても、恐くて体がついてこない!」
(具体例)「人前で緊張して倒れたらどうしよう…」「万が一エレベーターが止まって閉じ込められたらどうしよう…」
させられ体験
統合失調症に特徴的。「他の誰かによって、思考を支配されている!」と感じる自我障害の一種。
-考想吹入 「誰かの考えが入ってくる」
-考想奪取 「誰かに考えを抜き取られる」
-思考干渉 「誰かに考えを操られる」
-考想伝播 「誰かに考えが伝わる」
-考想察知 「誰かに考えを見抜かれる」
②思考内容の障害
妄想
訂正不能な判断。分類が非常にややこしいので、後日改めて纏めていきます。
(その他)
言語新作
統合失調症に特徴的。思考の障害+言語の障害として生じる。誰も知らない言葉を造り、本人にしか分からない意味づけをする。
(具体例)「体性と増性」「本人の一任は自在賦体」「私は養覚学者である」
…というわけで問題文に戻ると、
a 連合弛緩b 滅裂思考c 思考途絶d 言語新作 → 統合失調症に特徴的。
e 観念奔逸 → 躁状態に特徴的。よってこれが正答。
精神科の用語はどれも似たような4文字表記でややこしい。
なるべく「具体的な例」「疾患の特徴」を意識して勉強すると、理解しやすくなると思います。
以上。