医局日記

抄読会(担当:國武)

An fMRI-Based Neurologic Signature of Physical Pain
Wager TD et al. N Engl J Med. 2013 Apr 11; 368

「身体的疼痛の機能的磁気共鳴画像法(fMRI)による神経標識」

【要約】
【背景】
疼痛は自己評価に基づいて行われるのが一般的だが、それのみでは診断と治療の妨げとなることがある。fMRI痛みの客観的な評価を同定するものとして有望視されているが、感度および特異度を有する脳の測定はこれまで特定されていなかった。
【方法】
4試験(被験者は合計114名)を行い、各個人が感じる痛みの強さをfMRIに基づいて評価することを開発した。
(試験1)
熱誘起疼痛による脳領域横断的なfMRI活動性パターン(“神経標識”)について、機械学習によって分析した。このパターンには視床、後方・前方島皮質、二次体性感覚皮質、背前方帯状皮質、中脳中心灰白質や他の領域が含まれていた。
(試験2)
別の被験者で身体的疼痛と温感に対する“神経標識”の感度と特異度を分析した。
(試験3)
身体的痛と同領域の脳の活性を促す社会的疼痛について、“神経標識”を分析した。
(試験4)
鎮痛剤であるレミフェンタニルに対する“神経標識”の反応性について評価した。
【結果】
(試験1)
“神経標識”は有痛性熱刺激と無痛性熱刺激、疼痛の予期、疼痛の想起との識別について、感度、特異度は94%以上を示した。
(試験2)
“神経標識”による有痛性熱刺激と非有痛性熱刺激の識別の感度・特異度は93%以上だった。
(試験3)
身体的疼痛と社会的な疼痛の識別85%の感度と78%の特異度だった。またどちらの状況がより強い痛みか識別する感度と特異度は95%だった。
(試験4)
レミフェンタニルに対する“神経標識”の反応の強さは投与により明らかに減少した。
【結論】
健常への熱により誘発された疼痛をfMRIで評価することは可能である。この“神経標識”が臨床的な痛みを予測するか評価するには、更なる研究が必要である。
(コメント)
痛みの評価は、患者さん本人の自己評価に基づいて行われていますが、客観的な指標がなく、過小評価されることもあるため、今後、各個人において客観的な指標が補助的に使われるようになれば、痛みの評価、治療に役立つと思われます。また、疼痛性障害や繊維筋痛症などの原因が解明されてない慢性疼痛の機序解明につながる可能性があると思いました。