医局日記

抄読会(担当:川島)

Popovic D. et al.: Polarity index of pharmacological agents used for maintenance treatment of bipolar disorder. Eur Neuropsychopharmacol (2012) 22: 339-346.

半数以上の双極性障害(BD)患者が,うつまたは躁のいずれかの極に優位に再燃すると報告されている。本研究では,BDの維持療法における各薬剤の特徴を,polarity index(PI)によって評価することを試みた。PIは薬物の相対的な抗躁,抗うつ予防効果を示す新しい指標である。BD維持療法において,気分安定薬単独,抗精神病薬単独または気分安定薬併用の,24週以上にわたる再発予防効果を調べた二重盲検化プラセボ対照RCTの結果を用いて,うつの予防効果と躁の予防効果のNNT比によりPIを算出した。PIが1以上の場合,相対的に抗躁予防効果が抗うつ予防効果を上回ることを示す。各薬剤のPIはリスペリドン12.09,アリピプラゾール4.38,ジプラシドン3.91,オランザピン2.98,リチウム1.39,クエチアピン1.14,ラモトリギン0.40であった。バルプロ酸とオキシカルバマゼピンは維持療法の治験そのものを失敗したため,信頼できる結果が得られなかった。PIはBDにおける薬物の抗うつ/抗躁効果比を数値化しているため,維持療法における選択基準の一つとなりうる。