慢性腎臓病における認知機能障害:症例報告及び文献レビュー
慢性腎腎臓病における認知機能障害の症例報告と文献レビューを行いました。
慢性腎臓病がある人は全てのステージで慢性腎臓病がない人に比べて認知症や認知障害を発症するリスクが高くなる可能性があります。
症例は様々な精神症状を呈し、認知機能低下を認めました。診断としてはせん妄を考えましたが、レビー小体型認知症の症状に類似する点もありました。そもそも、せん妄とレビー小体型認知症は臨床的に類似する点が多く、両者ともコリン作動性の機能障害と大脳基底核が関与します。今回の症例は無症候性のラクナ梗塞が種々の精神症状の主な原因と考えられましたが、尿毒素による神経毒性等の他のメカニズムが含まれている可能性も考えられます。
透析は急性の脳虚血を繰り返し、認知機能が低下する事が示唆されています。慢性腎臓病において症候性と無症候性の両方とも虚血性脳血管障害は血管性の認知障害をきたすと考えられています。脳画像的には慢性腎臓病は脳梗塞を効率に認めます。さらに、慢性腎臓病では脳画像でとらえられる無症候性の白質病変や微小出血の脳血管障害の率が高くなります。可能性のあるメカニズムとしては、以前から言われているリスクファクターである動脈性の高血圧が考えられます。最近言われているリスクファクターとしては高ホモステイン血症、過凝固状態、炎症、酸化ストレス、尿毒素物質としてのグアニジン化合物、シスタチンC濃度の上昇が考えられます。また、透析そのものの影響としては透析スピードを遅くする事が透析に伴う精神症状の発症を抑えると言われています。
近年、症例報告のみの論文は数が限られており、最終的に文献レビューを追加する形でアクセプトされました。今回アクセプトされるまでに6回リジェクトされ、1回の修正を要しました。七転び八起きという言葉がありますが、実際に7回転ぶとその都度多少気分はへこみ、しんどくありました。しかし、諦める事なく頑張り通した結果アクセプトを頂きました。その時はやはり嬉しく苦労が報われた気持ちでした。今後も前を向いて頑張っていきたいと思います。
立石 洋
Neurocognitive Disorders in Chronic Kidney Disease: A Case Report and Literature Review. Hiroshi Tateishi, Toru Hirachi, Joji Maruo, Yoshinori Haraguchi, Tomoyuki Noguchi, Yoshito Mizoguchi, Takahiro A. Kato, Toshiro Kawashima, Akira Monji. Psychosomatics2016:57:107–112